採用成功ガイドRECRUIT GUIDE


目次


    かつての日本では、ハローワーク・求人雑誌などの活用が、採用担当者にとって重要な位置を占めていました。しかし、転職市場が活発化した現代において、これらの活用だけでは欲しい人材を集めることが難しくなってきています。オウンドメディア運営・採用広報など、自社をアピールしなければ求職者が集まらない時代になってきています。そのような中で生まれた新しい概念が「採用マーケティング」です。この記事では、採用マーケティングとは何なのか、採用マーケティングをどのような形で人材確保に活用すべきなのか、実際の取り組み方も含めてご紹介します。

    1.採用マーケティングとは何か?


    そもそも、採用マーケティングとは、人材採用戦略の一つです。マーケティングという単語がある通り、本来は市場・顧客のニーズを満たす考え方として用いられていた手法を、採用戦略に取り入れたものです。採用マーケティングについてよく知らない人事担当者の中には、もともとマーケティングに携わっていた人にしか使いこなせない手法だと勘違いしている人も少なくありません。しかし、手法をなぜ用いるのか・手法を用いる根本的な理由は何なのかを把握していれば、人事担当者でも十分マーケティングは可能です。具体的な手法を活用するには、求職者との面接を数多く経験してきた、人事担当者の目線が活きてきます。採用に長らく携わった経験がある人ほど、採用マーケティングを有利に活用することができるはずです。

    2.なぜ今、採用マーケティングが注目されているのか?


    2-1.採用市場の変化

    採用マーケティングが採用の現場で注目されている理由として、転職市場が「売り手市場」になっていることが挙げられるでしょう。求職者側が、たくさんの求人情報の中から希望の会社・職業をチェックできる媒体を見つけられるようになり、企業側が自社に注目してもらうための方法を考えなければならなくなったのです。求職者の情報収集熱は強く、多くの人が「自分にとって合う環境かどうか」を非常に気にするようになりました。細かい条件で言えば、給与形態の面だけでも「ボーナスは出るのか・残業はみなし残業となるのか・交通費は支給されるのか」といった情報がきちんと掲載されているかを最低限チェックしています。他にも、労働条件の確認・退職者の口コミチェックなど、いわゆる「ブラック」な会社を避けようと、みな必死になって情報収集している状況が見受けられます。もちろん、前向きに企業情報を集めている求職者も多数存在し、現職と比較後、自分のキャリアにとってプラスになるかどうかも確認を怠りません。

    2-2.コミュニケーション方法の変化

    また、従来の面接では人事担当者が求職者を評価する向きが強かったのに対し、現代ではSNSの発達により、人事担当者・会社の側も求職者から審判を受けるようになりました。コミュニケーション方法の変化や求職者の立場の強化に伴い、良質な人材をスムーズに確保するためには、採用する側が明確に欲しい人材にアプローチする必要性が生じてきました。もはや仕事・会社を選び放題の求職者に対し、自社がどれだけ働きやすい・待遇がよい職場であるかをアピールできなければ、求職者は自社に注目しないものと考えた方が賢明です。

    3.採用マーケティングはどんな効果が期待できる?


    採用マーケティングの手法を取り入れることは、今までの人材採用と比べて、どのような効果が期待できるのでしょうか。考えられる効果はいくつかありますが、もっとも有益なのは「長期的に求職者との接点を持ち続けられる」点にあると言えるでしょう。

    従来のハローワーク・求人雑誌などの募集媒体は、求人情報を通年掲載していると、求職者から「あの会社、いつも人を募集している」と判断されることも珍しくありませんでした。【人がいれば募集しない→慢性的に人が辞める→忙しい・職場環境が悪い】というように、悪い方へ求職者の思考が流れがちになるため、どうしても定期的に広告を打つのがネックになっていたのです。

    しかし、自社の情報をオウンドメディアなどで定期的に発信し、将来求職者になるかもしれない人も含めて自社に興味を持ち続けてもらえれば、いざ採用となった場合に人を集めやすくなります。また、コンテンツを工夫すれば、多くの閲覧者に自社の情報を効率的に届けられ、採用される段階で「自社についてある程度理解が深まっている人材」を採用できる可能性が高まります。

    優秀な人材に対し「自社に転職してほしい」という希望を伝えるよりも、まずは自社がどのような会社なのか知ってもらう方が、圧倒的にハードルは低くなります。閲覧者が転職を希望しているか否かを問わず、自社に入社してほしい能力・キャリアを持った人材もそうでない人材も含め、閲覧者には会社の情報が届けられます。その後、縁があれば自社の仲間として働いてくれるという想定のもと、緻密かつ緩やかに組み立てられた採用戦略が「採用マーケティング」なのです。

    4.採用マーケティングって難しい?


    どのようなジャンルでもそうですが、聞き覚えのないジャンルというのは、誰にとっても難しく感じられる傾向にあります。採用マーケティングもその一つで、実際にやってみたことがない人事担当者にとっては、何となく横文字だけで難しそうに感じられるものです。

    しかし、マーケティングの現場で利用されている技術を採用に応用すること自体は、実際のところそれほど難しくありません。自社がどのような会社であるのか、求職者が応募してくれるとしたらどういう人か、実際に採用するならどんな人がいいのか、どのようなメディアで宣伝するのかなど、こと細かく考えていけば理論は分からずとも答えは見えてくるからです。今まで「来るもの拒まず」から始まっていた採用活動を、こちらから「欲しい人に来てもらう」スタンスに切り替えるだけなので、あまり深く考えずに行動を起こすことが大切です。

    5.採用マーケティングの実際のやり方とは?


    行動を起こすことが大切と言っても、初めて取り組む場合は手法を学んだ方が効率的に採用マーケティングを進められます。まずは、採用マーケティングで用いられる手法の種類について洗い出してみましょう。

    5-1.フレームワークを使って自社の分析をする(3C、SWOT分析)

    フレームワークとは、日本語で「枠組み」を意味します。ビジネスにおいては、主に問題解決に用いられる考え方で、いくつかの視点に基づいて策を講じる手法です。採用の現場で用いられるのは、主に「3C」と「SWOT分析」です。

    3Cとは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合他社)、Company(自社)の頭文字をとったものです。採用したいと思う求職者・求職者が自社以外で魅力やメリットを感じる競合他社・自社の環境や魅力、という視点から、採用マーケティングを行っていきます。大きな視点で人材戦略・採用計画を考えるのに適しており、特にCustomerを軸に計画を調整していくことが重要です。

    次に、SWOT分析についてです。こちらも単語の頭文字をとった名称で、それぞれ「強み(strength)」「弱み(weakness)」「機会(opportunity)」「脅威(threat)」という軸を意味しています。4象限の形で設定し、採用計画における目標の達成に向けて、「強みの活用」「弱みの克服」「市場の機会の利用」「脅威の排除」という観点から考えていきます。また、単独で考慮するのではなく、例えば「機会×強み」や「脅威×弱み」のように、複合的に要因を想定するのにも適しています。

    5-2.求職者のターゲットをもっと掘り下げる(ペルソナ)

    ターゲットとなる求職者のイメージを掘り下げるのに重要なのは「ペルソナ」です。一言で言えば「理想の顧客像」のことですが、採用の場面では「採用したい人材」に置き換えて考えます。ペルソナの設定は、ターゲットを絞るために用いられるもので、基本的に「一人だけ」のために設定するものです。要するに「こんな人が来てくれたらいいな」というイメージを、年齢・キャリア・性格・家族構成など、極限まで具体化した存在がペルソナです。このペルソナを基準にして、欲しい人材がいるかどうか人材紹介会社などに相談すると、ミスマッチを防ぎ希望する人材を見つけやすくなります。

    5-3.自社の採用課題を洗い出し、SNS・自社サイトの運営をする

    採用のために行動を起こしても、すぐに効率的な採用を実現できるとは限りません。その中で、何らかの課題に遭遇する可能性は十分あります。例えば、採用の連絡を伝えても辞退されてしまう・面接で話を聞いてみるとニーズに合致した人材ではなかった、などの課題が挙げられます。これは、求職者側に与えている情報が、自社のニーズに合致していないことから起こっている可能性があります。よって、自社の採用課題を解消すべく、自社サイトコンテンツやSNSなどのメンテナンスを行うのが効果的です。調査の段階で、世の中のニーズ・自社が何を提供できるのかを知るためには、Google広告のキーワードプランナーやGoogleアナリティクスなどが、採用マーケティングツールとして役立ちます。複合的にツールを活用し、自社にやって来る閲覧者が自然に選別されるよう、コンテンツの調整やSNS・サイトのメンテナンスに取り組みましょう。

    6.まとめ


    採用マーケティングには、人事担当者でも知っている概念もあれば、全く手つかずの概念もあります。マーケティングについて知らないことを、全て網羅するのは難しいと思いますので、自分ができるところから採用マーケティングを取り入れてみることが大切です。フレームワークのような概念は、会社という単位だけではなく、個人単位で考えられるものも少なくありません。応用できるものは場面ごとに応用していけば、自社独自の方法論を構築することは十分可能です。優秀な人材・魅力的な人材に自社を知ってもらうのは大変なことですが、採用マーケティングを徹底すれば、将来的にシステマチックな採用を実現できる可能性を秘めています。まずは、手の届く範囲から始めてみましょう。

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