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    スーパーフレックス制度を導入すべきでないケースは?

    新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにリモートワークを導入している企業が多くなっていますが、従業員を在宅で就業させる場合、従来のような出社時間・退社時間での管理は上手くマッチしません。ここで注目されているのが、働く時間や働く場所を従業員それぞれが自由に決められるスーパーフレックス制度です。しかし、スーパーフレックス制度は企業との相性の良し悪しもあるため、自社にフィットするかどうか考えてから導入する必要があります。

    スーパーフレックス制度とは


    働き方の多様化の進展に伴い、かねてよりフレックスタイム制度を導入している企業もありましたが、フレックスタイム制度の場合には、自由に出勤時間を決められるフレキシブルタイムと、必ず出勤していなくてはならないコアタイムがあるので、完全に自由というわけではありませんでした。スーパーフレックス制度は、フレックスタイム制度のコアタイムを撤廃したものであり、就業時間を従業員が自由に設定できます。混同されやすいのが裁量労働制ですが、裁量労働制の場合には何時間働いても一定の時間の就業とみなされるのに対し、スーパーフレックス制度の場合には就業時間数の合計を管理されます。例えば、1日8時間勤務の場合、週40時間勤務するものとして、この時間を満たすように1週間あたりの就業時間を従業員が自由に決めるのがスーパーフレックス制度です。

    スーパーフレックス制度導入の背景

    スーパーフレックス制度の導入が注目されたのは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにテレワークを導入したことで、これまでの労務管理が難しくなったためです。オフィスに勤務していない以上、出勤時間を細かく管理することは難しいので、従来のフレックスタイム制度のコアタイムを維持するのも合理的とはいえません。そこで、導入が相次いだのがコアタイムを撤廃したスーパーフレックス制度でした。自宅を仕事場にしなければならないので、家庭の事情に合わせながら働きやすい点においても、テレワークとスーパーフレックス制度の相性は優れています。早朝や深夜の勤務、私用での中抜けなども交えながら、自分のライフスタイルに合わせて働くことができます。

    コロナ禍以前でも、働き方改革に伴って多様化する働き方に対応するためにスーパーフレックス制度は広がってきました。それぞれが働き方について多様な価値観を持つようになれば、そのニーズに応えて柔軟に働ける環境づくりを行うことで従業員の流出を抑止したり、優秀な人材を確保しやすくなったり、などのメリットを得られます。また、海外とやり取りする部署であれば夜間勤務のほうがスムーズに業務を進められたり、顧客都合に合わせて動く営業職の場合にもオンとオフを切り替えやすかったりなど、生産性の向上につなげやすいという魅力もスーパーフレックスの導入が拡大する背景となっています。

    スーパーフレックス制度のメリット

    育児や介護など家庭の事情を抱えている従業員にとって、これらの家の用事をこなしつつ就業できるスーパーフレックス制度はとても働きやすいため、貴重な人材の流出を抑止するメリットを期待できます。同様の理由で、働きやすい環境を求めている優秀な人材の流入についても期待できるといえます。家庭の事情よりフルタイムで働くことのできない人にとって、スーパーフレックス制度を導入している企業はとても魅力的に映るからです。また、従業員それぞれが自分のパフォーマンスを最大化できる場所、時間帯に働くことができるので、全体としての生産性向上にもつながりやすくなるほか、勤務時間の長期化を防げるので残業代の削減にもつながっていきます。

    スーパーフレックス制度のデメリット

    コロナ禍で普及するテレワークの課題として挙げられることの多いのは、従業員間のコミュニケーションが欠如しやすい点です。オフィスで顔を合わせていれば、言葉だけでなく表情や仕草などから情報を得ることができますが、スーパーフレックス制度下においてはお互いが遠隔地にいるため、文字や言葉のみでコミュニケーションを交わさなくてはなりません。この結果、どうしてもミスリードが生じやすくなってしまい、業務に支障をきたす場合も考えられます。また、取引先とのやり取りがスムーズにいかないケースも考えられます。問い合わせがあった際、担当者がいつも不在となってしまわないよう注意しなくてはなりません。

    スーパーフレックスを導入するべきケースとしない方がよいケース

    スーパーフレックス制度を導入すべきケースは2つあります。

    1つは、職場の人数が多い場合です。従業員それぞれが自由に出社時間・退社時間を決めたとしても、人数の多い職場であれば誰かしら在席しており、お互いにカバーしながら業務に対応できるためです。

    2つ目は、時間の融通がききやすい仕事内容の場合です。何時に始めても支障をきたさない仕事であれば、出勤時間をずらすことで自分が集中しやすい時間帯を選べば、効率よく業務をこなすことができます。また、繁忙期とそうでないときで波がある場合にもスーパーフレックス制度は有効です。忙しいときには仕事に集中し、閑散期にはプライベートを重視するよう、ワークライフバランスを高められます。

    一方、職場の人数が少なく一人休んだだけでも現場が回らなくなるようであれば、すべて他の部署へとしわ寄せが行ってしまうため、スーパーフレックス制度の恩恵どころの話ではなくなります。大がかりなプロジェクトがある場合、複数部署と連携して仕事を行う場合にも、それらの業務に従事するメンバーが就業している時間帯に合わせて就業する必要があるので、スーパーフレックス制度との相性は良くありません。メンバー間の足並みが揃わなければ進捗に支障をきたしてしまうため、生産性の低下を招いてしまうからです。

    スーパーフレックスを導入した企業事例


    ソフトバンク株式会社

    スーパーフレックス制度をいち早く導入した企業として知られているのが、ソフトバンク株式会社です。もともとフレックスタイム制度を導入していましたが、コアタイムを撤廃してスーパーフレックス制度へと切り替えました。従業員数はおよそ1万人であり、それぞれが自分の業務状況と相談しつつ就業日や就業時間を自由に決めています。

    花王株式会社

    同じくコアタイムを撤廃してスーパーフレックス制度に切り替えたのが花王株式会社です。もともとは10時から15時までをコアタイムとしていましたが、他の時間帯にしわ寄せが生じたり、海外とやり取りする部署の忙しい時間帯とコアタイムが被らなかったりと、フレックスタイムの良さが活きなかったため、スーパーフレックス制度に切り替えた結果、業務の進捗に支障をきたすことのない自由度の高い就労環境づくりに成功しています。

    味の素株式会社

    味の素株式会社もスーパーフレックス制度を導入していますが、導入時期に思いきった試みを行うことで、新しい制度を従業員が利用しやすいようサポートしました。例えば、全社で一斉にテレワーク・リモートワークを実施し、すべての従業員がオフィスに行かずに就業している状況を全従業員に体感させたり、管理職が週に一度、リモートワークで仕事することを義務化したりすることで、スーパーフレックス制度を身近なものと感じさせ、同制度を利用する心理的障壁を取り除くことで定着を図りました。

    まとめ

    スーパーフレックス制度は自由に自分の就業時間や就業場所を決められるため、大勢にとっての働きやすい環境づくりに役立てることができます。しかし、その恩恵を受けるのは従業員だけではありません。人材不足が深刻化するばかりの今日、従業員の流出を抑え、新たな人材が流入しやすくなるのは企業にとって大きなメリットです。働きやすい環境は従業員のモチベーション向上にもつながるため、それぞれの生産性の向上も期待できます。スーパーフレックス制度の導入には向き・不向きもありますので、自社にフィットするかどうか検討してみてはいかがでしょうか。うまく導入することができれば、会社側も従業員側も大きなメリットを手にすることができます。