お役立ち資料・コラムUSEFUL DATA/COLUMN


目次


    最近では、新卒採用に加えて、キャリア採用・中途採用などの採用方法を併用する企業が一般的になってきています。 これらの採用方法は、広い意味で社会人経験のある人材を採用する位置付けとなっていますが、厳密には意味合いが異なります。

    採用担当者としては、それぞれの言葉のニュアンスを正しく理解して、人材確保に役立てる必要があります。 この記事では、キャリア採用・中途採用それぞれの違いについて解説した上で、キャリア採用に積極的な姿勢を見せる企業・職種についてご紹介します。

    キャリア採用と中途採用の違い


    冒頭でお伝えした通り、キャリア採用・中途採用が意味する部分は概ね同じで、社会人経験のある人材の採用枠として用いられます。 ただ、それぞれの意味合いは微妙に異なるため、求職者側の誤解を防ぐ意味でも、厳密に使い分けて採用活動を実施したいところです。 以下に、キャリア採用・中途採用について、それぞれ採用の現場ではどのように使い分けられているのかをご紹介します。

    キャリア採用

    キャリア採用とは、簡単に言うと「即戦力」を募集する際の採用枠を言います。 具体的には「同業種・同職種で一定基準以上の経験を積んだ人だけ」を採用したい場合に用いられることが多い傾向にあります。

    経理職を例にとると、以下のような条件が掲げられているケースが該当します。

    ・実務経験3年以上 ・月次決算の経験者歓迎

    他にも、企業によって求める条件は違いますが、総じて採用されてから早い段階でモノになる人材が欲しい時に用いられます。

    中途採用

    中途採用という表現を用いた場合、必ずしも経験者だけを募集するとは限らず、社会人経験があれば「異業種・異職種からの採用も柔軟に対応する用意がある」ことを求職者に伝えるニュアンスがあります。 具体的には、応募資格に「業界・職種未経験、第二新卒歓迎」といった内容が書かれている求人情報が該当します。 キャリア採用として細かい条件を求職者に求めるのと違い、求職者側が応募する際のハードルが低くなるメリットがある反面、自社で欲しい人材を選ぶ手間がかかります。

    キャリア採用に積極的な企業

    キャリア採用・中途採用を明確に区別している企業は少なくないですが、特にキャリア採用を積極的に行っている企業には、いくつかの傾向があります。

    外資系企業

    年功序列の概念が少なからず幅を利かせている日系企業と異なり、外資系企業の多くは実力に応じたポストを用意するのが一般的です。 そのため、自社で求めるスキルがない人間を採用し、社内で0から育てていくというケースはあまりみられません。

    逆に言えば、採用時点で自社にとって「有益な人材」と判断された求職者は、そのスキル・経験に応じたポストが得られる確率が高いとも言えます。 給与レンジが広い場合、待遇を上手にアピールすれば意欲的な求職者を集めることにつながりますから、キャリア採用枠として求人情報を構成した方が効果は高いものと推察されます。

    ベンチャー企業

    スタートを切って間もないベンチャー企業は、代表はもちろんのこと、社員全員が忙しい日々を過ごしています。 何をもってベンチャー企業と定義するかは、人数・社風・事業規模など会社によりけりですが、共通しているのは「猫の手も借りたい」ような企業が多いということです。

    企業側も必要な人材を多数確保できるだけの待遇を用意するのが難しい場合があり、せっかく来てもらう以上は一人二役・三役をこなしてくれる優秀な人材が欲しいと考えています。 逆に、自社にとって最低限必要な要素を備えていない求職者は、企業が成長するスピードについていけなくなるおそれもあるため、ベンチャー企業は相応の実力が備わった人材を確保する目的でキャリア採用を選ぶ傾向にあります。

    IT関連企業

    そもそも「未経験者を採用しにくい」傾向がある業種として、IT業界があげられます。 例えば、プログラミングのスキルを持つ人材は慢性的に不足しているため、企業側も人材が欲しいのは間違いないのですが、まったくの未経験者が数カ月でスキルを学べるケースはごくわずかです。

    仮に未経験者を採用した場合、社員の誰かが事前教育を施す必要があるため、人的コストが高くつきます。 さらに、作業時間の一部が新入社員の教育に費やされますから、その分だけ開発スケジュールも圧迫されます。 よって、IT関連企業での採用活動・特にエンジニアやプログラマーが欲しい場合などは、キャリア採用枠を選んだ方が確実性は高いでしょう。

    キャリア採用に積極的な職種と理由


    企業同様、キャリア採用に積極的な職種というものも存在しています。 一般的には、職務の専門性が高かったり、具体的な実績が求められたりするような職種につき、キャリア採用を選ぶ企業が見られます。
    以下に、主な職種についてご紹介します。

    人事、財務、法務などの管理部門

    バックオフィス部門として会社を支える、人事・財務・法務といった管理部門は、業務の性質上から経験者を必要としているところが多く見られます。 人事部門は人を見るのが仕事という一面もあるため、未経験者が採用されるケースも可能性としては考えられますが、やはり他の業務も含めて総合的に対応力の高い経験者をキャリア採用という形で探している企業が目立ちます。

    また、財務や法務の分野に関しては、そもそも未経験者が対応できる業務そのものが限られるため、優秀な人材を新卒からじっくり育てることを想定している場合以外は、原則として業務経験が問われます。 財務職は資金調達も含めた資金繰りを任される立場にあたるため、一つのミスが企業の血液たるお金の流れを滞らせてしまうおそれがあります。 法務の場合も、案件を片付けるには杓子定規な法律の解釈では務まらないことが多く、当人の法解釈のセンスが重要になってくるため、やはり企業側としては一定の素養が担保されている経験者を選びたいのが本音です。

    営業企画

    商品を口八丁手八丁で売るだけでなく、売れる仕組み作り・マーケティングの要素も含んでいる営業企画職は、システマチックに売上をあげる実績・経験のある人間でなければ、なかなか転職後に思うような結果を出すのは難しいかもしれません。
    企業によってはマーケット開拓からのスタートとなるケースも見られるため、実力がある人間にとっては魅力的に感じられる一方、未経験者は何から手を付けてよいのか分からないまま時間が過ぎてしまうことでしょう。

    デジタルサイネージ・IoT・Web広告など、進化するアドテクノロジーについていけるだけの柔軟性も求められます。 現場感覚をつかんでいない未経験者は、売れるために各種ツールをどう活用すべきかイメージしにくいため、やはり企業側は経験者を求めます。

    SE

    そもそも、IT系の企業で募集している職種は、経験者でなければ採用が難しい傾向にあります。 一口にSEといっても、求められる技術は企業によって変わってきますし、システム開発などの勘所も違いますから、企業は求職者の経験を面接の段階でチェックしなければならないからです。 万一、経験不足の担当者が顧客に何らかの損害を与えてしまった場合、システムが導入・運用されてからでは取り返しのつかない事態になることも想像されますから、キャリア採用に偏るのは当然と言えるでしょう。

    まとめ

    キャリア採用・中途採用は、ともに社会人経験のある人材を採用する点では共通していますが、より即戦力に近い人材を得るためには、キャリア採用を用いた方が効果的です。 求職者側の心理として、キャリア採用と中途採用の区別がついていないケースも十分考えられますが、多くの求人情報に触れている求職者・転職エージェントなどを利用している求職者は、その違いを理解した上で転職活動を行っているケースが多く見られます。

    企業側としても、意識を高く持っている求職者・自社に貢献する要素を備えた求職者に適切なアプローチを行うためには、やはりキャリア採用・中途採用の使い分けが重要です。 求職者側が求人情報のニュアンスを誤解しないようにするためにも、それぞれの表現を混同せず用いることが大切です。