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はじめに
多くの会計事務所が実務経験者の採用に苦労していますが、この人材難を解決する有効な手段として、若手未経験者(※1)の活用が注目されています。特に簿記2級の資格を持つ者や税理士試験受験の経験がある20代の採用は、将来の投資として大きな意義があります。本記事では、これら若手未経験者をいかにして効果的に採用し、育成していくかを解説します。
※1:本記事における「若手」とは、20歳代の人材を指します。
会計事務所の現状と人材難の背景
会計事務所の業界では、人材の高齢化が顕著であり、多くの税理士が60歳を超えています。これにより、新たな税理士の確保が一層困難になっており、若手の採用と定着が大きな課題となっています。年末調整、確定申告、決算・税務申告など繁忙期に業務が集中し、事業会社と比べて長時間労働となりやすい傾向があり、特に若手の定着率が低いという問題もあります。これらの問題を解決するために、若手未経験者を含む多様な人材の採用が重要です。
また、税理士試験の受験者で、一番多い年齢層は41歳以上の34%となり、対して20歳以下は4%、30歳以下は32%となっています。税理士業界全体で若手人材を受け入れるための体制作り、教育プログラムの充実が求められています。未経験者でも成長できる環境を整え、業界の新たな力となるよう支援することが、会計事務所の発展に繋がるでしょう。
【参考】
>令和5年度(第73回)税理士試験結果|国税庁
【関連記事】
>税理士の平均年齢は60歳以上!? 5つの理由とリアルな現状を解説
会計事務所の人材難から脱出!採用の新たなアプローチ
会計事務所の採用戦略は、経験豊富な人材を求める傾向にありますが、業界の現状を鑑みると、未経験者や新卒採用の重要性が高まっています。特に、科目合格者や簿記2級資格を持つ20代の未経験者は、未来の中核人材としてのポテンシャルを秘めています。これらの人材は母集団形成が容易であり、初期段階から業界に適応するための教育が可能です。
多くの会計事務所は、未経験人材の中でも税理士資格取得に向けた本気度や業務のキャッチアップを期待して科目合格者を好みますが、簿記2級資格者の未経験者を採用するケースも増えています。その際、人柄や営業出身者等のコミュニケーション能力を選考ポイントとして重視して検討するとよいでしょう。
スタッフの欠員等、どうしても早期採用しなければならない場合、簿記2級資格を持つ未経験者や50代以上のシニア層を積極的に採用することをお勧めします。特にシニア層の採用成功事例として、国税や金融出身のキャリアチェンジ者や、定年後の60代以上の科目合格者や有資格者を採用し、若手の指導役として活躍しているケースがあります。このように、採用背景に合わせて未経験者やシニア層を積極的に採用することは、会計事務所が人材難を解消する上での重要な戦略となります。
若手人材育成と定着の重要性
せっかく採用した若手が短期間で離職してしまうのは非常にもったいないことです。しっかりと戦力として定着してもらうためには、効果的な教育体制、働きやすい職場環境、明確なキャリアパスの設定が不可欠です。
教育体制では、新入社員が会計の基本から税法、クライアント対応まで学べる段階的なカリキュラムが理想です。先輩社員によるメンタリングや定期的な研修も新人の成長に寄与します。
MS-Japan 大阪支社
リクルーティングアドバイザー
橋本 亜以子
未経験人材採用と入社後フォローについて
3年前、地方の会計事務所様で未経験人材を採用してもらい、その後、無事に定着したことから、最近追加の若手求人依頼を頂きました。この事務所の先生は「未経験を採用する時には、まずは周囲の環境を整えなければならない」という考えを持ち、月に1回程度の頻度でメンター制度や人事面談を積極的に取り入れ、若手未経験者でも馴染めるようにフォローを行っていました。採用後の定着可否は、周囲のバックアップとフォロー体制にかかっていると言っても過言ではありません。若手が短期間で転職してしまうケースで多いのは、業務指導がないことや過度に自走を促す事務所です。不安やスキルアップへの疑念が転職理由になりかねません。
働きやすい職場環境の整備も重要です。特に若手は税理士を目指す人が多く、試験勉強の時間を確保できる事務所は非常に人気があります。残業が少なく、場合によっては時短勤務が可能で、リモートワークやフレックス制度などフレキシブルな働き方ができる環境は、未経験者採用でも母集団を集めやすくなります。これらの取り組みを人事制度に落とし込み、制度化することで、より安定した職場環境を提供することが可能です。
また、明確なキャリアパスの設定も不可欠です。社会人経験が少ない若手や他業種からのキャリアチェンジを希望する人々は、入所後の業務やキャリアパスをイメージしづらいことが多いです。科目合格後に業務の幅が広がる例や、昇進・昇格のモデルケースを具体的に示すことで、若手人材は自身の成長と将来を明確に描けるようになります。昇進や昇格の基準を透明にし、各ステージで必要なスキルや目標を明示することで、従業員のモチベーションを高め、長期的な定着を促進します。
事業会社と比較すると、会計事務所ではこれらの仕組みが整っていないことが多いため、適切な教育体制と職場環境、明確なキャリアパスを通じて、若手社員が長期的に活躍できる体制を構築することが求められます。
採用活動のタイミングと方法(会計事務所)
会計事務所における採用活動の成功には、適切なタイミングと方法が重要です。以下では、効果的な採用活動を行うためのポイントを紹介します。
早めの求人開始
求人は早めに出すことがおすすめです。4月は新年度に伴う採用ニーズが高まり、6月は税理士試験後に活動を開始する求職者をターゲットにした求人が増加しています。多くの若手人材は試験前から情報収集を始めており、優秀層は半年後の入社を見据えて活動しています。早めの求人展開により、情報収集段階の求職者に目に留まる機会を増やすことが重要です。
試験後のピークタイム
8月の税理士試験後が採用活動のピークとなります。6月から10月までの期間に採用を行うことが理想的であり、特に未経験者を採用する場合、繁忙期の負担を避けるために10月から11月の入社が望ましいでしょう。
税理士試験後の面接・内定
税理士試験終了直後の求職者をターゲットにする場合、8月中旬から9月初旬にかけて面接・内定を計画することが効果的です。求職者の5割から6割は試験後に自己採点をもって転職活動を本格化させるため、このタイミングを逃さず、選考スピードを早める必要があります。試験を受けたという事実が評価され、完全未経験者よりも優遇されることがあります。
求人内容の魅力付け
未経験人材においても売り手市場となります。前述の、適切な教育体制と職場環境、明確なキャリアパス等が既にある場合は他所との差別化となります。求人票に落とし込み、母集団形成を行いましょう。
早めの求人開始、試験後のピークタイムの活用、迅速な面接・内定プロセスを心がけ、効果的な採用活動を行いましょう。
【MS-Japan 登録者レポート】
>士業・会計事務所スタッフの年代別・エリア別年収や経験業務内容をチェック
業務効率化とアウトソーシング
会計事務所の業務効率化には、ITの活用が不可欠です。近年、求職者は応募時に会計ソフトやクラウドサービスの有無を重視する傾向があります。例えば、会計ソフトやクラウドサービスの導入により、データ管理や処理が自動化され、業務の迅速化と正確性が向上します。これにより、従業員はより価値の高い業務に集中できるようになります。また、リモートワークの推進により、柔軟な働き方が可能となり、若手社員も馴染みやすい環境が整います。さらに、定型業務のアウトソーシングも有効です。外部に任せることで、内部リソースを効率的に活用し、業務負担を軽減できます。これらの取り組みにより、業務効率化と社員の働きやすさを両立させることが可能です。
まとめ
従来の採用方法では、会計事務所の採用難は解決できません。採用要件や人事制度を見直し、簿記2級を所持する若手未経験者や、シニア層の採用にも目を向けることで、多様な人材を活用できる環境を整えましょう。特に、ITの活用や業務効率化を進め、リモートワークやフレックス制度など、時代に合わせた働き方を導入することが母集団形成においても重要です。現在の転職市況に真摯に向き合い、柔軟な対応ができる事務所こそが、これからの厳しい採用市場で生き残り、更なる拡大・成長につながるでしょう。
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この記事を監修したリクルーティングアドバイザー
橋本 亜以子
大学卒業後、美容化粧品メーカーに入社。営業の他、一部採用・研修等の人事業務を担う機会があり、人材業界に興味を持つように。MS-Japanに入社後はリクルーティングアドバイザーとして、法人営業に従事。主に関西圏の監査法人、会計事務所、コンサルティングファームを中心に「影響力のある営業」を目指して採用支援を行っている。
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リクルーティングアドバイザー 橋本 亜以子
経験者求める会計事務所のリアル、柔軟な採用を
どの事務所様も最初は「経験者を採用したい」と仰います。「昔は採用できていた」という事務所様に対しても、推薦可能な具体的な人数目安数をお伝えしています。例えば、大阪の事務所経験者や科目合格者を採用したいとなると、1名に対しておよそ100~150カ所の会計事務所が同条件で採りにいく市況感です。募集開始から1か月経過して母集団形成が芳しくなければ、簿記2級のみの未経験者や60代以上のシニアを検討していくなど、採用期限を決め、段階的に条件を緩和するのもよいでしょう。税理士試験後は経験豊富で科目合格者などから転職先が決まっていくため、時間が経過していった場合は広く検討していくことがお勧めです。