「中途採用における入社後フォローのポイント」
第47回2008/12/17
「中途採用における入社後フォローのポイント」
「中途採用における入社後フォローのポイント」
前2回にわたり「中途採用におけるポイント」を「募集時」、
「選考時」に分けて説明してきました。
採用活動は、内定を出した候補者が自社に入社の意思表示を示し、
入社後に活躍してこそ意味のあるものになります。
今回は良い候補者が見つかり、いよいよ共に働こうという「内定時~入社後」の時期について、
いかに内定辞退のリスクを避け、尚且つ入社後できるだけ早く仕事場に馴染み、
活躍してもらうかを『内定を出す際』、『候補者が内定を受諾してから入社まで』、
『実際に入社してから』の3段階に分けて説明します。
いよいよ『中途採用における選考時のポイント』の最終章です。
ポイントをしっかり押さえ、自社、候補者の両者に実りのある採用を成功させましょう。
~内定~
■内定を出す際に注意すべきポイント
何名もの書類選考から数回にわたる選考も佳境を迎え、
いよいよ採用活動も最終段階に入りました。
良い候補者とも巡り合い、入社して欲しいという方が現れたとします。
しかし、自社に是非とも入社して欲しいと思う優秀な候補者は
他の企業からも同じように評価されているでしょう。
その状況下で、もし企業側が自社に合う人材を一方的に
"選ぶ立場"にあるという考えを持っていたとしたら、
恐らく現在の転職市場では、優秀な人材の確保に熱心な他企業に遅れを取ることになります。
では逆に、候補者に企業側から必要とされていることを感じさせられればどうでしょう。
人は誰しも好意を寄せられて悪い気はしません。
少なからずその気持ちに応えようという気持ちが沸き起こるはずです。
候補者は共に会社を育てていく同志だということを決して忘れずに、
選考活動の最終段階である内定通知という段階に入りましょう。
■内定通知
候補者に「是非入社してもらいたい」という意思を伝えるためにも、
まずは内定を口頭で(電話等)通知しましょう。
また、それと平行して書面での内定通知書を発行しましょう。
ここでのポイントは大きく2つあります。1つはできるだけ早く通知を出すことです。
ある会社が入社を決めた理由について調査したところ、
『最初に内定が出た企業だったから』が『やりたい仕事ができる』に
ほぼ次いでの理由だったという結果が出ました。
このような候補者の心理を考慮し、この人だという候補者が見つかった場合には
スピード面で他社に負けないよう迅速に動くことが重要なのです。
そして、候補者の事情を考慮しながら回答期日を区切り候補者に素早く回答をもらいましょう。
(一般的には内定通知後1週間がスタンダードな期日となっています。)
2つ目のポイントは内定通知書の内容です。
採用内定通知を出すにあたって
企業側は候補者に対して労働条件の明示を行う事が、労働基準法によって定められています。
必ず明示すべき労働条件として以下の5つがあります。
1 労働契約の期間に関する事項
(期間の定めのある労働契約の場合はその期間、期間の定めがない労働契約の場合はその旨)
2 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
3 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇
並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
(基本賃金の額、手当ての額又は支給条件、時間外、
休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金について
割増率を定めている場合にはその率ならびに賃金の締切日及び支払日等)
4 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
5 退職に関する事項、退職の事由及び手続き、解雇の事由及び手続き等を明示
これら5つの事項以外の説明が必要な場合は、口頭での説明で良いとされています。
しかし、数回に渡る選考で緊張を維持してきた候補者の視点で考えると
可能な限り書面で明示する方が良いと考えられます。
なぜなら文章として手元に残り、
見直すことができるのとできないのでは安心感が大きく異なるからです。
内定が決まった段階で年収、職種、職位等の諸条件が入った内定通知書を受け取る。
これは自分がその会社に入社するということを視覚的に実感できるものなのです。
主に上記の2点を意識し、内定が決まった候補者には、
口頭と書類で可能な限り詳細が書かれた条件・待遇通知を迅速に行いましょう。
~内定から入社まで~
■内定後の不安
候補者が内定を受諾した時点でいよいよ入社まで秒読み段階です。
只、この時期というのは候補者側にとって不安な時期でもあることはご存知でしょうか。
内定を受諾し入社日は決まったものの入社日まで多少時間があることで、
候補者は転職活動を冷静に見つめ直すことができます。
そこでは誰しも自身のこれからの将来について考えはじめます。
これから入る会社の雰囲気、仕事内容、先行き等。
転職活動になれている方はそう多くないため、
その不安からせっかくの内定を辞退してしまう候補者も中には出てきてしまいます。
ここでの主な入社辞退の理由としては4つが挙げられます。
1 現職からの強い引き留めや転職することへの不安からそのまま現職に残る。
2 他社で内定をもらい、そちらに行ってしまう。
3 家族からの反対にあい、入社を考え直す。
4 条件や待遇に実は不満や不安があった。
このような理由からともすれば内定受諾後でも辞退の連絡をしてくるケースもあります。
ここまで採用活動を行ってくるにあたって
企業側もかなりの時間と労力をかけてきたことでしょう。
ここまで力をかけた採用というプロジェクトを成功させる為にも、
内定を出した時点から実際入社し、
力を発揮してもらうまでどのようなフォローを行うかをもう一度見直すことが重要です。
■入社前フォロー
新しい会社と候補者との間には、少なからずギャップが存在します。
例えば、即戦力として考えるあまり目に見える学歴やスキル面の確認に重点を置き過ぎ、
パーソナリティや一緒に仕事をする自社の社員に馴染めるかを無意識のうちに軽視していた。
また、候補者側にも面接という選考の場で答えた回答と
実際の候補者の考えに多少のズレが生じることも多いにあります。
このような採用が行われたばかりに入社後のミスマッチを引き起こすことがあります。
逆にそういったミスマッチが起こりにくい採用を行っている企業の特徴があります。
具体的には候補者本人が入社意志を表明した段階で、
●再度候補者が十分に自社のことや業務内容を理解しているか、
提示した待遇に本当満足しているか確認する。
●配属先のメンバーが社内を案内する。
また、入社までに時間があく場合には、
●メールや電話等でできるだけ連絡を密にする。
●会食や再度オフィス見学など、配属先メンバーと直接コミュニケーションを取れる場を設ける。
採用が上手い企業はこのように候補者とできるだけ接点を持つように心がけ、
実際に本人が自社で働くというイメージを持てるような入社準備期間にしています。
候補者がいくら内定を受諾したといっても優秀な方ほど他社からの誘惑は多いでしょう。
少しの空き時間で構いません。
上記の具体例のような候補者への考慮や企業側が迎え入れてくれるという姿勢が伝われば、
入社における候補者のモチベーションは上がり、
入社後は期待以上のパフォーマンスを出してもらえるのではないでしょうか。
このような企業側からの能動的なアプローチが、入社前辞退を回避する大きな鍵になります。
なにがあっても候補者の気持ちが動かないよういち早く深い信頼関係を結びましょう。
しかし、いくら話し合いの場を重ねても本音が聞き出せず、
候補者の心を掴みきれない場合があります。
企業側と候補者が互いの本音や聞きたいことを聞く一つの手段として、
人材紹介会社を活用することは有効です。
人材紹介会社は、
候補者がどのような視点で企業を選んでいたかや転職の理由等を把握しています。
人材紹介会社は、条件や入社日の交渉だけではなく、
候補者の本音を第3者として聞きだすことができ、
企業の採用時には共に採用を行うアドバイザーとして大きな力になります。
~入社後~
■社内環境
無事入社日を迎え、候補者が出社。
ここで採用活動は無事終了と考えてしまうのはまだまだ時期尚早です。
あくまで企業としての目的は求職者を入社させることではなく、
入社後、長期的に活躍し、企業に貢献してもらうことだからです。
いくら即戦力と言っても、
候補者が自社で力を発揮するまではある程度企業側からのフォローが必要です。
すぐにでも力を発揮できる環境を作り出すことも、中途採用を行う企業には求められます。
中途採用で入社する中途入社者には多少なりともハンディがあります。例えば、
●入社したばかりで各社固有の環境に慣れていない点(コピー機や電話が異なる等)
●社内規則等においての前職とのギャップ
●企業側と候補者の認識の相違
●新卒と違い同期もいないことが多く、入社当初は本音で話せる場が少ない。
上記のようなことが重なり、なんとなくその場にいることに気まずさを感じたり、
焦りを感じたりすることも多く、それが強いストレスになることもあります。
そのような状況を少しでも減らす為には企業側の協力が必要です。
特に人事は勿論のこと、日々のマネジメントを行う、現場の理解が重要です。
仕事は勿論、社内の人間関係やその他慣習を教える言わば教育担当を現場に置いたり、
現場から離れた人事との面談も入社後は定期的に行いたいものです。
そして、人事は各現場の中間管理職と定期的にミーティングの場を設け、
問題が起こった際の対処法などについて情報共有しておくことも大切です。
■早期退職
入社後に一番問題となることが多く、ともすれば早期退職に繋がってしまう原因は
『入社前と仕事内容や条件、待遇が異なった』という問題です。
誰しも新たな期待を持ち、
いざ入社するも聞いていた話と異なる状況に身を置かれたら不安を覚えるに違いありません。
想定している仕事に入るにあたっての準備期間や、やむをえない組織変更による部署、
職務内容等の変更があれば、入社前に必ず伝える。
このように誠意を持った態度で候補者に接することにより
早期退職のほとんどが防げることものです。
事情が変わったことを入社する前に伝えず、貴重な人材を落胆させるか。
納得の上で入社してもらうかはその後の仕事にも大きく影響を及ぼします。
~まとめ~
現在と将来を見越した的確な組織力強化を早期に図るには、
即戦力となる経験者の採用が有効です。
しかし人を採用するということは物を買うのとは訳が違います。
「雇用のミスマッチ」を防ぎ、企業・候補者の双方にとって実りのある採用を実現する為には、
即戦力人材と安易に現場にあてはめるのではなく、
その人材の能力を最大限に引き出し、育成しようとする姿勢が必要なのです。
忘れてはいけないのは人材を入社させることが最終目的ではなく、
入社後長期的に活躍し、企業に貢献してもらうことが本来の目的であるということです。
そうすることが結果的に既存社員にも良い影響を与え、
企業として成長する為の新たな力になっていくのではないでしょうか。
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