2020年01月14日

税理士と司法書士の違いは?ダブルライセンスのメリットは?

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士業の人口が増えていくにつれ、近ごろ、大型資格をひとりで2つ取得する「ダブルライセンス」が注目されています。中には、税理士と司法書士の両方を取得することにチャレンジする人もいますが、依頼人の悩みを解決するのに、これらのダブルライセンスはどれほど有効に機能するでしょうか。

税理士と司法書士の違いとは?

税理士と司法書士は、いずれも官公署に提出する申請書類を、クライアントの依頼を受けて代筆し、提出も代行する国家資格者です。

共通点も少なくないのですが、税理士はおもに確定申告書や相続税申告納付書など、税務署に提出する書類の作成を担当します。そして、作成に必要な会計帳簿の記帳や、それに伴う税務相談への対応などを行います。

一方で司法書士は、不動産登記や商業登記など、おもに法務局に提出する申請書類の作成代行を担当する専門職です。このほか、法律の専門家として、認知症患者など判断力が乏しい人に代わって必要な契約などの判断や締結を代行する成年後見人の役割を担ったり、無用なトラブルを回避するために、手続きに従って法務局などに金銭などの資産を預ける 供託業務を執り行ったりもします。

また、一部の「認定司法書士」は、簡易裁判所の民事法廷で代理人として法廷に立つことができる権限も持っています。

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税理士と司法書士 ダブルライセンスのメリットは?

結論から述べますと、メリットはあります。なぜなら、司法書士と税理士への依頼が同時並行的に必要となる場面が意外と多いからです。

たとえば相続の場面です。遺産の中に不動産がある場合には、相続人へ不動産の所有権が移ることになります。相続人が複数いる場合には遺産分割の協議を行ってから、司法書士が相続を原因とする不動産移転登記を法務局に申請することになります。

また、相続税の納付対象であれば、税理士が相続税申請納付書を作成して、税務署に申請する代行手続きを行います。

あるいは、不動産を贈与するシチュエーションでも、司法書士と税理士の協働が求められます。贈与を原因とする不動産移転登記の申請と、贈与税の納付手続きなどが同時並行的に必要となるからです。

会社設立手続きには商業登記を伴いますので、やはり司法書士の職域ですし、さらにその後は日々の記帳や税務相談などで税理士との縁が深まる機会も増えます。

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税理士と司法書士 資格取得の難易度

税理士と司法書士とでは、資格を取得するための難易度はどちらが高いのでしょうか?
令和4年度において、税理士試験の5科目合格率は、受験者数28,853人中合格者620人で2.1%、司法書士試験の合格率は、受験者数12,727人中合格者数660人で5.2%です。
試験制度が異なるため、両者を一概に比較することはできませんが、合格率でみると税理士試験のほうが司法書士試験より、難易度は「高い」といえます。
また、試験の合格までにかかる時間、および出題形式の2点からも、難易度が高いといえるのではないでしょうか。以下でこの2点について解説します。

試験の合格までにかかる時間

試験の勉強時間は、司法書士試験は2,000~3,000時間、税理士試験は、どの科目を選択するのかによって異なりますが、やはり同程度といわれています。
ただし、司法書士試験は3年程度集中して勉強し、合格する人が多いのに対して、税理士試験は、1年に1科目ずつ合格することを目指す人がほとんどです。
毎年1科目ずつ合格しても5年がかかり、人によっては10年以上かかることもあります。
試験勉強に対するモチベーションを長い期間にわたって維持することは、困難であるといえるでしょう。

出題形式

司法書士試験と税理士試験とでは、試験の出題形式も異なります。司法書士試験はマークシート方式が採用されているのに対して、税理士試験は全問が記述式です。
したがって、税理士試験のほうがより詳細な理解が求められることになるといえます。

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税理士と司法書士のダブルライセンスで転職先は広がるのか

このように、税理士と司法書士はクライアントが同じ機会に依頼する機会が少なくありません。つまり、2人の専門家に本来は依頼しなければならないところ、もし、ダブルライセンスの「税理士兼司法書士」の専門家がいれば、そこに依頼すればワンストップで解決することになります。同じ相談を2回行わなければならない手間も省くことができるのです。

また、他の専門家との違いをわかりやすく打ち出すことができますので、士業の中でも差別化が容易になり、うまく営業活動を行えば、依頼が集中しやすくなるメリットもあります。

税理士と司法書士のダブルライセンスがあれば、転職の際には、司法書士事務所からも、会計事務所(税理士事務所)からも引き合いがあることでしょう。

ただし、司法書士と税理士のダブルライセンスは、並大抵の努力では実現できません。なぜなら、司法書士試験と税理士試験の受験科目は、お互いにほとんど重なっていないからです。

税理士試験科目 司法書士試験科目
簿記論
財務諸表論
法人税法
所得税法
相続税法
消費税法
国税徴収法
住民税
事業税
民法
商法
不動産登記法
商業登記法
憲法
刑法
供託法
民事訴訟法・民事執行法・民事保全法
司法書士法

お互いに法律の出題はありますが、司法書士試験では、民法や憲法などの基本法と、登記や訴訟の手続法が問われるのに対して、税理士試験で問われる法律は、ほぼすべて税法(税金徴収に関する手続法)です。

よって、どちらかの受験経験が活かせてダブルライセンスに有利であるわけではなく、もうひとつの試験合格に向けて、改めてほぼゼロベースから取り組まなければならないのです。

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司法書士が企業法務に転職するためには?企業の選び方は?

「税理士兼司法書士」が評価される業界とは

税理士と司法書士のダブルライセンスが評価されるのは、まず第一に、司法書士業界と税理士業界です。司法書士と税理士のいずれも必要な案件について、いずれも総合的に引き受けることができますので、事務所の収益性向上に貢献することが十分にありえます。

また、納税と登記と常に無縁でいられない不動産業界への転身でも、ダブルライセンスを強くアピールすることが可能になるでしょう。

あるいは、会社設立を専門に請け負っている行政書士事務所などに勤務できれば、司法書士と税理士のメリットまで一元的に組みこむことができるため、やはり大きな貢献をすることが可能です。

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まとめ

税理士と司法書士の資格を、ひとりで2つ保有しているダブルライセンス資格者は、本来なら違う専門家に頼まなければならない仕事も合わせてひとりで請け負える強みもあります。

ただし、税理士試験と司法書士試験の科目はほぼ重なっていないため、ダブル合格は困難を極めます。素直に別の専門家と連携して、仕事を回しあったほうが、よほど士業全体の活性化に繋がることもありうるのです。事前に費用対効果をよく検討した上でダブルライセンスに挑戦してみましょう。

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