採用成功ガイドRECRUIT GUIDE


目次


    転職市場の活発化は、それだけ魅力的な会社が少なくなっていることの現れです。人材が充実している会社はそもそも求人を出すこと自体が少ないものですが、転職サイトを見ていると、同じ求人情報を長期的に掲載している会社もよく見かけます。実際に働いてみなければ、なぜそのような状況が生じているのかは分かりませんが、人材流出が進む理由にはいくつかの共通点があります。この記事では、会社からの人材の流出を防ぎ、社員の定着率を高めるための情報をご紹介します。

    1.人材の流出とは


    人材が流出する場面は、主に2つのパターンに分けられます。以下に、それぞれのパターンの詳細について解説します。

    1-1.企業から人材が流出(離職)しているパターン

    日本国内の目線で考えると、こちらの方が身近に感じられるパターンです。理由はどうあれ、今いる会社に対して少なからず不満を抱き、その結果退職を検討・実行するという流れです。会社にとって「流出」の対象となるのは、単純な「社員一人の流出」という人的資源のみならず、その社員が培った社内情報・ノウハウなども含まれます。もちろん、会社の側もそれを見越しており、秘密保持義務は各社員と会社との間で結ばれるのが一般的です。一例として、退職時に顧客リスト・仕入れリストなどをそのまま持ち出して転職する・会社の製品企画書や製造作業工程表などを競合他社に提供するなど、明らかに形跡が分かるものは処罰の対象になります。

    1-2.日本から人材が流出しているパターン

    次に、日本から海外へ人材が流出しているパターンについて触れてみましょう。国境を越えて、優秀な日本人が海外の良質な会社に転職するケースは、次第にごく一部の日本人の話ではなくなりつつあります。この場合の流出は、一企業の損失にとどまらず、日本の国際競争力を低下させる一因になります。また、日本という国そのものに魅力を感じなくなった国民が、新天地を求めて海外移住を行うケースも増えてきています。原因は一つに絞れるほど単純なものではありませんが、日本が置かれている状況は、決して看過できるものでないことは確かです。

    2.人材流出が止まらない原因


    続いて、人材流出につながる個々のケースについて、いくつかご紹介していきます。日本から人材が離れていく理由として、具体的にどのようなものがあるのか、複数の視点から確認してみましょう。

    2-1.給与面(給料が低い、伸びない)

    海外には、日本だけにとどまるよりも数多くのビジネスチャンスがあり、IT系では年収1,000万円を超える会社は珍しくありません。これに対して日本では、相対的に給料が低く、その上仕事は高いクオリティを求められるとあって、技術者がどんどん海外へ飛び立っています。

    2-2.時間面(業務過多)

    残業ばかりで仕事が終わらない・拘束時間が長いなど、仕事の割には時間だけが無駄に過ぎていくことも、社員が転職を考える理由になります。会議に1時間以上かけるというのも会社によっては珍しくなく、しかも実のあるものにならないケースは珍しくありません。

    2-3.やりがい(キャリアアップ、スキルアップの機会)がない

    会社としては、自社にとって有益な社員を育てたいという思惑があるため、できるだけ自社に関する仕事を覚えて欲しいと考えます。しかし、職務内容を考えた場合、与えられている仕事は主にパーツとしての作業であり、社外で通用しないこともしばしばです。そのような状況から、結果的に自らのキャリアアップにつながっていないと考え、社員が転職を検討することにつながります。

    2-4.環境面

    現代で社会問題となっている各種ハラスメントや、人間関係の複雑さなど、人との関係が大きなストレスになって退職・転職を検討する社員の数は、日本ではかなりの数になるのではないかと推察されます。表向きは前向きな理由を連ねていても、実際には「人間関係に疲れた」というケースは珍しくありません。

    3.人材が大量に流出する企業にありがちなこと


    会社から人材が大量に流出する場合、会社自体に何らかの問題があるケースは多いものです。中小企業の経営者は特に、以下に挙げる条件に該当していないかどうかを確認しておきましょう。

    3-1.経営者がワンマン

    会社を一代で成した経営者は、よくも悪くも自分の意思が強い傾向にあります。そのため、時に「ワンマン経営」と社員に揶揄されるような、強引な経営方針を打ち出すことがあるかもしれません。経営者側にとっては自然なことでも、社員には十分に意図が伝わっていないケースは珍しくありません。強引にならないよう、かといって優柔不断にもならないよう、自らを律することが経営者には求められます。

    3-2.社員教育をしない

    中途採用ばかりを行っている会社では、社員教育が名ばかりになっている例もよく見られます。入社した時点では、社員誰もが自社のことを詳しく知らないわけですから、成長の過程をある程度サポートしてあげることで、定着率を高めることにつながります。

    3-3.不祥事を起こした

    言うまでもないことですが、信頼を失った会社に長く留まろうと考える社員は、よほどその会社に心酔していない限り少数派です。一度不祥事が起きてしまったら、世間にはうまく隠し通せても、経営者が不名誉を挽回しようと試みたとしても、ついてきてくれる社員はごくわずかだという覚悟が必要です。

    3-4.時代に合った制度、雇用条件になっていない

    会社は、自社の利益を最大化する形で社員と契約を結びます。しかし、あまりに社員に対して厳しい条件を課している会社は、人気が得られません。リモートワーク・裁量労働制などの新しい制度が認められている中、未だに旧態依然のタイムスケジュールを適用しているなら、社員の働き方を見直す時期にきているのかもしれません。

    4.優秀な人材の流出を防ぐための対策


    会社にとって優秀な人材を流出させないためには、自社が社員にとって魅力的であるだけでなく、働きやすい環境であることも求められます。また、せっかく採用した社員が120%力を発揮できるよう、自社の風土に合うかどうかも見極めなければなりません。以下に、経営者・人事責任者の立場でできる、3つの対策についてご紹介します。

    4-1.採用時のミスマッチを減らそう

    採用面接では、どの会社も「こういった人材に来て欲しい」という希望を明確にしています。にもかかわらずミスマッチが生まれるのは、募集する人材の要件に問題があったか、求職者が嘘をついていたか、いずれかの可能性が考えられます。もちろん、明らかな詐称であれば調べればすぐ分かることですから、求職者が嘘をつくケースは少数でしょう。よって、ミスマッチの原因としては、採用担当者・経営者が判断を誤った可能性が高いと言えそうです。なぜ判断を誤ってしまうのでしょうか。その理由は、多くの場合「欲しい人材について厳密に定めていない」からです。採用する部署の担当者・上司だけでなく、仕事の都合上関係してくる部署の意見も取り入れながら、こんな人に来て欲しいという「ペルソナ(理想の人物像)」を厳密に定めることで、ある程度ミスマッチを防ぐことができます。

    4-2.社員に成長の機会を与えよう

    ほぼペルソナ通りと認められた人材が、採用後に力を出し切れていないなら、配置換え・担当する仕事の変更などを考える必要があるかもしれません。しかし、新しい社員が仕事に慣れて一定の成果を出せるようになっていたとしても、心の中では「もっとこういう仕事に携わりたい」という希望を持っている可能性もあります。暇を持て余しているような社員がいれば、その社員に対してよりレベルの高い仕事を振ってあげた方が、巡り巡って会社のためにも社員のためにもなります。できるだけ多くのことを任せてみる・役職を与えてみるなど、今までとは違う形で責任感を持たせることが大切です。

    4-3.社員とのコミュニケーションを大切にしよう

    社員同士のコミュニケーションは大切ですが、経営者や人事からのフィードバックも、社員のモチベーションを高めるのに有効です。特に、普段あまり社員と話さない経営者が、ある社員の名前を憶えていたら、それだけで「自分は会社に必要とされている」とその社員に感じさせることができるはずです。普段手の届かないところにいる経営者よりも、社員と近い距離にいる経営者の方が、長い目で見て信頼を勝ち取れます。人事部にしても、あくまでも会社にとって必要な人材を集め、正当に評価する仕組みを運営することが仕事なのであって、決して自分たちが会社の中心にいるなどと考えないよう襟を正すことが大切です。

    5.まとめ


    人材が流出する理由をあえて一口にまとめると、「会社が社員にとって魅力的でない」というのが大きな理由です。これが国家の単位になると、日本の政策・法律・制度などが優秀な人材にとって魅力的でない、ということになります。人材の流出を防ぐための施策がうまくハマれば、社員の定着率を高め、離職率を減らすことにつながります。そのためには、できるだけ社員の利益になる制度を運用し、経営陣・人事の側で社員に寄り添うことが大切です。もちろん、固定化された人間関係など、ハラスメントの温床になるような状況はできるだけ取り除き、会社の風通しのよさ・流動性を保つ努力も必要です。 時には伝統にメスを入れ、時代背景に即した会社への構造改革を断行する勇気が、経営者・人事責任者には求められると言えるでしょう。

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