2024年01月12日

監査法人におけるIPO支援業務(アドバイザリー)とは?~IPO企業のCFOのキャリアも狙える重要な業務~

監査法人で3~6年のキャリアを積んだ公認会計士は、その後、様々なキャリアアップに向けたチャレンジが可能になります。
転職を検討する公認会計士の中には、会計コンサルティングファームや一般企業への転職を目指す人も少なくありませんが、監査法人におけるIPO支援業務(アドバイザリー業務)も、キャリアアップという観点からは魅力的な仕事です。

IPO支援業務は、公認会計士として培ってきた知識・経験をそのまま活かせるのが特徴で、監査業務の枠にとらわれないアドバイスができる仕事でもあります。
この記事では、監査法人におけるIPO支援業務について、その必要性や魅力に触れつつ解説します。

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IPOに監査法人はなぜ必要?

IPOを目指す株式会社にとって、監査法人の存在は重要です。
財務的な状況が上場の審査基準を満たしているかどうか「会計監査」を行うだけでなく、内部統制・IPO準備に関するアドバイス・指導を担当することもあるからです。
以下、IPO企業が監査法人を必要とする背景について、詳細を解説します。

IPO達成に向けた道のりは平坦ではない

株式会社を経営する経営者にとって、資金調達は大きな問題ですが、証券取引所への上場ができると、株主から資金を調達できるようになり、知名度も上昇します。すると、取引先・顧客からの信頼度も高まることが予想され、良い循環ができれば資金調達で苦労することは少なくなるでしょう。

しかし、実際にIPOを達成するためには、毎年増収増益を実現している必要があり、ベンチャー企業が市場で信頼される商品・サービスを提供し続けるのは非常に難易度が高いです。また、無事IPOを達成できたとしても、上場後は株主とのシビアなやり取りが待っています。
例えば敵対的買収など、株式をライバル社等が大量に取得するようなことがあれば、社内体制も不安定になるおそれがあります。その為、上場を目指す株式会社は、IPO達成だけでなく、達成後の様々なリスクを考慮しながら手を打たなければなりません。

上場時に財務諸表の監査が必要

財務面における条件が上場の審査基準を満たしていなければ、IPOの達成は叶わないため、企業は監査法人に会計監査を依頼する必要があります。従って、上場時に必要となる財務諸表の監査は、IPOを目指す企業にとって大きな意味合いを持ちます。

財務諸表の監査は、申請前々期・前期・申請期の3期にわたって行われます。
その為、申請前々期の期首までには、依頼する監査法人を決めなければなりません。

また、上場後は四半期レビュー・期末審査も受ける必要があるため、長期にわたり自社を親身になってサポートしてくれる監査法人を選ぶことが、企業の将来を安定させる上で非常に重要になってきます。
IPO準備をサポートできる経験豊富な公認会計士が、自社のサポートに回ってくれたら、企業としてこれほど心強いことはないでしょう。


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監査法人でのIPO支援(アドバイザリー)業務の内容とは?

監査法人におけるIPO支援(アドバイザリー)業務の流れは、大きく4つに分かれており、企業はその後も監査法人と関係を維持するのが一般的です。
以下、IPO支援業務につき、具体的な業務の流れについてご紹介します。

株式上場準備のショートレビュー(短期調査)

スピーディーに株式上場準備を進めるため、監査法人側では、最初に企業の課題を抽出するためのショートレビューを実施します。
具体的には数日間にわたって、ヒアリング・資料レビューといった形で調査を行い、報告書を作成します。

その後、報告書の結果を踏まえて、会計計画を中心とした体制整備に関するアドバイスを実施します。
調査する具体的な内容は、以下の通りとなっています。

経営管理体制の整備状況 ・コーポレートガバナンスの状況評価、対応方針に関することなど
・社内規定の整備、運用状況に関することなど
・経営者による内部統制の有効性評価スケジュール、方針作成等について
予算管理体制統制・事業計画 ・予算選定方針、組織体制に関することなど
・予算実績再分析の体制に関する状況評価、対応方針に関することなど
内部管理状況 ・重要な業務プロセス(販売・購買・在庫管理等)の基幹業務の流れ・管理状況の評価、対応方針に関すること
・会社固有の審査上の課題事項を洗い出した上での、財務・労務・法務等の管理状況における対応方針に関すること
会計制度の整備状況 ・期首残高の調査
・一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠した、財務諸表作成のための会計方針策定に関すること
資本政策 ・資本政策の立案に関すること
・資本政策上の規制に関すること
(第三者割当増資、新株予約権・新株予約権付社債の発行の規制など)
関係会社・特別利害関係人の状況 ・関係会社等の状況に関すること
・役員等との取引等に関すること
(取引の解消等、必要な整理も検討)

改善事項に対する取り組みは、基本的に監査法人側がクライアント企業へアドバイスしてからスタートします。
その為、取り組み方が非効率だと、その分だけ上場準備期間も長くなってしまい、上場スケジュール延期やコスト増につながります。そのような事情から、ショートレビューはIPO準備の初期段階で実施することになります。

内部統制の構築に関する指導

金融商品取引所に登録している企業は、金融商品取引法に基づいて、以下の書類を事業年度ごとに内閣総理大臣に提出する必要があります。

  • ・内部統制報告書
  • ・有価証券報告書

そして、上場審査の中では、申請企業の「内部統制報告制度」への対応準備状況が確認されます。
このような理由から、監査法人はクライアント企業に対して、内部統制報告制度も含む内部管理体制の整備につき、助言・指導を行います。

財務諸表等が対象の金融商品取引法監査に準ずる監査

IPOを達成するにあたっては、金融商品取引法監査に準ずる監査として、上場申請直前々期(N-2)・直前期(N-1)の2期にわたり、監査法人による監査証明が必要です。
上記2期間の財務諸表監査は、監査報告書という形で、申請時に一括して提出する形になります。

上場企業の財務諸表は、未上場の企業が税法ベースの税務会計になるのとは異なり、企業会計の基準で作成しなければなりません。
税務会計の主な目的は、課税所得の計算と報告にありますが、企業会計は企業・株主への財務状況の報告が目的となるため、目的・計上項目ともに違いがあります。

そのため、監査法人は、諸々の会計処理を修正するためのアドバイスを行います。
具体的には、売上・仕入・費用に関する計上基準や、棚卸資産の評価方法等の会計処理などが、アドバイスの対象となります。

その他の業務

その他、監査法人が担当するIPO支援業務としては、引受事務管理会社に提出するコンフォートレターの作成や、上場後のサポートなどがあります。
引受事務管理会社について簡単に説明すると、株券や社債券など新規証券を発行する「会社の財務情報を調査する金融商品取引業者」のことで、コンフォートレターの中身は「株券・社債券等に関する調査報告書」となっています。

株式上場後は、有価証券報告書・四半期報告等の開示書類につき、監査証明・レビューを引き続き行います。
企業の決算情報に重大な誤り・虚偽がないかどうかチェックするのが監査で、問題がなければ「無限定適正意見」を表明し、その企業の決算情報が信頼できるものと示します。


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IPO支援業務は魅力満載!

監査法人における数ある業務の中でも、IPO支援業務は非常にやりがいのある業務として知られており、やり遂げれば公認会計士として大きく成長することが期待できます。
以下、IPO支援業務のやりがいについてご紹介します。

IPO準備企業とともに会計士として成長し、上場した際の喜びを実感できる

監査法人における監査業務は、基本的には数字と格闘する仕事であり、間違いのないよう数字をチェックすることが主になります。
しかし、IPO準備企業の支援は、単純に数字をチェックするだけにとどまらず、時には経営者とも忌憚のない意見交換が必要になる場面も生じてきます。

経営者の発想は、監査法人にいてもなかなか触れられない部分の一つですから、公認会計士にとって良い刺激となるでしょう。
結果、長期にわたってやり取りを続け、無事上場できた暁には、この上ない充実感が得られるはずです。

IPO企業においてCFO等の役員になるための経験を積むことができる

IPO支援業務を経験した公認会計士は、CFOの重要性を理解している企業から招聘されるケースが多く見られます。
特に、最近のトレンドを把握している(最近IPO支援業務を経験した)人材は、CFO等の役員として登用されやすくなるでしょう。

IPOを目指す企業は、IPO前とIPO後で、経営環境が大きく変わります。
企業はより多くの人の目に触れることとなり、より多くの声に耳を傾ける必要が生じてきます。

CFOについて「経理部長や財務部長の類似ポスト」と理解している経営者も少なくありませんが、CFOは企業における財務戦略の立案・執行に携わる責任者であり、経営陣の一翼を担う重要な存在です。
そのため、CFOの重要性に気付いている経営者は、監査経験が豊富な公認会計士を自社に招き入れようとするのです。

このことから、将来的に企業でCFOとして経営に携わりたいと考えている公認会計士にとって、IPO支援業務を経験するメリットは大きいといえるでしょう。


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IPO支援を行う監査法人への転職方法

IPO支援を行う監査法人への転職方法

これからIPO支援を行っている監査法人に転職する場合、公認会計士はどのような点に注意すべきなのでしょうか。
以下、IPO支援を行う監査法人への転職方法について、監査法人側が採用時に見るポイントに触れつつ解説します。

IPO支援の各業務につながる監査の経験

IPO支援に携わるためには、上場企業の監査知識・経験がベースになるため、数年以上の実務(監査)経験は必要と考えられます。
具体的には、上場企業の監査は一通りすべて経験した段階・主査クラスが中途採用の対象となるでしょう。

監査業務だけでなくコンサル的な立場になることもあるため、能動的な業務姿勢

一般的な監査業務とは違い、IPO支援の中では指導・助言も業務の中に含まれています。
コンサルタント的な要素も求められる業務であることから、積極的に経営者・企業担当者とコミュニケーションをとる能動的な業務姿勢があるかどうかは、選考段階でシビアにチェックされるでしょう。

IPO支援業務を行いたい理由(ここが重要!)

IPO支援業務を担当するには、ありきたりな転職理由ではなく、なぜIPO支援業務でなければならないのかを具体的に説明できなければなりません。
事業会社へCFOとしてのキャリアアップを目指しているのか、専門分野として究めたいのか、理由はしっかり考えておきましょう。


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支援を行う監査法人の求人事例

IPO支援担当の公認会計士のニーズは高まっており、多くの監査法人が募集をかけている状況です。
以下、MS-Japanでご案内している、監査法人の求人事例についてご紹介します。

【IPO支援】スペシャリストの揃う少数精鋭の次世代監査法人

ポジション
IPO監査担当※業界知名度の高い急成長ファーム/将来的に独立やCFOを目指す方も歓迎
仕事内容
IPO監査のインチャージ業務など。
ご入社いただく方には、複数社のインチャージを担当していただくとともに、所属パートナーと連携して案件コントロールをお願いします。
想定年収
640万円 ~ 1000万円

大手監査法人のIPO監査職(スタッフ/シニア)募集求人のご紹介

ポジション
IPO監査及び支援業務(スタッフ/シニア)
仕事内容
・IPO監査業務 準金融商品取引法監査
・IPO支援業務全般

クライアントが株式上場するまでのサポートをし、上場会社に求められる内部統制の構築・運用や会計処理等についてのアバイスを提供しています。

(IPO支援業務の例)
・短期調査
・経営管理体制や業務プロセスの整備支援
・株式上場のための会計制度の構築、導入支援
・株式公開に係る会計、税制、関係法令及び諸規則に係るコンサルティング業務 など
想定年収
450万円 ~ 700万円

大手四大監査法人によるキャリア採用!アドバイザリーポジションの募集

ポジション
財務報告アドバイザリー【経験・資格の有無含め幅広く募集中】※短日、時短勤務もご相談ください
仕事内容
国内・海外市場における株式上場(IPO)に関する包括的なアドバイス・支援
想定年収
400万円 ~ 1200万円

まとめ

監査法人におけるIPO支援業務は、多くのIPOを目指す企業にとって重要な役割であり、公認会計士がキャリアアップを検討する上でも魅力があります。長い時間をかけて取り組み、無事上場を実現した際の喜びは他の業務ではなかなか得られないでしょう。

監査法人でIPO支援業務にチャレンジしたいと考えている場合、転職エージェントを活用して、自分がやりたいと考えている業務に携われる求人を探すのが近道です。
転職エージェントを活用すれば、自分の貴重な時間を有効に使うことができますし、書類選考・面接に関するサポートも受けられますから、まずは会員登録を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を監修したキャリアアドバイザー

窪塚 勝則

大学卒業後、大手出版系企業を経て現職へ入社。
主に大手・新興上場企業を対象とする法人営業職を4年、キャリアアドバイザーとして10年以上に及ぶ。

経理・財務 ・ 人事・総務 ・ 法務 ・ 経営企画・内部監査 ・ 会計事務所・監査法人 ・ コンサルティング ・ 役員・その他 ・ IPO ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 弁護士 を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!

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公認会計士が外資系企業に転職するメリットは何ですか?

公認会計士が外資系企業に転職するメリットは、「自分のペースで仕事ができる」「日系企業に比べて年収が高い」の2つです。 外資系企業は良くも悪くも実力主義のため、成果を出すことができていればプライベートの時間も確保しながら仕事をすることができます。 また、日系企業に比べて年収が高い傾向がありますが、福利厚生は日系企業の方が充実しているため、年収と福利厚生のどちらを重視するかを検討する必要があります。

公認会計士は外資系企業でワークライフバランスを重視した働き方が出来ますか?

外資系企業は日系企業に比べて実力主義な傾向が強いため、自分で労働時間を管理することができます。 また、今では日系企業でもリモートワークを採用している企業が多いですが、外資系企業は日系企業よりもリモートワークが普及しているため、働き方という意味でも外資系企業ではワークライフバランスよく働くことが可能です。

公認会計士は外資系企業でどのような部門に配属されることが多いですか?

公認会計士が外資系企業に転職する場合、「アカウンティング部門」もしくは「ファイナンス部門」のいずれかが有力な選択肢となります。 アカウンティング部門は、日系企業でいう経理部に当たり、ファイナンス部門は日系企業でいうと予算管理部門と経営企画部門のちょうど間ぐらいの立ち位置になります。

公認会計士が外資系企業で働くにはどのようなスキルが求められますか?

公認会計士が外資系企業で働くには、本国の経営陣や従業員とビジネス的な会話ができるレベルの語学力が必要です。 また、本国の所在地にもよりますが、US-GAAP、IFRS/IASといった海外の会計基準と日本の会計基準の違いをしっかりと理解しておく必要があります。 日本の公認会計士だけでなく、USCPAなどを取得しておくと外資系企業への転職には有利になります。

公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは高いですか?

公認会計士が外資系企業に就職・転職するハードルは決して低くはありませんが、IFRS(国際財務報告基準)に関する知識と経験がある方には転職のチャンスがあります。 また、一定の英語スキルも必要にはなりますが、入社時に極端に高い語学力が求められるわけではありません。 尚、管理職を目指す場合は本国や他国の拠点とやり取りをするためにも、英語力は必須となります。

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