採用成功ガイドRECRUIT GUIDE


目次


    経理を任せられる人材を採用しようと思ったとき、広範な業務について専門的な知識を持った人材を雇い入れれば、会社の経理機能はとても充実したものとなります。そういった人材の筆頭候補となるのが、税理士や会計士などハイレベルな資格取得者です。しかし、両者の間には違いがありますので、税理士を雇った方がいい場合と、会計士を雇うべき場合があります。以下では、諸々の条件別に税理士と会計士のどちらを雇ったほうがいいのかご紹介していきます。

    1.上場企業の経理を任せるなら、税理士と会計士どちらが適任?


    上場企業の経理に必要な機能を考えたとき、親和性の高さから会計士のほうが適任といえます。管理会計全般を担当出来るのも強みですが、もっとも大きな理由となるのが、監査への対応ができるためです。上場企業は株主をはじめとする利害関係者に経営情報の開示を行わなくてはならず、それに伴い監査役、公認会計士、内部監査人による三様監査が必要となります。監査証明業務は会計士の独占業務なので、監査に熟知した会計士が社内にいれば、決算や中期計画に関連した監査の対象となる書類作成がよりスムーズになります。企業内会計士と呼ばれる存在も徐々に増えてきており、すでに多くの大企業に会計士が在籍しています。

    2.中小企業の経理を任せるなら、税理士と会計士どちらが適任?


    中小企業の場合には税理士のほうが業務との親和性が高いといえます。税理士の顧客となり得る9割以上が中小企業であり、中小企業における経理実務に通じているのでスムーズに対応できるためです。税務に従った経理、税務調査への対応、金融機関に提示する決算書をはじめとする経営資料の作成のほうが、中小企業では会計原則よりも重視されます。加えて、多くの税理士がコンサルタント業務も展開しているよう、中小企業であれば経営面からもサポートできるため、より一層の活躍を見込めます。

    反面、税理士と上場企業の経理業務の親和性はあまりありません。上場企業での経理はとにかく正確さが要求されますが、税理士の場合には正確さ以上にスピードを重視しがちです。コミュニケーション能力についても上場企業では社内向けのものが要される一方、税理士は社外向けの能力が必要となるなど、スキルの方向性が一致していない場合が少なくないためです。

    3.CFOを任せるなら、税理士と会計士どちらが適任?


    業務の親和性より、CFOを任せるのであれば会計士であると考えられます。 CFO(最高財務責任者)は企業の経営資源のひとつであるカネを管理する最高責任者を指します。類似した言葉として、CEO(最高経営責任者)がありますが、CFOはCEOに次ぐ存在です。経理部長や財務部長といった立場もCFOと捉えられるかもしれませんが、CFOには経営管理についてのスキルも要求されるため、経営陣の一人であり、財務部長以上のポジションであるといえます。CEOの下にCFOを設けて経営陣を構成するには相応の企業規模である必要があるため、CFOは自ずと上場企業に設けられるものであると理解できます。

    4.幅広い知識を持つ人材を採用するなら、税理士と会計士どちら?


    税理士と会計士はどちらも難易度の高い国家資格として知られています。別の資格なので、資格取得の難易度を図ることは難しいのですが、より幅広い知識が求められるのは会計士です。税理士となるには、簿記・財務諸表論と法人税・所得税の選択必須科目を含む5科目にパスする必要がありますが、一度で5科目をパスする必要はありません。数科目に分けて、複数年かけて5科目をパスしても税理士になれます。しかし、会計士の場合には、基本的に6科目(財務会計論、管理会計論、監査論、企業法、租税法、選択科目)を一発でパスしなければなりません。加えて、一次試験はマークシート、二次試験は論文形式の試験が設けられているため、合格することは容易ではありません。会計士は税理士会に税理士登録すれば税理士になれますが、その逆は認められていないのを考えても、会計士のほうが広範囲にわたる知識を持っていることがわかります。但し、税法や税務業務について深く理解している会計士は少なく、その分野に限定して比較する場合、税理士の方が広く深く知識を持っています。

    5.低めの年収で採用できるのは、税理士と会計士どちら?


    年収に関しては、経験やポジションによって大きく変わりますので一概には言えませんが、勤務している税理士の平均年収は700万円前後、会計士の場合には1,000万円前後が平均年収であるとのデータがあります。これを比べると、一般的に低めの年収で採用できるのは税理士であるといえます。また、中小企業と上場企業の給与水準を考えても同様の結果であるといえるでしょう。税理士や会計士の資格を持っているというだけで過度に優遇されるわけではなく、勤務先の給与テーブルに則って年収が決められる場合がほとんどです。その結果、給与テーブルが高い上場企業のほうが自ずと年収が高くなりますので、業務の親和性の高い会計士の年収へと反映されてひとつの年収基準となります。この影響もあって、税理士のほうが低い年収で採用しやすくなります。

    6.20代を採用するなら、税理士と会計士どちら?


    これからの自社を支えてもらうために採用するのですから、ハイレベルな資格を持った若い人材を採用できればそれに越したことはありません。もしも税理士と会計士のいずれかを20代で採用しようと思った場合、どちらが採用しやすいかといえば、会計士です。税理士と会計士の年齢分布を調べてみると、20代の税理士は1%にも満たないのに対し、20代の会計士は5%ほどの構成比となっています。人数で見ても、20代の税理士は200人にも届かない一方、会計士は1500人近くいます。会計士のほうが試験の難易度は高いものの、一発合格しなければならない点、税理士は比較的ゆっくりとしながら資格を得られるという点がこのような年齢分布を生んでいるといえます。

    7.ベンチャー企業っぽい人を採用するには、税理士と会計士どちら?


    ベンチャー企業が雇い入れるのであれば、税理士と会計士のどちらのほうがフィットしやすいかを考えてみると、その人物の価値観によるといえます。中小企業との親和性が高い税理士であればスムーズなフィットが期待できます。上場企業との親和性が高い会計士であっても、経理をはじめとする管理業務全般について幅広い知識を持っています。どちらの資格を持っていようと、まだまだ機能が未熟なベンチャー企業であれば、バックオフィスの急成長を図る力強いサポートが得られるでしょう。ベンチャー企業の場合にはCFO的な役割も求められるため、直接的に経営に携わることもできます。それらの業務に魅力を感じる税理士または会計士であれば、しっかりフィットしてくれるでしょう。

    8.まとめ


    税理士と会計士はどちらもハイレベルな資格であり、取得者は会社の経理機能について専門的な知識を持っています。しかし、これまでご紹介したように持っている専門知識、親和性の高い企業規模などが異なるため、採用前に自社がどのような経理機能を強化したいのか見つめ直し、どちらの資格者を求めているのか明確にしなければなりません。仮に、自社だけで判断しづらい場合には転職エージェントに相談してみるといいでしょう。税理士や会計士が一般企業で就業している事例をもとに、きっと有益なアドバイスが求められると期待できるためです。税理士や会計士の資格取得者にとって、一般企業への就職はキャリアプランの選択肢として浸透してきていますので、この機会に採用を検討してみてはいかがでしょうか。

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