2025年02月04日

【2025年版】IPO監査を担当した監査法人調査~IPO監査シェア率や監査報酬、クライアント傾向等~

IPO監査は、新規上場企業が投資家に対して財務情報の信頼性を示すための重要なステップであり、その責任を担う監査法人の動向は市場関係者やIPO準備中の企業にとって大きな関心事です。

本記事では、2023年および2024年に新たに証券取引所※への上場を達成した企業を対象として「監査法人毎の担当社数」「監査法人の規模別でのシェア率の変化」「監査報酬の水準や分布の傾向」といったポイントを各社のIR資料から深堀します。

※東京証券取引所(TOKYO PRO Marketを除く)、札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所。

※当記事で取り扱うデータの出典や用語等についてはこちらをご確認ください。

IPO監査を担当した監査法人と担当社数

2024年と2023年において、新たに証券取引所に上場した会社の監査(以下、IPO監査)を担当した監査法人を担当社数順に並べると以下の通りとなります。

担当監査法人 2024年 2023年
担当
社数
シェア 担当
社数
シェア
太陽 14 16.28% 11 11.46%
EY新日本 13 15.12% 14 14.58%
トーマツ 10 11.63% 17 17.71%
PwC Japan 10 11.63% 13 13.54%
あずさ 10 11.63% 11 11.46%
仰星 4 4.65% 6 6.25%
三優 4 4.65% 5 5.21%
ESネクスト 3 3.49% 1 1.04%
FRIQ 3 3.49% 0 0.00%
A&Aパートナーズ 2 2.33% 4 4.17%
東海会計社 2 2.33% 1 1.04%
みおぎ 2 2.33% 0 0.00%
東陽 1 1.16% 3 3.13%
大有 1 1.16% 2 2.08%
銀河 1 1.16% 1 1.04%
史彩 1 1.16% 1 1.04%
双葉 1 1.16% 0 0.00%
シンシア 1 1.16% 0 0.00%
シドー 1 1.16% 0 0.00%
アヴァンティア 1 1.16% 0 0.00%
Mooreみらい 1 1.16% 0 0.00%
應和 0 0.00% 2 2.08%
あかり 0 0.00% 1 1.04%
コスモス 0 0.00% 1 1.04%
RSM清和 0 0.00% 1 1.04%
ACアーネスト 0 0.00% 1 1.04%

※表は2024年における担当IPO監査社数降順。

2024年は太陽が担当社数14社と最も多い結果となりました。また、ESネクスト(2020年7月設立)、FRIQ(2021年1月設立)といった比較的新しい監査法人も担当社数を順調に伸ばしています。

IPO監査を担当する監査法人は分散化

なお、監査法人の規模別に分類すると以下のようになります。

分類 2024年 2023年
担当社数 シェア 担当社数 シェア
Big4 43 50.00% 55 57.29%
準大手 23 26.74% 25 26.04%
中小 20 23.26% 16 16.67%
全体 86 100.00% 96 100.00%

※本記事では公認会計士・監査審査会「令和6年版 モニタリングレポート」に倣い、有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、EY新日本有限責任監査法人及びPwC Japan有限責任監査法人の4法人を大手(Big4)監査法人。仰星監査法人、三優監査法人、太陽有限責任監査法人及び東陽監査法人の4法人を準大手監査法人。その他の監査法人を中小監査法人と分類しています。

Big4監査法人のシェア率が7.29ポイント減少した一方で、中小監査法人のシェア率が6.59ポイント増加しました。なお、準大手監査法人は0.7ポイントと微増にとどまりました。
結果として、2024年は相対的に中小監査法人が新規上場企業の受け皿として重要な役割を果たしたことが伺えます。

監査報酬の分布

次に監査報酬について2024年に上場した企業の直近の監査報酬」と「2023年に上場した企業の直近の監査報酬」(いずれも年間報酬)を比較しました。

平均値 中央値 最大値 最小値
2024年 2,766 1,825 26,500 900
2023年 2,350 1,856 9,600 770

※万円単位、千円以下四捨五入
※2024年:n=86 / 2023年:n=96

※札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所に上場した企業を含む

2024年に上場したキオクシアホールディングスの監査報酬が26,500万円と全体と比較して相対的に高額であったため平均値が増加していますが、監査報酬の中央値は同水準となりました。

なお、市場別に東証グロース、東証スタンダード、東証プライム市場別に分けると以下のようになります。

東証グロース

【グロース】監査報酬分布(万円単位)

グロース 平均値 中央値 最大値 最小値
2024年 2,186 1,750 10,300 900
2023年 2,155 1,824 5,800 770

※万円単位、千円以下四捨五入
※2024年:n=64 / 2023年:n=66

グロース市場においては1,000~1,499万円の監査報酬が最も多く、1,000~2,499万円以内に半数近くが集中していることが分かります。
監査報酬の平均値と中央値をみると、2023年と2024年では大きな変化はなかったため、グロース市場に上場する企業の監査報酬は直近では安定していることが見て取れます。

東証スタンダード

【スタンダード】監査報酬分布(万円単位)

スタンダード 平均値 中央値 最大値 最小値
2024年 3,233 2,420 10,800 1,300
2023年 2,550 2,110 8,000 1,000

※万円単位、千円以下四捨五入
※2024年:n=13 / 2023年:n=23

東証スタンダード市場においては、監査報酬が1,500~1,999万円の報酬帯が最も多い結果となりましたが、各社の監査報酬にばらつきがあるため、その年の上場銘柄次第であるといえるでしょう。

東証プライム

東証プライム市場に上場した企業は2024年が4社、2023年が2社だったため、個別の監査報酬を記載します。

公開日 会社名 担当監査法人 監査報酬(万円)
23年
4月
楽天銀行 EY新日本 6,800
23年
10月
KOKUSAI ELECTRIC EY新日本 9,600
24年
10月
インター
メスティック
太陽 3,390
24年
10月
東京地下鉄 トーマツ 8,700
24年
10月
リガク・
ホールディングス
PwC Japan 8,800
24年
12月
キオクシア
ホールディングス
PwC Japan 26,500

※表は公開日昇順。

東証プライムに上場した企業でも各社の監査報酬にばらつきがありますが、最低額でも3,000万以上と相対的に高額の監査報酬がかかることが分かります。

【監査法人規模別】クライアント企業が上場した市場

Big4、準大手、中小監査法人それぞれにおいてクライアントの上場した市場分布は以下の通りです。なお、中小監査法人は各社1~4社程度のIPO監査件数であるため、中小監査法人全体の合算値を記載しています。

監査クライアントの上場市場2023年、2024年の2年間において、東証プライムに上場した企業のIPO監査はBig4もしくは太陽が担当しています。
基本的には東証グロース→スタンダード→プライムと上場の審査要件が厳しい市場になるほど、Big4や準大手監査法人が担当する傾向があります。

【監査法人規模別】監査報酬比較

次に、監査法人の規模に分けて監査報酬を比較しました。

2024年 平均値 中央値 最大値 最小値
Big4 3,848 2,500 26,500 1,200
準大手 1,789 1,550 3,675 1,130
中小 1,561 1,465 4,600 900

※万円単位、千円以下四捨五入

2023年 平均値 中央値 最大値 最小値
Big4 2,751 2,125 9,600 1,000
準大手 1,866 1,450 4,797 770
中小 1,727 1,500 3,300 870

※万円単位、千円以下四捨五入

Big4監査法人においては、2023年から2024年にかけて監査報酬の平均値、中央値、最大値、最小値がすべて増加しており、準大手並びに中小と比較しても報酬の水準が高額であることが分かります。一方、準大手監査法人と中小監査法人との間では報酬水準に顕著な違いは見られないものの、全体的に監査報酬の最小値の上昇が見て取れます。

まとめ

当記事ではIPO監査シェア率や監査報酬、クライアント傾向について分析しました。市場関係者やIPOを目指す企業の方々の参考になりますと幸いです。

出典・免責事項・引用・転載など

※本記事は、2025年1月時点における日本取引所グループ、札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所の公開情報及び、IPOを行った各社のIR資料より引用、集計しております。
※TOKYO PRO Marketは今回調査の対象から除外しています。
※2023年12月1日付でPwCあらた(存続監査法人)とPwC京都は合併し、同日付でPwC Japan有限責任監査法人となっているため、本記事では2023年のデータにおいてはPwCあらたとPwC京都の各種数値を合算し、PwC Japan有限責任監査法人として取り扱っています。
※本記事は公開情報や各種データに基づき、できる限り正確性を保つよう合理的な努力を行って作成しております。しかしながら、企業活動や市場動向、情報源の更新状況は日々変化するため、MS-Japanとして本記事に掲載された情報が常に最新かつ正確であることを保証するものではありません。
※本記事のデータを一部または全て引用する場合は、引用元として当社名と当ページを明記の上、リンクをお願いします。

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