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    増える出戻り社員の採用!採用するメリットや具体的な事例

    かつて、自社を一度辞めた人材を再雇用するのは、よほどの理由がない限りNGとする企業がほとんどでした。 しかし、採用難が続く中、過去に自社で働いていた「出戻り社員」を歓迎する企業が増えてきています。

    実際のところ、出戻り社員は多少のブランクこそあるものの、企業の社内ルールや内情に詳しいという長所があります。 人間関係もある程度構築できた状態から仕事をリスタートできるため、企業は真の意味で「即戦力」として扱うことができます。 この記事では、増える出戻り社員の採用について、注目されている理由やメリット・デメリットなどをご紹介します。

    出戻り社員が注目されている理由

    転職自体がネガティブにとらえられていた時代、出戻り社員の立場は決してよいものではありませんでした。 上司や幹部が「一から始めるつもりで頑張れ」・「新人同様雑用から始めろ」などと、時として新入社員より厳しい条件を課す会社も多く、特別な理由がない限り、出戻りという選択肢を選ぶ人は少数派だったと言えます。

    しかし、少子高齢化が進む中、日本の労働人口は減少の一途をたどり、人材採用が難しくなってきています。 そこで、即戦力を確保する解決策の一つとして出戻り社員が注目されているのです。

    出戻り社員を採用するメリット


    他の社員との不和が懸念される出戻り社員ですが、意外にも採用のメリットは少なくありません。 以下に、主なものをご紹介します。

    即戦力+αの実力が期待できる

    かつて自社で培った経験に加え、新しい環境で働いてきたキャリアの蓄積がありますから、即戦力として大いに働いてくれる可能性があります。 最新フィンテックの導入・事業スキーム構築など、出戻り社員が他の企業で身に付けた知識や経験が活かされるケースは多いです。

    自社に対する良い思い込みが少なく、採用コストの削減の可能性も

    新卒者・一般的な中途採用者と出戻り社員との大きな違いとして、出戻り社員は「かつて感じた会社の至らない部分」を理解・把握した上で、もう一度やり直そうと自社を選んでくれています。 自社に対するミスマッチを最小限に抑えられるのも、出戻り社員ならではの特徴です。

    採用に至った状況によっては、過去に自社を離れた社員が友人・知人・同僚を介して相談に来てくれるケースも考えられます。 タイミング次第で、求人広告を掲載する前に欠員が補充できますから、費用節約・教育コストの削減にもつながります。

    出戻り社員を採用するデメリット

    経営者・採用担当者・出戻り社員の間で同意が得られたとしても、他の社員から同意を得らえるとは限りません。 続いては、出戻り社員を採用した場合のデメリットについてお伝えします。

    良い結果が必ずしも保証されるわけではない

    自社で働いていた時点と、出戻ってきた時点とのギャップは、良い方向に進む原動力になるとは限りません。 能力的には優秀になっていたとしても、周囲との人間関係構築が上手くいかず、かえって以前よりも悪い評価につながることは十分考えられます。

    本人に悪気がなかったとしても、期待に応えるべく急進的な方向性で改革を進めようとするケースでは、その後の処遇でも手を焼くことが想像されます。

    他の社員に悪影響を及ぼすリスクがある

    出戻り社員が、分かりやすく他の社員との間に不協和音を生み出しているなら、まだ対処のしようがあります。 しかし、出戻り社員の採用自体が他の社員の退職を誘発し、ベテラン社員の退職などによって経営に悪影響を生み出すリスクもあります。 よって、出戻り社員の採用は、できる限り慎重に行わなければなりません。

    出戻り社員の採用方法について

    実際に出戻り社員を採用する場合、一般的な中途採用・リファラル採用と同様に考えるのではなく、出戻り社員に特化した採用制度を構築することで、他の社員に周知を図る必要があります。 以下に、具体的な例をご紹介します。

    再雇用制度の構築

    再雇用制度と言えば「定年後の再雇用」を指すイメージが多く、出戻り社員を受け入れるための再雇用制度を構築していない企業は数多く見られます。 制度が確立していない中で出戻り社員の採用を活発化すると、既存社員から不平不満が生じるおそれは否定できません。 そこで、自社の現状をきちんと社員にアナウンスした上で、再雇用制度の構築を試みることが大切です。

    具体的には、出戻り社員の待遇を詳しく定めることが重要になります。 給与・ポジション・昇格といった条件だけでなく、出戻り可能となる期間・退職理由・習得スキル数など、致し方ない事情かどうか・自社にとって採用メリットのある人材かどうかを判断する基準を設けましょう。

    アルムナイ制度の活用

    出戻り社員の採用を考えるのであれば、アルムナイ制度を無視することはできません。 「アルムナイ(alumni)」という単語は、英語で「卒業生・同窓生」という意味で、企業の離職者・OB・OGで形成されるコミュニティのことをアルムナイネットワークと言います。

    会社を一度退職してしまった人でも、その会社の内情が分かるサイト・SNS・ネットワーク・イベントなどを通じて、退職者同士で交流できます。 アルムナイネットワークを現職の社員が運営するケースもあり、離職者とのやり取りを続けることで、人材確保につなげるねらいがあります。

    出戻り社員を歓迎している企業


    出戻り社員を実際に受け入れている企業についてですが、現代では多くの企業が再雇用制度を導入しています。 以下に、出戻り社員を歓迎している企業とその制度について、いくつか例をご紹介します。

    トヨタ自動車(キャリア・カムバック制度)

    配偶者の転勤・介護といった理由で退職する社員のうち、事務職・技術職・業務職における準指導職以上の社員に限り、会社が認めた人物に対して再雇用申請の機会を提供し、職場へ復帰できる制度があります。 適用期間については制限がなく、本人の志望する時期に再雇用申請ができます。

    明治乳業(リ・メイジ制度)

    2020年4月1日付採用より、明治乳業では「正規従業員として3年以上勤務した後に退職した人物」を条件として、再就職可能とする制度を導入しました。 以前から制度自体は存在していたものの、再就職にあたっての条件が限定的な内容だったことから、新制度の導入に踏み切ったという背景があります。

    コクヨ(自己都合退職者再雇用制度)

    コアタイム設定のないフレックスタイム制度・社員が好きな場所で働けるワークスペースの用意など、自由度の高いワークスタイルを導入している企業の一つであるコクヨは、自己都合退職者に対する再雇用制度も整えています。 条件は幅広く、「結婚・出産・育児・介護・配偶者の転勤・留学・ボランティア・転職、及びその他会社が認めた事由」により、自己都合で退職した正社員を再雇用する仕組みとなっています。 このような仕組みを設けた背景には、元社員がコクヨの外で過ごし、その間に得られた能力・経験をチームに還元したいという狙いがあります。

    パナソニック(A Better Career)

    パナソニックでは、カムバックキャリアの受け入れ・社員再就職制度など、多様な人材が活躍できるような環境作りとして「A Better Career」という取り組みを実施しています。 社員再就職制度の適用条件は、出産・育児(末の子が就学年齢に達するまで)・介護・配偶者転勤のため退職し、退職時の勤続年数が満3年以上で、自宅から通勤が可能な人となっています。 また、配偶者転勤の場合は退職後5年以内という条件で、配偶者がパナソニック社員の場合は、再転勤などで以前の事業場で勤務できるようになる時期まで年限が設けられています。

    まとめ

    出戻り社員が、敬遠されたり、周囲から白い目で見られたりした時代は、もはや過去のものです。 諸事情があって企業を離れてしまった人材は、今や貴重な存在となっています。

    実際に再雇用されるにあたっては、諸々の条件があるため、誰でも簡単に再雇用されるわけではありません。 しかし、ライフイベントに応じた従業員の生活の変化について、会社側がそれを尊重する姿勢を打ち出す流れは、今後多くの企業で見られるようになるでしょう。 自社で再雇用制度を導入し、出戻り社員を受け入れるためには、現在働いている社員が理解できる制度でなければなりません。 早急に人材を確保する・採用にかける費用を節約するなど、会社都合の理由だけで制度を構築しても、全社的に見て良い影響が得られるとは限りませんから、まずは出戻り側・受け入れる側の双方が納得できる制度の構築を目指しましょう。

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