【2025年版】IPO監査を担当した監査法人調査~IPO監査シェア率や監査報酬、クライアント傾向等~

IPO監査は、新規上場企業が投資家に対して財務情報の信頼性を示すための重要なステップであり、その責任を担う監査法人の動向は市場関係者やIPO準備中の企業にとって大きな関心事です。
本記事では、2023年および2024年に新たに証券取引所※への上場を達成した企業を対象として「監査法人毎の担当社数」「監査法人の規模別でのシェア率の変化」「監査報酬の水準や分布の傾向」といったポイントを各社のIR資料から深堀します。
※東京証券取引所(TOKYO PRO Marketを除く)、札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所。
IPO監査を担当した監査法人と担当社数
2024年と2023年において、新たに証券取引所に上場した会社の監査(以下、IPO監査)を担当した監査法人を担当社数順に並べると以下の通りとなります。
担当監査法人 | 2024年 | 2023年 | ||
---|---|---|---|---|
担当 社数 |
シェア | 担当 社数 |
シェア | |
太陽 | 14 | 16.28% | 11 | 11.46% |
EY新日本 | 13 | 15.12% | 14 | 14.58% |
トーマツ | 10 | 11.63% | 17 | 17.71% |
PwC Japan | 10 | 11.63% | 13 | 13.54% |
あずさ | 10 | 11.63% | 11 | 11.46% |
仰星 | 4 | 4.65% | 6 | 6.25% |
三優 | 4 | 4.65% | 5 | 5.21% |
ESネクスト | 3 | 3.49% | 1 | 1.04% |
FRIQ | 3 | 3.49% | 0 | 0.00% |
A&Aパートナーズ | 2 | 2.33% | 4 | 4.17% |
東海会計社 | 2 | 2.33% | 1 | 1.04% |
みおぎ | 2 | 2.33% | 0 | 0.00% |
東陽 | 1 | 1.16% | 3 | 3.13% |
大有 | 1 | 1.16% | 2 | 2.08% |
銀河 | 1 | 1.16% | 1 | 1.04% |
史彩 | 1 | 1.16% | 1 | 1.04% |
双葉 | 1 | 1.16% | 0 | 0.00% |
シンシア | 1 | 1.16% | 0 | 0.00% |
シドー | 1 | 1.16% | 0 | 0.00% |
アヴァンティア | 1 | 1.16% | 0 | 0.00% |
Mooreみらい | 1 | 1.16% | 0 | 0.00% |
應和 | 0 | 0.00% | 2 | 2.08% |
あかり | 0 | 0.00% | 1 | 1.04% |
コスモス | 0 | 0.00% | 1 | 1.04% |
RSM清和 | 0 | 0.00% | 1 | 1.04% |
ACアーネスト | 0 | 0.00% | 1 | 1.04% |
※表は2024年における担当IPO監査社数降順。
2024年は太陽が担当社数14社と最も多い結果となりました。また、ESネクスト(2020年7月設立)、FRIQ(2021年1月設立)といった比較的新しい監査法人も担当社数を順調に伸ばしています。
IPO監査を担当する監査法人は分散化
なお、監査法人の規模別に分類すると以下のようになります。
分類 | 2024年 | 2023年 | ||
---|---|---|---|---|
担当社数 | シェア | 担当社数 | シェア | |
Big4 | 43 | 50.00% | 55 | 57.29% |
準大手 | 23 | 26.74% | 25 | 26.04% |
中小 | 20 | 23.26% | 16 | 16.67% |
全体 | 86 | 100.00% | 96 | 100.00% |
※本記事では公認会計士・監査審査会「令和6年版 モニタリングレポート」に倣い、有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、EY新日本有限責任監査法人及びPwC Japan有限責任監査法人の4法人を大手(Big4)監査法人。仰星監査法人、三優監査法人、太陽有限責任監査法人及び東陽監査法人の4法人を準大手監査法人。その他の監査法人を中小監査法人と分類しています。
Big4監査法人のシェア率が7.29ポイント減少した一方で、中小監査法人のシェア率が6.59ポイント増加しました。なお、準大手監査法人は0.7ポイントと微増にとどまりました。
結果として、2024年は相対的に中小監査法人が新規上場企業の受け皿として重要な役割を果たしたことが伺えます。
監査報酬の分布
次に監査報酬について「2024年に上場した企業の直近の監査報酬」と「2023年に上場した企業の直近の監査報酬」(いずれも年間報酬)を比較しました。
平均値 | 中央値 | 最大値 | 最小値 | |
---|---|---|---|---|
2024年 | 2,766 | 1,825 | 26,500 | 900 |
2023年 | 2,350 | 1,856 | 9,600 | 770 |
※万円単位、千円以下四捨五入
※2024年:n=86 / 2023年:n=96
※札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所に上場した企業を含む
2024年に上場したキオクシアホールディングスの監査報酬が26,500万円と全体と比較して相対的に高額であったため平均値が増加していますが、監査報酬の中央値は同水準となりました。
なお、市場別に東証グロース、東証スタンダード、東証プライム市場別に分けると以下のようになります。
東証グロース
グロース | 平均値 | 中央値 | 最大値 | 最小値 |
---|---|---|---|---|
2024年 | 2,186 | 1,750 | 10,300 | 900 |
2023年 | 2,155 | 1,824 | 5,800 | 770 |
※万円単位、千円以下四捨五入
※2024年:n=64 / 2023年:n=66
グロース市場においては1,000~1,499万円の監査報酬が最も多く、1,000~2,499万円以内に半数近くが集中していることが分かります。
監査報酬の平均値と中央値をみると、2023年と2024年では大きな変化はなかったため、グロース市場に上場する企業の監査報酬は直近では安定していることが見て取れます。
東証スタンダード
スタンダード | 平均値 | 中央値 | 最大値 | 最小値 |
---|---|---|---|---|
2024年 | 3,233 | 2,420 | 10,800 | 1,300 |
2023年 | 2,550 | 2,110 | 8,000 | 1,000 |
※万円単位、千円以下四捨五入
※2024年:n=13 / 2023年:n=23
東証スタンダード市場においては、監査報酬が1,500~1,999万円の報酬帯が最も多い結果となりましたが、各社の監査報酬にばらつきがあるため、その年の上場銘柄次第であるといえるでしょう。
東証プライム
東証プライム市場に上場した企業は2024年が4社、2023年が2社だったため、個別の監査報酬を記載します。
公開日 | 会社名 | 担当監査法人 | 監査報酬(万円) |
---|---|---|---|
23年 4月 | 楽天銀行 | EY新日本 | 6,800 |
23年 10月 | KOKUSAI ELECTRIC | EY新日本 | 9,600 |
24年 10月 | インター メスティック | 太陽 | 3,390 |
24年 10月 | 東京地下鉄 | トーマツ | 8,700 |
24年 10月 | リガク・ ホールディングス | PwC Japan | 8,800 |
24年 12月 | キオクシア ホールディングス | PwC Japan | 26,500 |
※表は公開日昇順。
東証プライムに上場した企業でも各社の監査報酬にばらつきがありますが、最低額でも3,000万以上と相対的に高額の監査報酬がかかることが分かります。
【監査法人規模別】クライアント企業が上場した市場
Big4、準大手、中小監査法人それぞれにおいてクライアントの上場した市場分布は以下の通りです。なお、中小監査法人は各社1~4社程度のIPO監査件数であるため、中小監査法人全体の合算値を記載しています。
2023年、2024年の2年間において、東証プライムに上場した企業のIPO監査はBig4もしくは太陽が担当しています。
基本的には東証グロース→スタンダード→プライムと上場の審査要件が厳しい市場になるほど、Big4や準大手監査法人が担当する傾向があります。
【監査法人規模別】監査報酬比較
次に、監査法人の規模に分けて監査報酬を比較しました。
2024年 | 平均値 | 中央値 | 最大値 | 最小値 |
---|---|---|---|---|
Big4 | 3,848 | 2,500 | 26,500 | 1,200 |
準大手 | 1,789 | 1,550 | 3,675 | 1,130 |
中小 | 1,561 | 1,465 | 4,600 | 900 |
※万円単位、千円以下四捨五入
2023年 | 平均値 | 中央値 | 最大値 | 最小値 |
---|---|---|---|---|
Big4 | 2,751 | 2,125 | 9,600 | 1,000 |
準大手 | 1,866 | 1,450 | 4,797 | 770 |
中小 | 1,727 | 1,500 | 3,300 | 870 |
※万円単位、千円以下四捨五入
Big4監査法人においては、2023年から2024年にかけて監査報酬の平均値、中央値、最大値、最小値がすべて増加しており、準大手並びに中小と比較しても報酬の水準が高額であることが分かります。一方、準大手監査法人と中小監査法人との間では報酬水準に顕著な違いは見られないものの、全体的に監査報酬の最小値の上昇が見て取れます。
まとめ
当記事ではIPO監査シェア率や監査報酬、クライアント傾向について分析しました。市場関係者やIPOを目指す企業の方々の参考になりますと幸いです。
出典・免責事項・引用・転載など
※本記事は、2025年1月時点における日本取引所グループ、札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所の公開情報及び、IPOを行った各社のIR資料より引用、集計しております。
※TOKYO PRO Marketは今回調査の対象から除外しています。
※2023年12月1日付でPwCあらた(存続監査法人)とPwC京都は合併し、同日付でPwC Japan有限責任監査法人となっているため、本記事では2023年のデータにおいてはPwCあらたとPwC京都の各種数値を合算し、PwC Japan有限責任監査法人として取り扱っています。
※本記事は公開情報や各種データに基づき、できる限り正確性を保つよう合理的な努力を行って作成しております。しかしながら、企業活動や市場動向、情報源の更新状況は日々変化するため、MS-Japanとして本記事に掲載された情報が常に最新かつ正確であることを保証するものではありません。
※本記事のデータを一部または全て引用する場合は、引用元として当社名と当ページを明記の上、リンクをお願いします。


参考URL
この記事を監修したキャリアアドバイザー
を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
あなたへのおすすめ求人
同じカテゴリの最新記事

公認会計士の独立|注意点やメリット・デメリット、必要な準備など

なぜ「公認会計士はやめとけ」と言われるのか?5つの理由と実態を解説

【令和7年公認会計士試験|論文式試験】直近合格率や結果発表後の流れなど

令和7年(2025年)公認会計士試験の日程|試験から合格後の流れ

【公認会計士の転職】完全ガイド|おすすめの転職先17選や年代別転職のポイントなど

公認会計士が独立した際によくある失敗は?後悔しないための準備とは

【令和7年公認会計士試験|第Ⅱ回短答式試験】最新合格率や過去7年間の推移など

企業内会計士とは?転職のメリット・デメリットや年収、キャリアについて解説

2025年版【愛知県】監査法人一覧・求人情報
求人を地域から探す
セミナー・個別相談会
-
はじめてのキャリアカウンセリング
常時開催 ※日曜・祝日を除く -
公認会計士の転職に強いキャリアアドバイザーとの個別相談会
常時開催 ※日曜・祝日を除く -
USCPA(科目合格者)のための個別相談会
常時開催 ※日曜・祝日を除く 【平日】10:00スタート~最終受付19:30スタート【土曜】9:00スタート~最終受付18:00スタート -
公認会計士短答式試験合格者のための個別相談会
常時開催 ※日曜・祝日を除く 【平日】10:00スタート~最終受付19:30スタート【土曜】9:00スタート~最終受付18:00スタート -
初めての転職を成功に導く!転職活動のポイントがわかる個別相談会
常時開催 ※日曜・祝日を除く
MS Agentの転職サービスとは
大手上場企業や監査法人、会計事務所(税理士法人)など、公認会計士の幅広いキャリアフィールドをカバーする求人をもとに、公認会計士専門のキャリアアドバイザーがあなたの転職をサポートします。
キャリアカウンセリングや応募書類の添削・作成サポート、面接対策など各種サービスを無料で受けることができるため、転職に不安がある公認会計士の方でも、スムーズに転職活動を進めることができます。

MS-Japanを利用した会計士の
転職成功事例
転職成功事例一覧を見る 会計士の転職・キャリアに関するFAQ
監査法人から事業会社への転職を考えています。MS-Japanには、自分のような転職者はどのくらい登録されていますか。
具体的な人数をお知らせする事は出来ませんが、より直接的に企業に関わりたい、会計の実務経験を積みたいと考えて転職を考える公認会計士の方が大多数です。 その過程で、より多くの企業に関わりたいという方は、アドバイザリーや会計事務所への転職を希望されます。当事者として企業に関わりたい方は事業会社を選択されます。 その意味では、転職を希望する公認会計士の方にとって、監査法人から事業会社への転職というのは、一度は検討する選択肢になるのではないでしょうか。
転職活動の軸が定まらない上、求人数が多く、幅が広いため、絞りきれません。どのような考えを持って転職活動をするべきでしょうか。
キャリアを考えるときには、経験だけではなく、中長期的にどのような人生を歩みたいかを想定する必要があります。 仕事で自己実現を図る方もいれば、仕事以外にも家族やコミュニティへの貢献、パラレルキャリアで自己実現を図る方もいます。ですので、ご自身にとって、何のために仕事をするのかを一度考えてみることをお勧めします。 もし、それが分からないようであれば、転職エージェントのキャリアアドバイザーに貴方の過去・現在・未来の話をじっくり聞いてもらい、頭の中を整理されることをお勧めします。くれぐれも、転職する事だけが目的にならないように気を付けてください。 今後の方針に悩まれた際は、転職エージェントに相談してみることも一つの手かと思います。
ワークライフバランスが取れる転職先は、どのようなものがありますか?
一般事業会社の経理職は、比較的ワークライフバランスを取りやすい為、転職する方が多いです。ただ、昨今では会計事務所、税理士法人、中小監査法人なども働きやすい環境を整備している法人が出てきていますので、選択肢は多様化しています。 また、一般事業会社の経理でも、経理部の人員が足りていなければ恒常的に残業が発生する可能性もございます。一方で、会計事務所、税理士法人、中小監査法人の中には、時短勤務など柔軟に対応している法人も出てきています。ご自身が目指したいキャリアプランに合わせて選択が可能かと思います。
監査法人に勤務している公認会計士です。これまで事業会社の経験は無いのですが、事業会社のCFOや管理部長といった経営管理の責任者にキャリアチェンジして、早く市場価値を高めたいと考えています。 具体的なキャリアパスと、転職した場合の年収水準を教えてください。
事業会社未経験の公認会計士の方が、CFOや管理部長のポジションに早く着くキャリアパスの王道は主に2つです。 一つは、IPO準備のプロジェクトリーダーとして入社し、IPO準備を通じて経営層の信頼を勝ち取り、経理部長、管理部長、CFOと短期間でステップアップする。 もう一つは、投資銀行などでファイナンスのスキルを身に着けて、その後、スタートアップ、IPO準備企業、上場後数年程度のベンチャーにファイナンススキルを活かしてキャリアチェンジすることをお勧めします。近年はCFOに対する期待が、IPO達成ではなく、上場後を見据えた財務戦略・事業戦略となってきているため、後者のパターンでCFOになっていく方が増えています。 年収レンジとしてはざっくりですが800~1500万円くらいでオファーが出るケースが一般的で、フェーズに応じてストックオプション付与もあります。
40歳の会計士です。監査法人以外のキャリアを積みたいのですが、企業や会計事務所でどれくらいのニーズがあるでしょうか。
企業であれば、会計監査のご経験をダイレクトに活かしやすい内部監査の求人でニーズが高いです。経理の募集もございますが、経理実務の経験が無いことがネックになるケースがあります。 会計事務所ですと、アドバイザリー経験の有無によって、ニーズが大きく異なります。また、現職で何らかの責任ある立場についており、転職後の顧客開拓に具体的に活かせるネットワークがある場合は、ニーズがあります。

転職やキャリアの悩みを相談できる!
簡単まずは会員登録