採用成功ガイドRECRUIT GUIDE


目次


    求人をかけて集まった応募者には所定の選考フローを受けてもらい、その通過者を採用します。通過する者とそうでない者を分けるのが採用基準です。採用基準とは自社にとって適切な人材であるかどうか、比較・検討するための要件であり、それを満たすかどうか観察することで応募者を公平に評価できるようになります。雇用のミスマッチの抑制にもつなげられるため、いかに精度の高い採用条件を設けられるかどうかが採用の成功を左右するといっても過言ではありません。そこで今回は、採用基準の設定について、設定する前と後に確認すべきことも含めて解説していきます。

    1.採用基準を設定する前に


    1-1.採用基準とは何か?

    採用基準とは、自社の求める人材像として適正な人物であるかどうかを測るための一定の要件のことであり、求人への応募者を公平かつ客観的に比較・検討するための判断材料となります。仕事である以上、公平に判断しなければならないと頭でわかっていても、気がつかないうちに評価が左右されてしまいます。 例えば、メラビアンの法則という心理学者の提唱によると、話の内容から7%、声のトーンで38%、見た目から55%の印象を人は抱くものであるとされています。つまり、スキルや経験を別にしても、面接官が目の前にする人物を評価するための主観は大きく揺さぶられるのです。人材を必要としている部署で会社のために活躍してくれる人材を選抜するためには、いかに主観を排除できるかが重要なポイントとなり、それを可能とするのが明確な採用基準です。採否の判断に基準があれば、人事としても自信を持って採用しやすくなります。

    1-2.採用基準を設定する理由

    採用基準は入社後のミスマッチを抑制してくれる役割も持っています。もしも、採用基準がなければ採用の精度が曖昧となり、雇い入れてから“こんなはずじゃなかった・・”とお互いが思うケースが多くなるでしょう。一度、雇い入れれば簡単に解雇できませんので、結果として自社の必要としていない人材に給与を支給し続けなければならない状況となりかねません。このため、採用基準とは求人者、求職者ともにメリットある関係を中長期的に築くためのものとも表現できます。

    2.採用基準を設定する


    2-1.採用基準の設定フロー

    採用基準を作成するには、まず採用市場がどのような状況にあるかを把握します。今日のように“売り手市場となっている”という潮流の全体像を掴むだけでなく、業界や競合他社がどのような採用活動を行っており、どれだけの条件を提示しているのかも調査します。ここで得られた結果を活用しながら、自社の採用条件とすり合わせ、適切な採用条件とするための材料としていきます。日頃から採用市場の動向に敏感になっておくと同時に、場合によっては人材紹介会社にヒアリングするなどして、人事として常に情報のアップデートを行うようにしましょう。

    社内で人材需要が生じた際には、その部署の責任者やスタッフに幅広くヒアリングしながら、求める人材像を明確にし、最終的にはペルソナの設定まで行います。年齢や性別、スキルや経験、性格や価値観などの項目を決めながら明確な人物像としていきます。このペルソナについて重視する項目を順に並べていくことで、それが採用基準のもととなっていきます。

    2-2.採用基準とする主な項目

    採用基準として重視する項目としては、
    ・経験
    ・スキル
    ・リーダーシップ
    ・人間性
    ・価値観
    といったものが挙げられます。

    経験やスキルは業務処理能力に直結するものであり、履歴書や職務経歴書からおおよそ読み取ることができます。それらの経験やスキルが本当に配属予定先で役立てられるかどうかがポイントとなってきますので、現場の担当者と情報を共有しながら、採用基準を満たしているかどうか判断するといいでしょう。 反面、リーダーシップ、人間性、価値観などの項目は応募書類からではほぼ読み取ることができませんので、面談時にそれらを測ります。いくら経験やスキルのある人物であっても、熱意が伴っていなかったり、社風にマッチしていなかったりすれば、それらはなかなか会社に活きてきませんし、内定を出しても辞退される可能性が高いため、全体的な採用計画に支障をきたすこともあるので見極めはとても大切です。

    2-3.採用基準に入れてはいけない項目

    応募者を選抜するために、ペルソナから基準とすべき項目を決めていく際、何でも採用基準として設定できるわけではありません。なぜなら、「採用選考時に配慮すべき事項」として厚生労働省が定めている14の事項については、就職差別につながる恐れがあるとして採用基準にできないと法律で定められているためです。

    具体的には
    ・「本籍・出生地」に関すること
    ・「宗教」に関すること
    ・「生活環境・家庭環境など」に関すること
    ・「身元調査など」の実施
    などが含まれています。

    採用する側として知っておきたい事項も含まれているかもしれませんが、コンプライアンスを重視する今日、ダイバーシティの受け入れ、ワークライフバランスなども企業側に要求されている世論を考慮しても、適切な対応は必須であることを忘れるべきではありません。

    2-4.採用基準の具体的な事例

    世界的企業であるグーグルでは、“エキスパートではなく聡明なジェネラリスト”であることを重視し、面接にじっくりと時間をかけた選考を行っており、そこでの応募者の受け答えについて明確な基準を設定しています。また、アマゾンでは“自分はこの応募者の事を尊敬できるのか”という視点で面接担当者が応募者の見極めを行っており、“チームの業務効率をアップさせる事ができるか”という点を重視しています。いずれも自社の社風に沿った人物であるかどうか、明確な基準を設けた上で慎重に面接を重ねながら選考を進めています。これらを参考に、自社の求める人物像を明確にして採用基準へと反映させてみてはいかがでしょうか。適性検査やSPIなどの筆記試験も行う場合には、それぞれ何を目的として、どのようなことを把握できるのか事前に入念な確認を行うようにしましょう。

    3.採用基準を設定した後は


    3-1.採用基準を社内共有する

    採用基準を設定した後は、その内容について社内で共有します。特に配属予定先の管理者とは設定事項について、設定した基準を満たしていれば、現場でスムーズに戦力として活躍できるのかどうかを含め、念入りな打ち合わせが必要となります。また、最終面接を行う経営者層とも採用基準について共有しておかなくてはなりません。経営者層は現場を離れて時間が経っている場合も多く、管理者として養ってきた価値観が現場のそれと乖離してしまっているケースも少なくありません。なぜ、その人物が最終面接へとコマを進めてきたのか理解してもらうとともに、面接時にどのような点を重視して欲しいのか擦り合わせておけば、それまでの選考とブレのない採用へとつながります。

    3-2.採用基準を定期的に見直す

    また、一度設定した採用基準は、定期的に見直していくといいでしょう。その採用基準で採用した人材がスムーズに配属先にフィットしたかどうかも考慮しつつ、より良い採用基準を追求することで、もっと理想の人材像に近い人物を採用できるようになります。業界や現場も時間に合わせて変化を重ねていくのを考えても、過去の採用基準を繰り返し引用するのは悪手といえます。自社で採用基準の見直しがうまくいかない場合には、人材紹介会社へと相談してみるのもおススメです。人材紹介会社は様々な企業の採用基準を観察しているため、機能している実例をもとにしたアドバイスを受けられるので、採用基準のバージョンアップが期待できます。

    4.まとめ


    なかなか思うような人材と出会えないとお悩みであれば、採用基準の見直しをしてみてはいかがでしょうか。採用した人材が思うように現場にフィットできないケースが何度も見られるようであれば、それはその人材を選抜した基準に問題があると考えられるためであり、社内で現状の採用基準について共有しながら、より現場に即した基準の設定を進めてみましょう。上でもご紹介しているように、自社での採用基準の見直しに不安があるのであれば、人材紹介会社へと相談してみてください。採用基準についての豊富な実例をもとに、客観的な視点からアドバイスしてくれるため、これまで社内の視点だけでは見えていなかった新たな気付きを得られることが期待できます。

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