2024年04月19日

公認会計士は人手不足?なぜ監査法人離れがおきているのか

昨今、企業の人手不足が深刻化しています。「帝国データバンク」によれば、正社員の人手不足企業の割合は52.1%*です。
さまざまな意見が飛び交う中、「公認会計士が人手不足になっている」といううわさを聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、転職を考えている公認会計士公認会計士を目指している人に向けて、登録者数の推移や監査法人所属者数の推移などのデータを紹介します。
「監査法人の売り手市場はいつまで続くのか」など、業界ならではの事情にも触れますので、ぜひ参考にしてください。

公認会計士登録者数の推移

公認会計士が人手不足なのかどうかを確認するために、まずは公認会計士登録者数の推移を確認しましょう。
令和元年から令和5年にかけての推移は、以下の表の通りです。

年度 公認会計士登録者数
令和元年 31,189人
令和2年 31,793人
令和3年 32,478人
令和4年 33,215人
令和5年 34,436人

参考:金融庁「監査業界の概観」

公認会計士登録者数とは、文字通り、試験に合格して公認会計士として正式に登録されている人数です。つまり、登録者数が多ければ多いほど、市場に多くの公認会計士が供給されていることになります。

令和元年から令和5年にかけて、公認会計士登録者数は増加傾向にあり、5年で3,247人増えている計算です。つまり、登録者数は伸びており、公認会計士の人数が減少しているわけではありません。

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監査法人所属者数の推移

監査法人所属者数の推移は、以下の通りです。

年度 監査法人所属者数
令和元年 13,962人
令和2年 13,851人
令和3年 13,834人
令和4年 13,685人
令和5年 13,980人

令和元年から令和5年にかけて、監査法人所属者数は横ばい状態にあり、5年で18人増えている計算です。

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監査法人は公認会計士の人手不足が深刻化

監査法人は公認会計士の人手不足が深刻化前述の通り、公認会計士登録者数自体は増えていますが、監査法人では人手不足が問題となっています。具体的な理由として挙げられるのは、「公認会計士の働き方の多様化」「監査法人業務の増加」の2点です。

以下、それぞれのポイントを詳しく解説します。

公認会計士の働き方の多様化

公認会計士の働き方は多様化しており、経理・財務や会計事務所、監査法人、経営企画、内部監査、コンサルティングファームなどさまざまです。

弊社MS-Japanが提供している転職エージェント「MS Agent」のデータをまとめると、公認会計士が希望した転職先(職種)は以下のようになっています。
なお、2022年の公認会計士の転職希望者のデータをもとに算出しています。

公認会計士が希望した職種 割合
経理・財務 27.42%
会計事務所 10.75%
監査法人 9.95%
経営企画 7.08%
コンサルティングファーム 6.54%
内部監査 5.47%
その他 32.80%

上記の表を見てもわかるように、公認会計士が監査法人への転職を希望している割合は、わずか9.95%です。一方、最も多い割合になったのが、企業の経理・財務でした。

一昔前の公認会計士といえば独立をして事務所を構えるのが主流でしたが、最近ではインハウス志向、つまり企業内部での勤務を望む傾向が強まっています。
公認会計士の需要の高まりや、ワークライフバランスを重視する風潮が、インハウス志向を後押ししているようです。

公認会計士の働き方の多様化を裏付けるデータは他にもあります。「MS Agent」に登録している公認会計士の所属業種は、以下の通りです。
2023年上半期における公認会計士の登録データをもとに、算出しています(前述の「公認会計士が希望した職種」とは、調査期間が異なります)。

公認会計士の所属業種 割合
監査法人 40%
会計事務所 7%
その他士業事務所 2%
コンサルティングファーム 7%
インハウス 45%

いずれにせよ、公認会計士のキャリアはこれまでになく幅広いものになっています。公認会計士登録者数が増えているとはいえ、これだけ多様な選択肢があれば、監査法人に流れる人材も少なくなってしまうでしょう。

監査法人業務の増加

公認会計士が人材不足に直面している理由の1つとして、国際財務報告基準(IFRS)の導入や、社会的な要請による業務量の増加が挙げられます。
IFRSは、国際的に統一された会計基準であり、従来の国内基準と比較して複雑です。当然、企業にとって工数が増えるため、より多くの会計の専門家を雇わなくてはならなくなります。

とくに昨今では、グローバル市場での事業展開が増えているため、IFRSに準拠した財務報告の重要性が高まっています。
国際会計基準に精通した公認会計士の需要が増加しており、結果として人手不足になっている可能性が考えられるでしょう。

社会的要請も重要なポイントです。たとえば大企業における不正や粉飾決算の問題が明るみに出ると、企業の財務報告に対する信頼性を確保するため、厳格な監査が求められます。
監査品質を高めるために導入される厳格な品質管理基準は、公認会計士にも大きな負担がかかります。これによって業務量が増え、人手不足になっている状態です。

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監査法人の売り手市場はいつまで続く?

結論として、公認会計士の転職市場は現在も売り手市場となっているといえます。しかしこの状況は、いつまで続くのでしょうか。これまでの動きと今後の見通しを解説します。

監査法人は売り手市場

売り手市場が続いているとはいえ、市場の変動によりいつまでもこの状況が続くとは限りません。転職を考えている公認会計士は、現在の市場状況を踏まえ、適切なタイミングで行動することが求められます。

2023年の転職市場において、公認会計士を含む多くの業界や職種では売り手市場の状況が見られます。
とくに、2014年から2018年にかけての監査法人の採用強化の背景もあり、公認会計士であれば年齢や能力に関わらず比較的容易に就職・転職が可能な状況が続いていました。しかし、2018年の後半からは採用の難易度が若干上昇していると見られています。

2020年に入ると、新型コロナウイルスの影響により社会状況や経済状況が一変し、採用状況は不安定になりました。しかし、2021年以降は公認会計士の転職市場は大きく回復し、とくに監査法人への就職・転職は比較的容易な状況が続いています。
ただし、状況は目まぐるしく変化しているため、転職を考えている方は情報収集を怠らないことが重要です。

現在も売り手市場は続いていますが、2018年までの超売り手市場と比較すると、全体的に採用要件は上がっています。また、AIやITの発達により、単純作業の求人は減少する可能性があり、今後も市場は継続的に変化することが予想されます。そのため、公認会計士としての勤務経験を活かし、時代の変化に合わせた動きをすることが重要です。

アドバイザリー部門の重要性

監査法人への転職で押さえておきたいのは、「アドバイザリー部門」が拡大されていることです。近年、多くの監査法人では、従来の監査業務に加えてアドバイザリーサービスの提供を強化しています。

アドバイザリー部門では、特定の業界や分野に関する深い専門知識が求められます。財務、税務、リスク管理、M&Aなど、特定の領域における専門性が転職の成功につながります。
異なる業界やビジネスモデルに触れる機会が多く、幅広い経験を積めるため、多様なキャリアパスを期待できるでしょう。

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まとめ

公認会計士の登録者数は増加傾向にあり、令和元年から令和5年にかけて約3,000人も増えています。しかしながらワークライフバランスを重視する風潮やキャリアパスの多様化など、さまざまな要素が影響して、監査法人では人手不足が深刻化しています。

企業が直面する問題は多種多様ですが、公認会計士の視点で考えてみれば、さまざまなキャリアパスが考えられる好ましい状態です。転職活動を開始する際は、事前の情報収集を徹底しましょう。

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公認会計士が外資系企業に転職するメリットは何ですか?

公認会計士が外資系企業に転職するメリットは、「自分のペースで仕事ができる」「日系企業に比べて年収が高い」の2つです。 外資系企業は良くも悪くも実力主義のため、成果を出すことができていればプライベートの時間も確保しながら仕事をすることができます。 また、日系企業に比べて年収が高い傾向がありますが、福利厚生は日系企業の方が充実しているため、年収と福利厚生のどちらを重視するかを検討する必要があります。

公認会計士は外資系企業でワークライフバランスを重視した働き方が出来ますか?

外資系企業は日系企業に比べて実力主義な傾向が強いため、自分で労働時間を管理することができます。 また、今では日系企業でもリモートワークを採用している企業が多いですが、外資系企業は日系企業よりもリモートワークが普及しているため、働き方という意味でも外資系企業ではワークライフバランスよく働くことが可能です。

公認会計士は外資系企業でどのような部門に配属されることが多いですか?

公認会計士が外資系企業に転職する場合、「アカウンティング部門」もしくは「ファイナンス部門」のいずれかが有力な選択肢となります。 アカウンティング部門は、日系企業でいう経理部に当たり、ファイナンス部門は日系企業でいうと予算管理部門と経営企画部門のちょうど間ぐらいの立ち位置になります。

公認会計士が外資系企業で働くにはどのようなスキルが求められますか?

公認会計士が外資系企業で働くには、本国の経営陣や従業員とビジネス的な会話ができるレベルの語学力が必要です。 また、本国の所在地にもよりますが、US-GAAP、IFRS/IASといった海外の会計基準と日本の会計基準の違いをしっかりと理解しておく必要があります。 日本の公認会計士だけでなく、USCPAなどを取得しておくと外資系企業への転職には有利になります。

公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは高いですか?

公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは決して低くはありませんが、IFRS(国際財務報告基準)に関する知識と経験がある方には転職のチャンスがあります。 また、一定の英語スキルも必要にはなりますが、入社時に極端に高い語学力が求められるわけではありません。 尚、管理職を目指す場合は本国や他国の拠点とやり取りをするためにも、英語力は必須となります。

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