不当利得と損害賠償!企業法務の選択は......?
近年企業の不祥事や不正行為が増え、企業法務の重要性が高まっています。
この記事では、企業法務が対処すべき不祥事や不正行為について解説します。
企業の不祥事は絶えない!?
社員の不祥事には様々なものがある。いつ何時発生するか分らない社内犯罪に対処すべき企業法務は重要性を増すばかりだ。横領や使い込みなど業務と関係する不祥事は、企業の経済損出を拡大する恐れがある。会社員にありがちなプチ不祥事といえば出張費や交通費の不正申告がその一例。発覚した不正額がお小遣い程度なら、返済及び厳重注意による戒告、けん責処分でその場を収めることができる。しかし流用金額が大口となると、業務上横領により告発される可能性が高まる。被害に遭った会社も内々で問題を処理することが難しくなるだろう。
損害賠償問題。刑事、民事両面に備える企業法務!
業務上横領罪(刑法253条)は罰金刑がないので、たとえ横領額が100万円を超えなくても、実刑になるケースさえある。会社と示談が成立しなければ、初犯であっても刑務所行きとなるのが業務上横領罪だ。示談が成立すればそれに越したことはない。ただ、刑事事件を逃れても民事上の不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)、不当利得金返還請求(同704条)を問われることになる。賠償額が膨れ上がれば、不正を働いた社員の返済額は当然増える。なかには自己破産を選択して、弁済を回避しようとする横領社員もいる。破産の免責が決定すれば債務の支払いは免除される。
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ところが、横領を企てた社員は"悪意"による不正行為を働いているので、損害賠償請求の支払い義務から逃れることはできない。(破産法253条) 一括返済が不能なら、完済されるまで分割ローンの支払いを余儀なくされる。賠償金を給与から天引きするのは労働基準法に違反するため、別途、支払い請求が必要になる。企業として押さえていきたいポイントだ。ただし例外もある。「労働者が同意し、自由な意思に基づくものと認めるに足る合理的な理由が客観的に存在するときは、労基法24条に違反しない」と最高裁が示している。(平成2年:日新製鋼事件)
不祥事による企業の経済的損出は後を絶たない。会社と社員による被害の弁償、もしくは弁済計画による合意がなされれば、訴訟に発展することは避けられる。万が一社員との間で示談が成立しなければ、舞台は法廷に移行。事件からの経過年数、立証内容を考慮し、訴訟を提起することになる。不当利得金返還請求権は消滅時効が10年(民法167条)、一方、損害賠償請求権は損害および加害者を知ったときから3年または不法行為のときから20年(民法724条)で時効を迎える。両者は請求権競合にあるとされるが、一般的に利用されているのは損害賠償請求権。企業にとって最善の方法を弁護士とともに考えていきたいものである。
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