IFRS導入企業で求められる経理マネージャーの役割とは?転職市場の動向から解説

「IFRSが経理のキャリアに与える影響とは?」
グローバル化が加速する現代において、IFRS(国際会計基準)は、単なる会計基準ではなく、経理部門の変革を象徴する重要なキーワードです。
日本でもIFRSを導入する企業が増加しており、特に経理マネージャーには、従来の業務知識に加えて新たな役割が求められています。
この記事では、IFRS導入企業で経理マネージャーに求められる具体的なスキルや役割、そしてIFRS経験がキャリアにどうつながるのかを、転職市場の動向を交えて解説します。
IFRS導入の背景と対象企業の広がり
結論として、IFRS導入は海外展開やM&A、上場準備といった企業のグローバルな成長戦略に不可欠な要素として加速しています。
IFRSは世界140以上の国と地域で採用されており、海外の投資家や取引先との共通言語となりつつあります。
これにより、企業の財務情報が透明化され、国際的な資本市場での資金調達やM&Aを有利に進めることが可能となります。
海外子会社を持つ企業はグループ全体の業績を正確に把握でき、M&Aにおいては買収後の経営統合プロセスがスムーズになります。
上場準備企業においても、海外投資家からの注目度を高めるため、IFRSへの移行を前提とした準備が進められています。
このように、IFRS導入は単なる会計処理の変更ではなく、企業の成長戦略を支える重要な経営判断となっているのです。
経理マネージャーに求められるスキルセットとは
IFRS導入企業の経理マネージャーは、IFRSの専門知識に加え、プロジェクトを動かすマネジメント力と、社内外の関係者と調整するコミュニケーション能力をバランスよく持ち合わせる必要があります。
IFRS導入プロジェクトを成功に導くには、専門知識だけでは不十分です。
チームメンバーのスキルやモチベーションを把握し、タスクを適切に割り振るチームマネジメント力が不可欠です。
また、IFRS導入は経理部門だけでなく、情報システム、営業、経営企画など多岐にわたる部門に影響を及ぼします。
そのため、これらの関係部門と連携し、利害関係を調整しながらプロジェクトを推進する力が不可欠です。
監査法人やコンサルタントといった外部の専門家との連携も多く、彼らとの円滑なコミュニケーションを通じて、プロジェクトの方向性を定め、適切なアドバイスを得ることもマネージャーの重要な役割です。
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IFRS導入プロジェクトにおけるマネジメント業務
経理マネージャーはIFRS導入プロジェクトにおいて、スケジュール策定から影響範囲の特定、監査法人との折衝、経営層への報告に至るまで、プロジェクト全体を俯瞰し、管理する役割を担います。
プロジェクトの成功には綿密な計画が不可欠です。
IFRSの適用範囲を特定し、各タスクの担当者とスケジュールを明確にすることで、プロジェクトの遅延を防ぎます。
次に、IFRSへの移行が財務諸表に与える影響項目を洗い出し、影響度を分析することも重要な業務です。
特に注記の対応は、財務情報の透明性を高める上で欠かせない作業であり、専門的な知識が求められます。
また、監査法人との連携はIFRS導入プロジェクトの成否を握る鍵となります。
新しい会計方針について監査法人と事前に協議し、認識の相違をなくしておくことで、監査手続を円滑に進められます。
さらに、プロジェクトの進捗状況や課題、IFRS導入が業績に与える影響について、経営層に定期的に報告し、経営判断をサポートすることも重要な役割です。
経理からの視点:現場と経営の橋渡し役としての役割
経理マネージャーは既存業務の見直しや統一、新しいルールの再設計を通じて、現場の業務プロセスをIFRSに適合させつつ、経営の意思決定に貢献する「橋渡し役」として期待されます。
IFRSは、単に勘定科目を変更するだけでなく、会計方針や業務プロセスそのものを見直すきっかけとなります。
例えば、これまで事業部ごとにバラバラだった収益認識のルールをIFRSに合わせて統一したり、固定資産の減損テスト方法を変更したりといった作業が必要です。
この際、現場のメンバーが新しいルールを理解し、円滑に業務を遂行できるよう、分かりやすく説明し、サポートする役割が不可欠です。
同時に、IFRS導入によって生じる財務諸表の変動や、業務プロセスの変更が経営にどのような影響を与えるかを経営層に正確に報告することも重要です。
経理マネージャーは、現場で生じる具体的な課題や疑問点を経営層に伝え、そのフィードバックを現場に還元することで、スムーズな導入を促します。
転職市場における「IFRS×マネジメント」の需要
IFRS導入経験とマネジメント経験を兼ね備えた人材は、転職市場で非常に高い需要があります。
弊社MS-Japanの転職エージェントサービスにおいても、IFRS導入経験を持つ大企業の経理担当者からのご相談は、年間を通してもごくわずかです。
これは、IFRS導入済み企業に貴重な戦力として留まる方が多いこと、また転職市場にIFRS導入経験者が非常に少ないためです。
しかし、採用企業側からの求人相談や、今後IFRSを導入したいと考えている中堅企業とのやり取りを通して、IFRS経験者への強いニーズがあることを肌で感じています。
企業が経理マネージャー候補に求めるのは、単なるメンバーとしての関与ではなく、「IFRS導入そのものをリードした経験」や「特定の論点について、深い理解を持って実務に落とし込んだ経験」です。
特に、社内の業務フローや開示、運用まで含めた全体像を把握し、主担当としてプロジェクトを推進した経験は、経理担当者としての市場価値を飛躍的に高めるでしょう。
また、日本基準からのIFRSへの「コンバージョン(組替)」経験と、IFRSを前提とした月次・年次決算の実務経験では、企業の状況によって評価ポイントが異なります。
導入直前または導入中の企業では、スムーズな移行を実現するためのコンバージョンプロセスの知見が重要視されます。
一方、既にIFRSを導入済みの企業では、IFRSベースでの安定した運用力や開示スキルが求められる傾向があります。
IFRSを活かしたキャリアアップ戦略
IFRS導入プロジェクトへの参加は、キャリアを次のステップに進めるための重要な実績となります。
IFRS導入プロジェクトは、経理マネージャーに求められるスキルを身につける最高の機会であり、将来のマネージャー登用やキャリアアップの「踏み台」として非常に有効です。
IFRS導入プロジェクトでは、単にIFRSの知識を得るだけでなく、経営層や他部署との連携を通じて、組織全体を動かす経験を積むことができます。
これは、一般的な経理業務では得難い経験です。
IFRS導入経験を持つ経理マネージャーには、以下のキャリアパスが現実的な選択肢となります。
1.事業会社でのCFO候補、あるいは経営企画・IRポジションへのステップアップ
IFRS導入経験は、「経営情報としての会計」の深い理解を伴います。
この経験は、将来的に企業の経営戦略を担うCFOや、投資家との対話を担うIR(Investor Relations)といったポジションへの足がかりとなり得ます。
2.監査法人・コンサルティングファームへの転身
IFRS導入支援や開示支援を行うアドバイザリー部門では、事業会社での実務経験者を歓迎する声が多く聞かれます。
事業会社側の視点や課題を理解している人材は、クライアントへのより実践的なアドバイスに繋がるためです。
まとめ|変革期の経理マネージャーに必要な視座
結論として、この変革期において経理マネージャーに求められるのは、IFRSという専門知識を武器に、現場と経営の橋渡し役を担い、組織全体の成長を牽引するという視座です。
これからの経理は、単に過去の数字を整理するだけでなく、未来の成長を支える戦略的な役割を担います。
IFRSはそのためのツールであり、この変化を捉え、自らのスキルアップに繋げられるかが、キャリアを左右する鍵となります。
IFRS導入の実務経験は非常に希少性が高く、その経験を持つ経理人材は市場においても高い評価を得ています。
一方で、企業側も「導入経験があるかどうか」だけでなく、「それをどう実務に落とし込めるか」「チームをどう巻き込めるか」といった実行力や人間力を重視していることは間違いありません。
今後IFRSを導入・運用していく中で、変化の渦中で価値を発揮できる人材が求められていくでしょう。
もし、IFRSを活かしたキャリアアップに興味がある、自分の市場価値を知りたいと感じたら、管理部門と士業に特化した転職エージェントであるMS-Japanにご相談ください。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、大手出版系企業を経て現職へ入社。
主に大手・新興上場企業を対象とする法人営業職を4年、キャリアアドバイザーとして10年以上に及ぶ。
経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ コンサルティング ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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