採用成功ガイドRECRUIT GUIDE


目次

    オンボーディングで中途採用の定着率が上がった企業の事例3選

    中途採用において、早期離職を避け、新しい仲間に長い間働いてもらうためには、採用活動が成功した後が重要です。 新入社員が自社に対して不安を持たないよう、極力最初の段階から丁寧なサポートが必要です。

    定着率向上のための方法として、注目されているものの一つに「オンボーディング」があり、ベンチャー・大手問わず様々な方法論で実施されています。 この記事では、オンボーディングの概要や導入により見込める効果、実際にオンボーディングに取り組んでいる企業の事例についてご紹介します。

    オンボーディングとは

    オンボーディングとは、英語で「船・飛行機などの乗り物に乗っている」状況を意味する「on-board」の派生語です。 もともとは、船・飛行機に乗り込んだ乗客もしくは乗組員に対し、早い段階で環境に慣れてもらう目的で、各種サポートを行うことを意味します。

    この意味が転じて、人事用語としては「企業が新たに採用した人材を各部署に配置する際、不安を与えないよう組織の一員として支え、最終的に戦力化させるまでの教育プログラム」として用いられます。 オンボーディングという単語は、あまり日本人にとって馴染みのないものかもしれませんが、例えば古くから日本企業の文化にある「飲みにケーション」も、広い意味でとらえればオンボーディングの一例に含まれます。

    なぜオンボーディングが注目されているのか

    中途採用においてオンボーディングが注目されたのは、新入社員が社風とうまくマッチせず早期離職してしまったり、キャリア採用された幹部が結果を出すのに時間がかかってしまったりするケースが増えたことで、新入社員をケアせずに実戦投入した際の問題点が明らかになってきたためです。

    採用後に即戦力として働いてもらうためには、新入社員の能力に頼るだけでなく、企業側のサポートも必要です。 重要な人材の確保を中途採用に頼る企業が増えたことで、中途採用者に長く働いてもらうためにはサポートが必須であると、多くの企業が気付いたのです。 そのような事情から、企業・人事の側で具体的なサポート方法を模索する過程において、オンボーディングを取り入れる動きが広まってきたものと推察されます。

    オンボーディングで見込める効果


    社内でオンボーディングを実践することにより、具体的にはどのような効果が見込めるのでしょうか。 以下に、企業側・従業員側それぞれの目線から、いくつか期待できることをご紹介します。

    人材の定着を促進する

    中途採用者の早期離職は、決して珍しいことではありません。 せっかく採用コストをかけて招き入れた人材が、初期の段階でミスマッチ・コミュニケーションの限界を感じて職場を離れてしまうのは、非常にもったいないことです。 オンボーディングによる新入社員へのサポートが速やかに行われれば、想定外の早期離職を防ぎつつ、人材の定着が望めるでしょう。

    部署内の結束力が高まる

    新しい環境で働くにあたり、右も左も分からない新入社員に対して先輩が積極的に働きかけることは、チームの結束力向上に貢献します。 誰しも初めての環境で働くことは不安なものですから、それに対して適切なサポートができる先輩を見ると、新入社員も早く環境に馴染もうと自然に考えるようになります。 結果的に、部署全体を活気づけ、生産性を高める効果が期待できます。

    従業員に良い影響を与える

    オンボーディングによって、中途採用者が評価されている・きちんとサポートされている状況を見ると、直接サポートに携わっていない従業員も、自分が思っていること・伝えたいことを新入社員に伝えやすい空気が生まれます。 新入社員の存在を通じて、部署の垣根が取り払われたり、ミーティング・ランチなど対話の機会が増えたり、悩みを誰かに相談しやすくなったりと、良い影響を感じられる従業員が増えていき、モチベーションアップにつながります。

    オンボーディングの流れ

    実際にオンボーディングに取り組む際は、大きく分けて3つのタイミングに応じたプログラムを構成する必要があります。 内定者の不安や疑問に逐一寄り添える環境を作るためには、それぞれのタイミングで内定者が求めるサポートを用意することが大切です。

    入社前

    部署内外の人間関係・業務内容に対する疑問・職場環境の把握など、内定者ができれば入社前に確認しておきたいと考える点は、採用担当者が想定している以上に多いものです。
    それを踏まえた上で、この段階では同期・採用担当者・代表取締役など、様々な人と一緒に過ごす時間を作っていきます。 社員レクへの参加・入社体験など、現在働いている社員との関係性を深めるイベントを開催するのもよいでしょう。

    入社初日

    入社初日は、右も左もほとんど分からない新入社員に対し、社内スタッフが全力で歓迎ムードを演出しましょう。 入社初日できちんと新入社員を受け入れる体制が整っていれば、その後のパフォーマンスにも影響を及ぼすため、このタイミングは非常に重要です。
    出来るだけ早い段階で、企業のビジョン・理想の社員像・キーとなる人間関係について理解してもらい、目的意識を持たせるような課題を与えることが大切です。

    入社数ヶ月

    入社後、メンターとなる先輩社員を新入社員につけたら、その後数カ月~半年は、社内スタッフとの人間関係構築・期待値のすり合わせ・学びのサポートを行っていきます。
    この時、本人が自覚していないことも含めて、できたこと・改善すべきことをフィードバックしていきます。 極力ネガティブな感想は伝えず、モチベーションを高めるアドバイスを考えることが、本人の今後の発展につながります。

    企業のオンボーディングの取り組み


    実際にオンボーディングを導入するためには、具体的にどのような取り組みが行われているのか、先達の例を確認するのが早いでしょう。
    以下に、オンボーディングによって成果を出している企業の事例を、いくつかご紹介します。

    株式会社メルカリ

    株式会社メルカリは、エンジニア向けオンボーディングが充実していることで知られています。
    具体的には、以下の5つのオンボーディングプログラムが取り入れられています。

    ・組織体制や将来の展望を伝えるエンジニアオリエンテーション
    ・新入社員が必要とする情報にいつでもアクセスできるオンボーディングポータル
    ・シニアエンジニアをメンターにアサインする仕組み
    ・業務に関係するメンバー同士がつながるメンターランチ
    ・オンボーディングサーベイによる進捗状況チェックなど

    新入社員を一人にしない・悩ませない仕組みを数多く作ることで、企業側の心配要素を減らしつつ、社員同士の信頼関係構築を速やかに進めるねらいがあります。

    LINE株式会社

    LINE株式会社では、LINEを通じて新メンバーが分からないこと・周囲に聞きにくいことなどを気軽に質問できる「LINE CARE」という、言わば社内コンシェルジュを運営しています。
    LINEの他、社内カフェにある対面カウンターでも、社員からの問い合わせを受け付ける体制を整えています。 対面カウンターが、ポケットWiFiの貸出・予備椅子の貸出など、対面でのやり取りが必要な要件がメインになっているのに対し、チャットでは社内システムに関する対応など多岐にわたる問い合わせ内容が処理されています。

    日本オラクル株式会社

    日本オラクル株式会社では、年間100名規模で中途社員を採用しており、新入社員にいち早く会社に慣れてもらい実力を発揮してもらうことは、重要な課題と認識されていました。 問題解決の一環として、2016年1月に「社員エンゲージメント室」を立ち上げ、中途入社の社員向けに5週間の研修プログラムを提供しています。
    具体的なプログラムの内訳は週ごとに分かれ、1週目は会社・組織に関する基礎知識、2週目はグローバル標準のテキストなどを使った営業手法の学習(OJT)、3週目は自分が担当する製品を中心としたOJT、4週目は集合研修による習熟度確認、5週目は実戦を想定した直前練習と、非常に丁寧な構成となっているのが特徴です。

    まとめ

    中途採用者にとって働きやすい環境を提供するのは、人事担当者だけでなく、企業で働くすべての社員が取り組まなければならない問題です。 その意味で、オンボーディングプログラムの導入は、中途採用者の心を自社にひきつける有効な手段となります。

    採用間もない頃は、誰もが不安にさいなまれながら、小さなことを細かく確認しながら仕事に臨みます。 時には、上司や同僚に質問すべきか・助けを求めるべきか迷う場面に遭遇することもあるでしょう。

    そんな時、気軽に疑問を解決できるポータルサイト・チャットサービスなどがあれば、周囲に気兼ねなく確認・相談できます。 今回紹介した事例のような対応策を練るのは難しくとも、新入社員を笑顔で迎え入れつつ、システマチックに不安を解消できる仕組みを設けることが、中途採用活動の成功に大きく貢献してくれるでしょう。