「女性の活躍は推進されるのか?」
第108回2016/01/18
「女性の活躍は推進されるのか?」
「女性の活躍は推進されるのか?」
アベノミクスの成長戦略にも謳われている『女性の活躍推進』。
数年前からこのような話題が多く取り上げられ、人事制度も導入はしたものの実態としてはまだまだ女性を活かしきれていないという会社の方が多いのではないでしょうか。今回は、そもそも女性活用を推進するに至った背景から、見えてきた課題、女性活用に成功している例を取上げることで、女性活躍のために企業としてどのようにあればよいかというヒントを探していければと思います。
女性活用の背景と現状
そもそも、女性活用という言葉はなぜ叫ばれるようになったのでしょうか。
その理由としては大きく分けて2つ、①少子高齢化に伴う労働人口の減少と、②厳しい日本のお財布事情があります。従来日本では、「男は外、女は内」という封建的な考え方が強く浸透しており、あくまで労働の主体は男性でした。しかし、少子高齢化に伴う社会保障費の増加が深刻な問題として顕在化しました。そこで、国力維持のために女性の社会進出は喫緊の課題となり、男女雇用機会均等法(1986年施行)を始めとする男女平等をベースとした積極的な雇用政策を推し進めてきました。女性の社会進出は進んだものの、結婚後も管理職としてキャリアを築く女性はまだまだ少数派で、多くの女性は比較的時間の調整がつけやすい非正規雇用や非管理職に留まり、思うほどの成果を上げられませんでした。また、直近の労働力確保には成功したものの、その弊害として女性の晩婚化や非婚化が進んでおり合計特殊出生率は2%を割り続けているといった現状があります。
このままの状況が続けば、更なる少子高齢化は避けられず、労働人口は減少の一途を辿ることが想定されます。そのためには女性が活躍しつつも、結婚・出産等のライフイベントが叶えられるよう国を挙げて推進していくことが急務となりました。
女性活躍推進法 ~出生率増と女性のキャリアを両立可能にするために~
そのための一案が、平成28年4月1日より施行となる女性活躍推進法です。具体的な内容としては、労働者301人以上の大企業向けに、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが新たに義務づけられることとなりました。その行動計画策定にあたって、女性の活躍に関する状況把握が必須となっており、具体的には <採用した労働者に占める女性の割合>、<女性管理職の割合>、<男女の平均勤続年数>、<労働者の平均残業時間>を始めとする内容を検証の上、行動計画を自社ホームページや、厚生労働省が開設する「女性活躍・両立支援総合サイト」等へ公表することが必須となりました。
また、それ以外にも女性の管理職を増やす取組みを実施する際に、求人要綱へ「女性のみを対象とする」旨を明記したうえで募集が出来るようになります。また、女性の活躍推進に取り組む事業主を支援する助成金制度も設けており、国として力を入れている分野となっています。
事業会社内における、女性活用の実態
やはり、ポジティブアクションの推奨ということで積極的に採用を行う企業が増えてきているものの、転職検討中の方の話を伺う限り、何らかの理由で働き辛さを感じている方がまだまだ大多数という印象です。
例えば、「制度としてはあるものの、部署が忙しいためなかなか取得し辛い」ことや、「キャリアを築いていきたい。けれども、育児休暇を取得した後に子供の病気などで突発的に帰宅しなければならないことが続くと、周囲の目もあり仕事を続け辛い」といった話などです。仕事を続けたいという意思を持ちながら、両立は叶わないという判断をされたときにやむを得ず転職を検討する方がまだまだ多くいる印象です。
こういった従業員の声を丁寧にすくいあげ、働き方をオープンに議論し改善している企業もあります。特に約7年間で離職率が28%から4%へ低下したサイボウズ社の取組みは、経済産業省にも参考例として取り上げられています。(女性の活躍推進に向けた経済産業省の取組http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/jjkaigou/dai12/siryou4-3.pdf)
同社は個々人が様々な働き方を希望している事に着目し、人事制度の導入についても決定に至るまでのプロセスに社員の声を取り入れています。その背景にあるのは、経験を重ねてノウハウを蓄積してきた社員の早期離職を止めたかったから。また、今後同社を担っていく人材を考えた時に、新卒社員や女性社員も含めて多様なバックグラウンドを持つ人材を長期的に育成していかなければいけないことが課題と捉えていたためです。
そのような背景のもとで作られた社内制度は、運用にあたって他の従業員から不満があればその声を吸い上げ、会社と従業員が意見交換をしながら、少しずつ制度に手を加えています。社員の一人一人が制度設計に携わることで、社員の主体性を促し、自ずと業務にも活かされている印象です。
上記に挙げたサイボウズ社の手法は、企業規模や売上規模に拘らずすぐに取り入れられるのではないかと思い取上げさせていただきました。詳しくはこちらのリンクにも記載がありますので参照下さい。 (サイボウズ青野社長に聞く、離職率を28%から4%に下げる方法。http://careerhack.en-japan.com/report/detail/215)
まとめ ~企業も、就労者もWIN-WINな関係を築くために~
現在は女性活躍が推進されている状況ですが、冒頭に示したように将来的な就業可能人口を考えると、ゆくゆくは女性だけではなく、高齢者や外国人など日本での就労者は多種多様なバックグラウンドを持つ人々が担っていくことが推測されます。それに応じて、働く側としても仕事に携わることそのものがモチベーションとなったり、より高いスキルを身に着けることで自身の市場価値を高めることを望む方もいたりと、「仕事」に対して多様な価値観を持つ方が増えていくことが想定されます。
女性は妊娠・出産というライフイベントを経験できる分、働き方の選択肢も男性と比較した場合にかなり幅広く、多種多様な働き方が可能です。そんな多様な働き方を認める社会が来るまでの第一歩として、まずは女性の働き方を考えるところから考えてみてはいかがでしょうか。
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【参照資料】
財務省HP
社会保障の費用と、その財源はどのように変化してきた?
https://www.mof.go.jp/gallery/201303.htm
(文/リクルーティングアドバイザー 逸見朋未)
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