「フレックスタイム制」

第13回2005/10/11

「フレックスタイム制」


「フレックスタイム制」


我が国の経済社会は、サービス化や情報化の進展、
国際競争の激化等大きな変化に直面しており、
より限られた資源で従業員の生産性を向上させなくてはなりません。
今後我が国の経済が高い生産性と創造性を追求していくためには、
従業員が個々の個性と能力を十分発揮できる働き方が必要となっています。


一方、従業員の価値観や生活スタイルの多様化に対応して働き方に関するニーズが多様化し、
より柔軟で自律的な働き方への志向が強まっています。
このような状況の下で、一律的な時間管理が適切とは言えない状況が徐々に拡大しつつあり、
ホワイトカラー層を中心として、
より自律的かつ効率的な働き方に応じた労働時間管理が求められています。
こうした大きな課題への解決策として欧米や先進諸国では、
多様化する従業員と企業ニーズにより適切に対応する環境を提供する
フレックスタイム制が積極的に導入され、
現在では日本においても導入が進んでいます。


今回はこの『フレックスタイム制』に焦点をあて、解説します。


1.フレックスタイム制の定義

フレックスタイム制とは、始業終業の時刻を従業員に自由に選択できるようにした制度であり、
従来の働く時間、場所や方法を変化させることにより、
従業員の生産性や創造性を高めることができるなどのメリットがあり、
現在では従業員の満足度が高い柔軟な勤務形態の主流となっています。


この制度は出退社が自由な時間帯のフレキシブルタイムと、
必ず仕事に就いていなければならない時間帯のコアタイムで構成されます。
コアタイムを設けずにすべてフレキシブルタイムとすることも可能ですが、
この場合就業規則で始業終業の時刻を従業員に自由に任せる旨を定めたうえ、
労使協定を結ばなければなりません。


同じような制度として裁量労働制や時差出勤制がありますが、
裁量労働制は、労使協定に定める時間労働したものとみなすことができるという制度で、
使用者は従業員の各日の労働時間を把握する必要はありません。
但し締結された労使協定は労働基準監督署長に届け出る必要があるという点で
フレックスタイム制と異なります。
(ジャフココミュニティ第9回裁量労働制について)


また時差出勤制も始業時刻を何種類かの時刻から選べるという点では
フレックスタイム制と似た制度ですが、
時差出勤制では、1日の所定労働時間が定められているため、
始業時刻は選択できても、終業の時刻を選択する余地がないという点で大きな違いです。


2.フレックスタイム制のメリット

◆従業員の意識変化による生産性向上や自律性の向上
フレックスタイム制のもとでは、従業員個々人の業務に即した就業時間が設定でき、
自主性を尊重することにより創造性・柔軟な発想の促進や労働意欲、
そして業務効率の向上を図ることができます。
また、労働時間を管理することにより、自己管理意識が高まります。
これにより飛躍的な生産性の向上や個人の自律性の向上が図れます。


◆優秀な人材の採用や定着向上
フレックスタイム制の導入は先進諸国において飛躍的に導入が進んでおり
フォーチュン誌「働きやすい企業ベスト100社」のうち99%が導入しているなど、
学生や転職者に対し採用上有利に働き、
またそこで働く従業員にとっても自分の時間が持てるなど定着性向上につながります。


◆顧客サービスの向上
フレックスタイム制は従業員の自主性を尊重し創造性や労働意欲を喚起させ、
業務効率を向上させます。
その結果、新たな業務の見直しや創意工夫を通じ
顧客サービスの向上につながる付加価値サービスが生まれ、
顧客サービスの向上につながります。


◆コスト削減効果
年間を通じて繁忙期と閑散期との時間調節が付けやすく、
残業時間を減らすことができ、賃金コストを低減させることができます。
たとえば、取引先との関係で一日のうち特定の時間帯が忙しくなるような部署の場合、
フレックスタイム制を導入することにより、
普通の労働時間制で発生する
比較的ヒマな時間帯にも労働についていなければない状態をなくし、
賃金コスト削減を実現できます。
また、従業員個人にとっては仕事に対して
より高い自由とコントロールの確保や新しい知識や技術習得のための勉強の機会、
仕事と私生活のバランスの向上、
時差通勤によるストレスと疲労の削減などといったメリットもあります。


3.フレックスタイム制度導入のポイント
◆運用対象者を明確にする
フレックスタイム制を適用する社員の範囲を明確に定めることが重要です。
対象となる範囲を全社員にするのか、ある特定の部署や職種にするのか等、
フレックスタイム制になじまない部署や職種もあるため、
社内で十分議論し対象者を選定することが重要です。


◆コアタイムの設定
一定時間以外、従業員を拘束できないので、
一定時間以外の「会議」や「社外の打ち合わせ」の出席を強制できないため、
コアタイム、フレキシブルタイムの設定は適切であるのか、コアタイムの拡大、
フレキシジブルタイムの短時間化を行うなどの工夫が必要です。
これは従業員各人の就業時間が不規則となることから、
社内間でのコミュニケーション不足にも大きく影響してきます。


◆顧客対応へのリスク回避
出社時刻が遅くなることで担当者が不在になるなど対外的に問題が生じないために、
フレックス制を採用していることを取引先にもあらかじめ説明しておいて理解を求めることや、
出社時刻をあらかじめ申告させるようにするなどの対策が考えられます。
また、「担当者がいなければ分からない」ことを当然だと考えるのではなく、
どこまで「情報の共有化」ができるかを検討することも重要です。
この点ついては、社内電子メールやグループウエアなどを導入が考えられます。


◆制度の運用や管理者のマネジメント能力
導入後、遅刻や欠勤など時間に対してのけじめが薄れる従業員の増加や、
取引先へのサービス低下などのマイナス面が表面化しないように、
業務フローおよびこれからの管理監督者のマネジメント力などが重要なポイントになってきます。
最近、大手上場企業の一部でフレックスタイム制の廃止というケースが出ていますが、
フレックスタイム制は単に制度を導入するだけでは成果や期待する効果は得られません。
まずは社員と上司が正しく制度を理解し運用することが重要です。
また制度の成功率を高めるためには、
フレックスタイムについての適切な研修とガイドブックを提供するなど、
効果的な導入・運営を行うことが不可欠になります。
これは、制度導入部門と非導入部門との間で不公平が生じる可能性にもつながるため、
従業員にしっかりとしたフレックスタイム制に関しての知識や
必要性を理解してもらう必要があります。

管理部門・士業業界最大級の求人数と職種・転職に精通したアドバイザーが転職をサポート。ご要望に応じた転職先をご提案いたします。

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