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    AQ(逆境指数)とは?強い組織に求められる逆境に強い人材を発掘

    近年注目を集めているAQ(逆境指数)はご存知でしょうか。
    ビジネス環境の変化が早く、予測不可能かつ困難な事態が巻き起こる現代の企業では、逆境に強い人材を採用・育成して是非強い組織を作りたいと考えているのではないでしょう。 そこで今回は、昨今注目されているAQについての情報をまとめました。AQへの理解を深めて、逆境に強い人材を発掘しましょう。

    AQ(逆境指数)とは?

    AQとは、Adversity Quotientの略です。日本語では逆境指数と呼ばれています。ハーバードビジネススクールのポール・G・ストルツ博士が提唱し、話題を集めました。AQとは、個人や組織が逆境に遭遇した際の「対応力」を数値化したものです。ストルツ博士によると、現代のビジネスパーソンは大小さまざまな逆境に対峙しながら生きていると言います。AQは、逆境に対応するための行動パターンの指し、生まれ持ったものではなく、周囲の環境や接する人によって変化する概念とされています。ますます予測不可能な現代社会において、逆境が身近にあるということはすでに当たり前になりつつあるのかもしれません。AQが高い人をリーダーにした組織の方が、低い人をリーダーした組織とよりも高いパフォーマンスを継続的にあげると言われています。

    IQ(知能指数)やEQ(感情指数)との違い

    IQ(知能指数)との違い

    IQとはIntelligence Quotientの略で、人の知能レベルを数値で表したものです。かつては、IQが高いほど知能レベルが高いと考えられていましたが、人の知能レベルが全てわかる万能のテストではないので注意が必要です。逆境の対応力を数値化したAQとは異なります。なお、IQは先天的に決まると考えられています。

    EQ(感情指数)との違い

    EQはEmotional intelligence Quotientの略であり、こころの知能指数と呼ばれています。対人関係能力を重視しており、自分と相手の感情に気づき、把握し、状況に応じて自分の感情をコントロールできる能力のことです。IQともAQとも異なります。EQは後天的に伸ばすことができると言われているものです。

    AQ(逆境指数)の4つの要素「CORE」


    AQにおいて、人が逆境に対する反応は、4つの要素にまとめられています。4つの要素とは、コントロール(Control)、責任(Ownership)、影響の範囲(Reach)、持続時間(Endurance)、それぞれの頭文字を合わせて「CORE」と呼ばれています。

    コントロール(Control)

    逆境に立たされた時、どれだけ自分の反応をコントロールできるか

    責任(Ownership)

    他人や環境のせいにすることなく、自分自身の問題として受け止められるか

    影響の範囲(Reach)

    逆境が、これからの人生などにどれほど影響を与えるか

    持続時間(Endurance)

    逆境がどのくらい続くのか

    これらの要素は、トレーニングによって強化することが可能とされています。それぞれの数値を伸ばすことでAQを後天的に伸ばすことができるのです。

    さらに、逆境への対処方法で「脱落組」「キャンパー」「登山家」の3タイプに分類できるとしています。「脱落組」は、逆境に遭遇すると逃げ出す特徴があります。「キャンパー」とは、逆境が続くとなんとか現状維持をしようとする特徴があります。なお、組織に属する人材のうち80%は、一旦は「キャンパー」になるとされています。そして、組織で求められているのは「登山家」タイプです。困難に直面しても解決し、頂上を目指す登山家のように新しいものへと発展させていく力がある人を指します。

    AQ(逆境指数)5つの評価レベル

    AQはCOREの組み合わせてよって、レベルが違ってきます。AQレベルは、以下の5つのレベルに分類できるとされているのです。

    レベル1 逃避(Escape):逆境に立ち向かわず逃避(Escape)する
    レベル2 なんとかサバイブ(Survive):つまり生き残ろうとする
    レベル3 対処(Cope):とりあえずは対処(Cope)する
    レベル4 管理(Manage): 逆境を管理(Manage)して解決しようとする
    レベル5 慈養(Harness):逆境を慈養(Harness)とし、さらに成長する

    AQレベルは、レベル1が低く、レベル5が高いです。企業や組織のリーダーとなれば、最低でもレベル4以上が求められます。逆境を管理して解決に導こうとするレベル4があれば、十分な気がするかもしれませんが、そうではありません。組織や企業を牽引して行くリーダーや経営者層にはレベル5が必要です。例えば、ニトリの創業者である似鳥昭雄氏は、「不況、逆境を成長の糧とする」ことを信条としていると言います。まさにレベル5に通じる姿勢です。実際にニトリはリーマンショックやコロナ禍でも増益を達成するなど、逆境を糧にさらなる躍進を遂げています。偉大な経営者にはAQが高い人が多いです。
    AQは、後天的に鍛えられるとされていますので、AQを伸ばし、逆境をプラスに変える力を身につけることを目指してみることは有効でしょう。変化の激しい現代では、AQの高い人が重宝されていくと考えられます。

    AQ(逆境指数)を下げる上司の行動


    AQを下げてしまう上司の行動として以下のようなものがあります。

    怒りをぶつける

    意見が対立した時などに、自分の感情をコントロールできず怒りをぶつける上司は、AQを下げます。人間関係の亀裂を生み、コミュニケーションが円滑に進められなくなって、パフォーマンスの低下につながるのです。上司は部下の模範となる人でなければならないのに、怒りの感情に振り回されている姿を見せてしまえば、士気の低下を招くリスクがあります。

    失敗を恐れて挑戦しない

    AQが低い人は失敗を恐れて行動をしない傾向があります。部下の失敗を恐れ、仕事を任せない上司の行動はAQを下げます。対して、AQが高い人は失敗したとしても落ち込みません。失敗は成功のもとという考え方なので、例え失敗したとしても良い方向に役立てていきます。サントリー創業者の鳥井信治郎氏「やってみなはれ。やらな、わからしまへんで」という言葉を残しています。部下を信じ、責任を持って仕事をやらせてみる上司でなければ、人はついてきません。

    困難な状況でパニックになる

    予期せぬトラブルなどが生じたときにパニックになることも、AQを下げる上司の行動です。仕事では時に予期せぬトラブルなどが起こります。そんな時には、パニックに陥るのではなく、冷静に状況を把握し乗り越える為にはどうすればいいか考え行動していくことが必要です。逆境は成長のチャンスと考えられる人が、上司の器であると言えます。

    AQ(逆境指数)関連する本

    すべてが最悪の状況に思えるときの心理学―AQ逆境指数
    ポール・G. ストルツ 作、渋谷昌三 翻訳

    AQを提唱したストルツ博士の本です。日本語にも翻訳されています。翻訳版は1999年の出版なので、少々古いですが、AQへの理解を深めたいなら、是非読んでおきたい一冊です。

    AQ 人生を操る逆境指数
    渋谷昌三作

    ストルツ博士の著作を翻訳した渋谷昌三氏の本です。2015年に出版されたので、現在でも比較的入手しやすい本と言えます。AQを簡単に高められるトレーニングなども紹介されていますので、気になる方は読んでおいて損がない一冊です。なお、こちらはWEB連載をまとめたものに加筆修正した本ですが、「かもめの本棚online」では初回記事の試し読みができます。

    まとめ

    一説によれば、人は大小問わず1日のうちに24回逆境に遭遇すると言われています。先が見えない現代において、AQを高めることの必要性が増しているのかもしれません。AQは、IQと違い後天的に高められると考えられています。予測不可能な事態に遭遇しても慌てず、むしろ逆境をバネにさらに成長できる力を身につける為にも、AQを高めるトレーニングなどを日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。上司やリーダー、経営者など、組織や企業を引っ張っていく立場の人ほど、高いAQレベルが求められています。AQが高くなれば、どんな困難な状況も恐れることがなくなり、仕事で大活躍できる可能性が高くなると言えるのです。もちろん仕事だけではなく人生にも役立ちます。