採用成功ガイドRECRUIT GUIDE


目次

    労働条件通知書と雇用契約書の違い。なくてはならないものなのか?

    従業員を採用して自社の業務に就業させるということは、会社と個人の間で雇用契約を結ぶことを意味しており、それを証する書面として慣例的に労働条件通知書と雇用契約書を交付する企業が多いです。 しかし、それぞれの書面がどのようなものであり、本当に必要なものであるかどうかまで把握しているケースはそう多くありません。この記事では労働条件通知書と雇用契約書について詳しくご紹介していきますので、今後の参考にしてください。

    労働条件通知書



    労働条件通知書とは、会社と個人の間で雇用契約を結ぶ際に交付するよう労働基準法で定められている書類のことであり、雇用契約の期間や就業時間、従事する業務の内容、賃金、休暇についての規定、解雇および退職に関する事項など、その個人が従業員として働いていくために重要な事項を記載したものです。

    労働条件通知書を発行する目的は、いつからいつまで働くのか、どれだけ賃金がもらえるのか、などを文書として残すことで、後々のトラブルを回避する狙いがあります。求人情報には労働条件が明記されており、入社までの選考過程においても雇用条件は話題になりますが、実際に就業してから“聞いていた話と違う!”となった場合に、口約束だけでは後々に“言った、言わない”の押し問答に発展しかねません。そのようなときに労働条件通知書を確認することで、正しい解決を導きやすくなります。立場的に弱い従業員を保護するための労働基準法では入社時の交付を必須としており、もしも従わなかったならば、会社側に30万円以下の罰金が科されるものと規定されています。

    参考画像:厚生労働省 労働条件通知書

    雇用契約書

    雇用契約書とは、民法第623条の「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対して報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」という規定にもとづいて会社と個人の間で交わす書面のことであり、2部作成して相互に署名・押印し、それぞれ1部を保管することが一般的となっています。

    しかし、民法上の規定では契約があれば効力が発揮されるものとされているだけであり、契約書を交わさなくてはならないとの規定はありませんし、労働基準法でも雇用契約書の交付義務は設けられていません。労働契約法においても「労働者と使用者は労働契約の内容についてできる限り、書面により確認するものとする。」と留められていますが、雇用契約書を交わしたほうが後々のトラブルは避けやすくなりますので、義務の有無だけで判断しないほうが無難です。その理由は労働条件通知書との違いにあります。労働条件通知書は会社から従業員へ一方的に交付されるものであるのに対し、雇用契約書は会社と従業員が相互に確認して交わす書面であるためです。

    労働条件通知書と雇用契約書の違い

    労働条件通知書は会社の個人間で雇用契約が成立した場合に発行が義務付けられているものであり、会社が従業員となる個人に対して一方的に通知する書類です。 雇用契約書は会社と個人がそれぞれ記載された内容について確認し、お互いに署名・捺印をした上で1部ずつ手元に保管する書類です。この点より、労働条件通知書は会社の意向のみが反映されているものである反面、雇用契約書は会社だけでなく従業員の同意も明確に読み取れる書類といえます。

    法律においても労働条件通知書と雇用契約書の取り扱いは異なっています。労働条件通知書が適応されるのは労働基準法、パートタイム労働法、労働者派遣法であり、労働契約の期間や就業時間についての規定、賃金や賞与、解雇や退職、休日および有給休暇の取得について、安全や衛生面についての項目など、定まった事項をすべて掲載した書類を交付することが義務付けられています。法律で交付が義務付けられているので遵守していない場合には罰則が設けられており、交付義務を怠ったときには30万円以下の罰金が科されます。加えて、通知書に記載された労働条件が守られていない場合にも同様の罰則が適用されるなど、労働条件通知書はかなり強い効力を持っています。 雇用契約書が適応されるのは民法であり、交付しなかった際の罰則はなく、会社と従業員の間で同意があったことを証する任意の書類として取り扱われているのみです。

    雇用契約書の作成方法


    雇用契約書を作成する際には、労働条件通知書とほぼ同じ内容を記します。労働条件通知書が一方的な通知であるのに対し、雇用契約書はその内容について双方の同意を明確にするための書類だからです。労働条件通知書も雇用契約書も様式は定められていませんが、書面への記載が義務付けられている絶対的明示事項と、口頭での明示でも構わないとされている相対的明示事項について意識しながら作成する必要があります。

    絶対的明示事項として挙げられるのは、労働契約の期間、就業の場所や従事する業務の内容、始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合の就業時転換に関する事項、賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払の時期に関する事項、退職や解雇に関する事項です。

    相対的明示事項として挙げられるのは、昇給に関する事項、退職手当に関する事項、臨時に支払われる賃金・賞与などに関する事項、労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項、安全衛生に関する事項、職業訓練に関する事項、災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項、表彰や制裁に関する事項、休職に関する事項です。

    雇用契約書は会社と従業員の記載事項への同意を証する書面なので、署名・捺印欄が必須です。また、社内ルールも明示して同意を得るために、絶対的明示事項や相対的明示事項に含まれていない、就業規則のなかの重要な事項を記しておくといいでしょう。

    法的には不要だが雇用契約書は作成しましょう

    法的に義務付けられている労働条件通知書とは異なり、雇用契約書の作成は任意であり、作成しなかった場合に何らかの罰則が設けられているわけでもありませんが、会社と従業員の間での予期せぬトラブルを未然に防ぐためにも、雇用契約書は作成しておいたほうがいいのは間違いありません。労働条件通知書が会社から一方的に通知するものである以上、必ずしもそこに従業員の同意があるとはいえません。

    しかし、労働条件通知書に記載されているのと同様の内容を含んだ雇用契約書を作成すれば、ひとつひとつの記載事項について会社と従業員が確認したことの証である署名・捺印を得られますので、将来の予期せぬトラブルの発生時に、お互いの主張に根拠を持つことができるようになります。

    また、労働条件通知書以上に広い範囲についての同意を得やすいのも雇用契約書を作成するメリットといえます。労働条件通知書は法律で義務付けられたものであり、絶対的明示事項や相対的明示事項を意識しながら作成しますが、雇用契約書の場合にはこれらに加えて、就業規則の重要事項なども含めやすくなりますので、労使間の予期せぬトラブルを防ぐためにより大きな役割を果たしてくれると期待できます。労働条件通知書と別に雇用契約書を作成するのが面倒な場合には、労働条件通知書兼雇用契約書として2つの書面をまとめて作成するのもおススメの方法です。この方法であれば、幅広く同意を得られるほか、法的な義務も同時に満たすことができます。

    まとめ


    雇用契約を結ぶ以上、会社と従業員の双方が守るべきルールが必要であり、そのルールに双方が同意していることを明らかにしてくれるのが雇用契約書です。入社した時点で不満がなくても、就業しているうちに納得できないことは生じるものであり、場合によっては会社と従業員の間で“話が違う!”とトラブルになる可能性も十分にあります。そういったとき、一方的に労働条件を通知するのみの労働条件通知書だけでは会社側の主張の根拠とするには物足りないかもしれません。

    しかし、会社と従業員の双方が署名・捺印した雇用契約書があれば、互いの主張の根拠を共有できるようになりますので、どちらも納得できるスムーズな解決を導きやすくなります。

    【この記事を読んだ方におすすめ】
    >内定承諾に繋がる!採用内定通知書作成のコツ【フォーマットあり】
    >押さえておきたい採用稟議書の書き方やポイント(フォーマットダウンロード付き)