「女性雇用(出産・育成)」
第23回2006/10/13
「女性雇用(出産・育成)」
「女性雇用(出産・育成)」
経済社会の変化に加え、社会における男女の役割の多様化を受け、
企業は女性の労働力を積極的に活用していく方向にあります。
優秀で意欲も高い女性を雇用・育成していくことは大変重要なことである一方、
女性特有の「出産」というライフイベントが、企業側の困惑を招くことも少なくありません。
ただし、景気が回復傾向の昨今、バブル崩壊後に採用を控えてきたことで、
30代の優秀層を大手企業をはじめとした
各企業が躍起になって採用しようとしている状況があります。
このような売り手市場を鑑みれば、
ベンチャーマインドを持った優秀な人材を採用するためには、
男女選り好みはしていられません。
この状況を踏まえ、今回は、企業の人材戦略のひとつとして、
企業側もそして雇用される女性側もより前向きになれる
「女性の雇用・育成」について解説します。
日本の女性の典型的な就労パターンは、
結婚・出産・育児を機にいったん労働市場から離脱するというものです。
年齢層別に労働力率をみると、30~34歳をボトムとするM字型カーブを描いています。
しかしながら、このボトムとなる30~34歳=結婚・出産・育児期の女性の就業希望は、
他の年齢層と同じくらい高いものとなっているのです。
つまり、「出産」という女性特有の大きなライフイベントが、
女性が就労し続けることの壁となっており、
女性労働者としては「人生設計の中で、
どうすれば無理なく企業の中で労働力を提供し続けられるのか」
という大きな課題を抱えている、ということです。
仕事をし続けたい女性がいる一方で、
企業側にとっては、女性を雇用するリスクは、一般的に男性が抱えるリスクよりも、
「出産」「育児」があるゆえに、もともと高いといえます。
以下にリスクの具体的内容を挙げます。
1)勤続年数の不確実性が大きく、採用・教育コストの負担感が大きい。
2)「出産」はある意味、時期的な予測が難しい出来事のため、本人の緊急
離脱による周囲のメンバーへの影響が大きく、場合によっては、業務の
しわ寄せからメンバーのモチベーションダウンにも発展しかねない。
3)産前産後休暇、育児休暇、復帰後の時短勤務など、一時的に労働力
が離脱するため、一定期間のみの人員補充という課題を抱えること
になる。
上記3点はもっともなリスクであり、
女性雇用に消極的にならざるを得ない企業側の事情もわからないではありません。
ただし、上記はあくまでも「容易に予測されるリスクが女性の方が高い」
という確率論の話だけであります。
特に昨今は、「出産」を除けば、男性も女性と同じリスクを抱える確率が高くなっています。
つまり、「育児休暇」や「時短勤務」を選択したい男性が増えてきた、ということです。
さらには終身雇用制が崩壊した今、転職が身近なものとなってきており、
労働力が離脱する前提で様々な対策を立てる必要がでてきています。
このような状況下において企業は、まずは男女こだわりなく、
優秀な人材を確保できるような魅力的な施策を考えていかねばならないのです。
ここでは参考までに、育児休業にまつわる独自の制度を取り入れて、
女性活用のピーアールに役立てている企業の具体例を挙げさせていただきます。
雇用される女性側からすると、
出産を軸とした育児休業中に発生する主な課題は
「3つのロス」=「1) 所得ロス」「2) キャリアロス」
「3) 業務知識ロス」だと言われています。
まずは、優秀な女性社員を確保しようとするならば、
この「3つのロス」に対応する具体的な対応策を立てればよい、ということになります。
1)「所得ロス」への取り組み事例
事例1)雇用保険からの支給以外に、産前・産後休業中に給与の4割相当分
を見舞金として支給。
事例2)社員の育児コストを用途に限定なく、年間30万円補助する制度を
実施(例・ベビーシッター代、遠方の父母に手助けを借りた際に
子どもが就学するまでの計7年間に適応される。
事例3)出産手当として第1子、第2子には50万円ずつ、第3子以降は200万
円を支給。
2)「キャリアロス」への取り組み事例
事例1)人事評価期間の半期以上において就業がある場合は、年間評価と
してみなされる。
事例2)復職規定として、育児休業明けには、休業直前の評価と全社員の
評価の平均値とを比較して、高い方をつけることになっている。
3)「業務知識ロス」への取り組み事例
事例1)休業中の会社の状況に関するレポートを定期的に送付する。
事例2)休業中におけるスキルアップのための図書費を会社が負担する。
事例3)社内情報を共有し、産前産後・育児休業中の社員にもリモートア
クセスを許可。通信料金も会社が負担。
このようにユニークな出産・育児へのバックアップ制度を打ち出すことで、
単純に優秀な女性へのアピールにもなりますし、
少子化問題が日本国家にとって緊急課題である以上、
企業の社会的責任を果たしている優良企業というイメージアップにもつながります。
さて、こういった出産・育児に対するバックアップ制度を整備していく一方で、
このようなライフイベントがない女性に対しても、
現在、女性が男性と同等に活躍していくための施策を講じている企業は増えてきています。
具体的には「女性管理職の登用・育成」です。
女性の採用自体は年々増加傾向にあるものの、
女性管理職の比率は役職者全体の10%前後といったところで、
まだまだ少数派にとどまっています。
これは、実際にロールモデル(手本)となる女性管理職の絶対数が少ないため、
周囲の男性社員も慣れないし、女性管理職本人がどこかに、
やりにくさ、とまどいを感じているからに他なりません。
これを解消していくためには、
企業が積極的かつ意識的に女性の管理職をモデルケースとして増やしていく、
という地道な活動が必要となってくるのです。
また、女性のための管理職養成セミナーや
女性育成のような研修を手掛ける講師や研修会社も出てきていますので、
積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
「商品のヒットは女性次第」と言われますが、
企業がこれから成長を続けるためには、
女性の雇用・育成・登用が、ポイントのひとつとなってくるでしょう。
少子化が社会問題として取り上げられているという現状を踏まえCSRの観点から、
そして優秀な人材確保という人材戦略の観点から、
ここで女性雇用について考えてみる機会を設けてみてはいかがでしょうか。
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