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    人事(労務・制度)の採用戦略:スキルと年収の理解から成功事例まで

    はじめに:労務・制度人材採用の必要性

    人事の中でも、労務や人事制度経験のある人材の採用は、企業のコンプライアンス遵守と効率的な人事管理を実現する上で欠かせない要素です。給与計算、社会保険の手続き、労働法の適用など、専門的な知識とスキルを必要とするこれらの業務は、企業の運営や組織ガバナンスを安定させ、従業員の満足度を高めるためにも非常に重要です。適切な労務・制度人材を採用することで、企業は法的リスクを抑制し、労働環境の最適化を図ることができます。
    本記事では、労務・制度人材を見極め、採用するためのアプローチをスキルや年収、採用成功事例を踏まえて詳しく解説していきます。

    労務・制度人材に求められるスキルとは

    労務・制度人材には、企業フェーズや市場、戦略に応じて異なるスキルセットが求められます。
    基本となる労務業務には勤怠管理、給与計算、社会保険の手続きなどが含まれ、企業によってはこれらを内製で行う一方で、アウトソーシングするケースもあります。求める人材像を明確にする上で、候補者の経験企業における具体的な体制や業務フローを理解し、整理することが重要となります。

    【労務スキルにおけるポイント】

    ・アウトソースの有無

    ・勤怠管理/給与計算は、従業員(雇用形態含め)何名分を何名体制でやっているのか

    ・どのような労務システムを使用しているのか

    また、制度関連の経験は通常、30代後半以上の役職者に見られることが多く、その業務内容は企業の成長段階によって大きく異なります。例えば、スタートアップやアーリーフェーズの企業では人事制度の「構築」経験を、既に確立された組織では制度の「改定」や「運用」経験を求めることが一般的です。選考時には、候補者が人事制度において具体的にどのような経験を持っているかを確認することが、適切な人材を見極める鍵となります。

    さらに、「賃金制度」「人事評価(考課)制度」「福利厚生制度」などの主要な人事制度については、会社ごとに基準が異なります。企業が役割主義、成果主義、年功序列など、どのような価値観を重視しているかによって、人事制度の設計と運用が変わってきます。そのため、候補者がどのような企業風土の中でどのような課題を持つ企業で人事制度に関わってきたのかを理解することが、適切な人材選択には非常に重要です。

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    労務・制度人材の年収とスキルの関係について

    人事(労務・制度)においても、経験者採用となると売り手市場となります。 特に制度経験者は採用や労務経験者に比べて母数が少なく、他社競合とバッティングしやすくなっています。
    採用成功にはスキルや経験に合わせた適正年収の設定が必要不可欠です。エリアごとに詳しくご紹介します。


    関東における人事(労務・制度担当)の適正年収

    経験年数~職位別でみた年収相場は下記となります。

    経験年数 未経験~ポテンシャル
    (3年未満経験者含む)
    経験3年~5年
    (スタッフ)
    経験5年以上~
    (リーダー~マネージャー/スペシャリスト)
    人事部長/人事責任者
    年収 300万円~500万円 450万円~650万円 500万円~800万円 800万円~1200万円
    ※上記年収は月額給与及び定期的に支給される賞与の合計額であり、別途支給される時間外手当や決算賞与等の変動要素がある金額に関しては含まない想定で算出しています。

    ・450万円~650万円は勤怠管理・給与計算・社会保険手続き等の労務オペレーションのみの経験者を採用するイメージとなります。
    労務のオペレーション業務以外にも+αで業務経験を求めるとなると、500万円~800万円程度の相場となります。+αのα部分は、人事制度や企画、労務トラブル、IPO、PMI等の特殊業務、マネジメント、総務業務など会社によって多種多様となります。
    ・アウトソーシングの有無や労務管理の対象者のサイズ感によって、年収が大きく変化する傾向はなく、どちらかというと親和性が重視される傾向となります。
    ・社労士資格については、資格があれば尚可となりますが、年収には比例しない傾向が強いです。社労士事務所経験者など、労務業務が内製の企業やシェアード・アウトソーシング企業からはスタッフ層でニーズが高い傾向となります。

    MS-Japan 東京本社
    リクルーティングアドバイザー 森田 結衣

    人事(労務・制度系)を採用したい企業へアドバイス(関東エリア)

    労務+人事制度業務の双方をお任せしたい求人依頼を多くいただきますが、業務内容が広いがゆえ、何の経験を重視しているのか分かりづらい求人が多い印象です。労務(給与社保)等の毎月のルーティン業務と、人事制度の業務比率がどれぐらいになるのか、求人票に具体的に書いた方がおすすめです。特に人事制度業務をできるだけ分解しましょう。人事制度といっても企業によって多種多様です。会社規模が大きくなればなるほど、制度改革・遂行の本気度が候補者からすると分かりづらくなります。制度改革の背景や現行制度がどのようなものなのか等、求人票に直接かけなくても、エージェントに共有をしていただくと、候補者に説明をしやすく、他社との差別化につながります。

    (求人票記載の例)
    ・ポジションの説明
    ・現行の人事制度の運用状況について
    ・人事部としてとりかかっている問題について
    ・入社後すぐに関わる制度はどのような制度なのか 等

    関西における人事(労務・制度担当)の適正年収

    経験年数~職位別でみた年収相場は下記となります。

    経験年数 未経験~ポテンシャル
    (3年未満経験者含む)
    経験3年~5年
    (スタッフ)
    経験5年以上~
    (リーダー~マネージャー/スペシャリスト)
    人事部長/人事責任者
    年収 300万円~500万円 450万円~650万円 500万円~800万円 700万円~1000万円
    ※上記年収は月額給与及び定期的に支給される賞与の合計額であり、別途支給される時間外手当や決算賞与等の変動要素がある金額に関しては含まない想定で算出しています。

    ・勤怠管理・給与計算・社会保険手続き等の労務オペレーションのみの経験者については、中小企業等は400万円~600万円程度、上場企業等の大手については450万円~650万円程度が相場となります。
    経験5年以上の労務+αの業務経験者については、中小企業だと500万円~700万円位、大手企業等を含めると上限が~800万円程度となるイメージです。管理職位となると、700~800万円程度を想定される求人依頼が多くなりますが、大手有名企業を中心に、人事部長の求人はそもそも求人として出ないケースも多いです。
    ・労務のオペレーションのみの経験者はどちらかというと女性が多く、人事制度経験者は母数として少ない状況です。
    ・近年は法改正が頻繁にあるため、キャッチアップが出来る方という観点で大手企業を中心に社会保険労務士資格の引き合いは強い印象です。

    MS-Japan 大阪支社
    リクルーティングアドバイザー 関谷 勇志朗

    人事(労務・制度系)を採用したい企業へアドバイス(関西・東海エリア)

    労務実務経験者となると、女性登録者が多くなります。特に30代を中心に、出産・育児などのライフステージから複数社経験されている方や、ワークライフバランスを重視されている方は多いです。募集要件において、スキル面を十分に満たしているようであれば、経験社数や年齢、働き方を広く検討するなど、柔軟に対応できると良いでしょう。仕事と家庭をうまく両立している既存社員の例など、具体的に求人票に記載する事もおすすめです。リモートワークやフレックス制度が既にあるようであればアピールポイントとして併せて記載しましょう。

    労務・制度人材を採用するための戦略とプロセス

    採用担当者は経営層や人事責任者と連携をし、企業の方向性、代表を含めた経営層の考えや思想、そして現時点での課題を深く掘り下げることが求められます。
    候補者においても、人事制度経験者や管理職など、ハイクラスになればなるほど上記を重要視するケースがほとんどです。これらの要素を正確に把握することで、求人票作成に反映させ、適切な人材を確保するために不可欠です。また、会社の規模によって採用戦略に異なるアプローチが必要となります。

    中小企業・ベンチャー企業の場合
    中小企業やベンチャー企業では、経営層とのコミュニケーションが比較的容易であるため、社長のビジョンや具体的な事業目標に直接耳を傾ける機会が多くあるかと思います。直接経営層から会社の現状と将来このような会社にしたいという理想をヒアリングし、現状と理想とのギャップ(=現時点での課題)を明確にしましょう。ギャップを解決する為にはどのような組織にするべきか、その為にどのような人材や人事制度が必要か、採用課題をすり合わせましょう。例えば、課題解決のために人事制度が必要となる場合、構築・改定のそれぞれの目的と、実施後に見据えている最終目標を予め明確にし、求人票へ落とし込みます。

    大手・エンタープライズ企業の場合
    大企業では、組織が大きく複雑であるため、異なる部門やチームからの情報を統合し、一貫した採用戦略を策定することが重要です。すでに確立された人事制度の下で、CSR(社会的責任)の観点から人事制度を継続的に更新する必要があり、研修制度やシニア・女性の活用、働き方改革など多様性の推進といった施策が求められます。これらに伴い、同規模の企業での実績を持つ経験豊富な人材が必要とされるケースが多いです。

    求人票への反映と構造化面接、採用戦略の定期見直し
    ヒアリングした内容は、求人票に詳細に落とし込むことが重要です。「会社の方向性」「経営層の考えや思想」「現時点での課題」を分かりやすく記載することで、候補者は企業の文化や目指す方向性を正確に理解し、自らのスキルや価値観が企業にマッチするかを判断できます。

    また、面接においては「構造化面接」の実施がおすすめです。
    面接の質問を事前に設計し、すべての候補者に同じ質問を行うことで、客観的な評価が可能になります。特に労務・人事制度関連のスキルに焦点を当てた質問を用意し、それに対する応答を評価します。

    管理部門特化型エージェントのMS-Japanでは、管理部門全般の面接質問集を用意しています。是非ダウンロードしてお役立てください。

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    採用担当者は、設定された長期目標と採用活動が一致しているかを定期的にレビューし、必要に応じて戦略を調整することで、企業の根本的な課題解決に貢献する人材を確保することができます。

    採用成功事例の紹介【人事/労務・制度】

    売り手市場の中、人事(労務・制度系人材)の採用に成功した企業の具体的な事例を紹介します。

    MS-Japan 東京本社
    リクルーティングアドバイザー 森田 結衣

    【採用成功事例】現状課題と入社後のミッションを明確にし、30代男性を採用成功!

    プライム上場企業のメーカー様は、歴史があり安定つつも、持株化したばかりで、服装自由化やフレックス等、新しい取り組みを推進されているフェーズでした。
    当初候補者の方は、年功序列のイメージが先行され、志望度は決して高くはありませんでした。選考が進むうえで、社外からのノウハウを取り入れるために中途採用を積極的にされている背景や、若手の意見が反映されやすいという風土面を次第に理解され、志望度が高まっていきました。
    人事担当者様が現行の「うまくいっていない課題」と、逆に「うまく改善できていること」も整理して正直にお伝えになられたことで、企業が抱える課題と入社後のミッションが明確になり、採用成功につながった事例となりました!

    MS-Japan 大阪支社
    リクルーティングアドバイザー 関谷 勇志朗

    【採用成功事例】経営層とのパイプ役に、30代女性の社会保険労務士を採用!

    大手企業のシェアード企業様から、グループ全体の人事制度を整えるべく人材を採用したいとご依頼いただきました。
    一方で、上記ミッションから、今後経営層と調整ができるような労務知識や法改正のトピックスに明るい方を採用したいというご要望があり、社労士資格をお持ちの30代女性をご提案。既に企業にて労務、人事制度のご経験がおありな方で、採用へとつながりました!
    社労士資格は会計士や弁護士などの他士業資格と比べて、資格有無により年収相場が変らないケースが多く、一度ご検討頂いてもよいかもしれません。

    >MS-Japanの採用成功事例をもっと見る

    労務・制度人材を採用する際に陥りやすい課題と解決策

    実際に労務・制度人材を採用する企業が陥りやすい課題をリクルーティングアドバイザーに聞いてみました。

    MS-Japan 東京本社
    リクルーティングアドバイザー 森田 結衣

    人事制度経験者には適切な年収設定を

    よく、400万円~600万円の年収帯で、給与社保等の労務オペレーションに人事制度の経験者を採用したいというご要望を伺いますが、労務オペレーションのみの経験者が450万円~650万円の年収帯に該当するため、採用に苦戦するケースが多いです。人事制度経験者は母数が少ない点に加えて、500万円~800万円位が年収相場となります。提示年収の上限が~600万円だと相場と折り合わず、応募獲得自体が難しくなります。
    20代~30代で人事制度を少しでも経験したことがある方で、ゆくゆくのマネージャー候補で採用したいというケースは多くありますが、現行の給与制度と年齢の兼ね合いで相場から年収帯が低く設定されてしまっている事が多いです。年収帯をあげるか、ターゲットの年齢層を広く検討、もしくは人事制度経験のない若手を採用するなど、優先順位を明確にした上で要件を柔軟に広げることが採用への近道です。

    MS-Japan 大阪支社
    リクルーティングアドバイザー 関谷 勇志朗

    売り手市場において選考スピードは引き続き再重視

    人事制度のプロフェッショナル採用ですが、経験者がそもそも少ない為、採用難易度は高いです。
    一方で、大手企業を中心に人事制度経験者の募集は増加しており、バッティングもしやすい状況です。コロナ後にテレワーク等を見直し、時代の変化とともに人事制度を変えたいというニーズが増加したことが背景となります。これまで人事制度改定の実績がなく、社内ノウハウがないので採用したい、というご依頼も増えています。
    社労士採用や、制度運用経験のみでもよいので、少しでも人事制度に携わったことがある方など、要件を広げることが大切となります。

    いずれも労務オペレーションのみの人材に比べて、人事制度経験者の採用が難しい事が分かります。転職市況に合わせた適切な年収の設定と、採用課題に合わせた柔軟な要件の再検討が採用成功につながります。

    まとめ

    人事の中でも、とりわけ労務・人事制度経験者の採用においては、企業の現状と目指すべき姿を理解し、それに適した人材を見極めることが重要です。特に、企業の方向性、経営層の思想、現在の課題を詳細にヒアリングし、これらを求人票に反映させることが、候補者を惹きつけるためには不可欠です。MS-Japanのリクルーティングアドバイザーが転職市況をふまえ、採用課題抽出からご支援する事も可能です。労務・制度人材の採用をお考えの際は、是非ご相談ください。

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    この記事を監修したリクルーティングアドバイザー

    森田 結衣

    大学卒業後、インテリア販売の営業職を経てMS-Japanに中途入社。東京本社にて一貫してリクルーティングアドバイザーとして法人営業に従事。
    主に上場企業や大手グループ企業等のエンタープライズ企業を中心に担当。求職者に次の会社への目標・目的を明確にして意思決定いただけるよう、導いていくことを心がけている。

    関谷 勇志朗

    人材営業、メーカー営業を経てMS-Japanに入社。大阪支社にてクルーティングアドバイザーとして法人営業に従事。
    主に大手エンタープライズ系から非上場企業まで広く企業への支援実績がある。