2023年04月01日

日本における弁護士の歴史

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今でこそ、弁護士は誰でも知っている職業で、人から尊敬を集めている存在です。しかし、かつては不正の横行、暴利のむさぼりなどがあり、蔑まれる職業であったのはご存知でしょうか。今回は、日本国内における在野法曹、弁護士という職業人が辿ってきた歴史を紐解きます。

弁護士に似た、日本伝統の役割

かつて日本では、鎌倉時代に権限が強化された六波羅探題のうち、しゃべりが達者な者が御家人を処罰する裁きに臨場し、口頭で弁論を行うことがあったと記録が残っています。これは、現在でいう刑事弁護人と類似した立場だといえます。

また、江戸時代にみられた「公事師(くじし)」も、日本国内で独自に発展した弁護士類似の職業だと考えられています。公事宿(くじやど)と呼ばれる施設が、現在でいう法律事務所に相当し、公事師がお白州での裁判に必要な書類を作成したり、裁判を控えた当事者が宿泊したりしています。
ただし、お白州で当事者の主張を代弁したわけではなく、得た報酬次第で、債権の取り立てや書類への便宜を図るなどしていたため、弁護士というより、裏稼業としての「事件屋」としての性格が強かったともいわれます。

代言人から弁護士へ

明治時代、欧米諸国から裁判制度を学んだ日本が導入したのが、「代言人」と呼ばれる立場です。まずは民事裁判で当事者の代理人を務めており、1882年からは刑事裁判でも代言人が活躍しました。しかし、明治初期のうちは公的な資格制度が整備されておらず、代言人は現在の弁護士のように一定の信頼が置かれる立場ではありませんでした。平気でずるいことをする者、暴利をむさぼる者など、公事師の暗躍した江戸時代の雰囲気をまだ引きずっていたようです。

1893年に弁護士法が施行されて以降は、「弁護士」の呼び名が一般的になり、その資格にふさわしい知識を持つ者の選抜をするための試験制度も整備されました。ただ、裁判官や検察官を登用する法官の試験とは別に、「弁護士試験」が実施されており、法曹三者の中でも、弁護士は一段も二段も下に見られていたのです。

なぜ、東京には3つも弁護士会があるのか

弁護士法が施行された頃、各都道府県に弁護士会が設置されました。同業者の組合のような役割として誕生した弁護士会ですが、東京では試験制度の改定などの影響で、弁護士会員数が急増し、東京弁護士会の中での意思統一が困難となり、派閥が形成され、会長選挙も熾烈なものとなっていました。

対立が決定的となったのが、1923年の「第一東京弁護士会」の発足です。つまり、東京弁護士会が分裂し、同じ東京地方裁判所の管轄内に別の弁護士会が誕生したのです。ただ、分裂後も両者は相変わらず対立を続けていたことから、対立を望まない都内の弁護士が集まった「第三極」として1926年に発足したのが「第二東京弁護士会」でした。

「第一」「第二」とありますが、両者に上下の差があるわけではなく、発足の年代順です。第二東京弁護士会には伝統的に、比較的リベラルな思想を持つユニークな弁護士が所属する傾向があります。

司法試験は、弁護士会の悲願

1936年には法制度の改正によって、弁護士の法律業務の独占が国内で初めて認められるようになり、地位も上がりましたが、儲かる者と儲からない者の差がますます激しくなっていきます。
戦後、1949年には「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と謳った、現行の弁護士法が制定され、裁判官・検察官・弁護士の各志望者が、同じ試験を受けて、合格者は同じ司法修習を受ける「法曹一元」が実現したのです。弁護士の社会的地位を向上させるために尽力してきた人々にとっては、まさに悲願の達成といえるでしょう。

さらに、国家権力から独立した「弁護士自治」が認められるようになりました。この頃に発足した日本弁護士連合会(日弁連)や各都道府県の単位弁護士会は、国家予算から補助や援助などをもらわず、独立採算で運営していく代わりに、国家権力の不正や不祥事に対して、しがらみなく立ち向かっていける法律家としての地位を獲得したのです。

戦後には、公害訴訟や消費者訴訟などを中心に、一般庶民のために果敢に戦う弁護士像が定着し、ドラマや映画、漫画などの影響もあって、弁護士界に対する世間の信頼や社会的地位が少しずつ向上していきました。法律家の登竜門として、法学部の人気も上がっていきます。

転機となったのは1900年代末から2000年代初頭にかけて実施された司法制度改革です。司法試験の合格者を大幅に増員させた一方で、裁判官や検察官の採用定員はほとんど増えなかったため、結果として弁護士人口が急増していったのです。
弁護士が増えても、法律トラブルの件数はほぼ横ばい状態だったため、弁護士の間での営業競争も激化していきました。ただ、従来型の弁護士像にこだわらず、企業や役所に勤務する組織内弁護士(インハウスローヤー)も増えてきています。

まとめ

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かつて、弁護士という職業の社会的地位は決して高くありませんでした。現在の地位や信頼は、先人が誠実な仕事を地道に継続し、懸命に培ってきた賜物だといえます。現在の弁護士も犯罪や不正に手を染めないよう、社会的信頼を後世に伝えていかなければなりません。

<参考>
港都綜合法律事務所-裁判の歴史

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