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    考課者研修の目的は?今注目されている理由

    人事考課における問題点の一つに、考課者の評価能力不足があげられます。 管理職が被考課者たる部下を評価する場合、部署によっては人事考課の基本的な知識・事項が頭に入っていない状況で評価にあたることも珍しくなく、そのような処遇が部下の不満につながるおそれがあります。

    この問題を解決する方法の一つとして、考課者となる管理職に客観的な評価能力を身に着けさせる「考課者研修」が注目されています。 この記事では、なぜ考課者研修を行うのか・どうして人事考課の現場で必要とされているのか、その理由を解説します。

    考課者研修とは

    考課者研修が注目されている理由を説明する前に、まずは考課者研修の概要や現況についてお伝えします。 単純に社員の仕事ぶりを評価するだけでなく、社員の長所・適性などを見抜く力を養う意味では、考課者研修で考課者を育てることには大きな意義があります。

    考課者研修とは

    考課者研修とは、人事考課を行う側・評価担当者を教育・指導するための研修のことです。 評価の根拠となる具体的な仕事ぶりを把握し、評価項目や尺度の選択を行い、被考課者へのフィードバックに必要な育成・指導ポイントの明確化ができるよう、研修プログラムが構成されています。

    考課者研修を行う企業は増えている

    2016年時点での産労総合研究所の調査によると、評価力の向上策・特に考課者の訓練を行っている企業は71.4%にのぼります。 調査の中で「評価者の評価力をどう担保し、向上させるかは、評価制度における永遠の課題ともいえる」という見解が示されており、潜在的に考課者研修を必要としている企業も含めると、考課者研修への期待は今後も続くものと推察されます。

    考課者研修が注目されている理由

    日本では、主に中小企業を中心に、仕事で実績をあげた社員を昇進させ、部下の評価方針は昇進者に任せるスタンスをとっていた企業が多く見られました。 しかし、当然ながら「仕事ができること」と「部下の長所・適性を見極めること」には、まったく別の能力が求められます。 プレイヤーとしては優秀な人材がマネジメント能力も兼ね備えているとは限らず、そのギャップを埋める方法として、考課者研修が注目されているのです。

    考課者研修の目的

    考課者研修の目的を知るためには、まず人事考課をする目的について正しく理解する必要があります。 人事考課とは、かんたんにまとめると「社員の給与・配置・昇格等を決めることを目的として、一定の期間における社員の能力・業績などを測定すること」を言います。 そして、考課者研修の目的は、評価された社員にとって納得のいく評価ができ、かつ会社にとって貢献度の高い部署に社員を配置することができる人材を育成することです。

    人事考課の結果によって、社員は、昇給・賞与などの直接的な報酬の増加・新たな役職の任命・より適性と思われる部署への異動などを経験する可能性があります。 考課者の決断は、時に社員のプライベートなどナイーブな部分にも踏み込んでいくことになるため、社員が納得できなければ会社を去ってしまうリスクもはらんでいます。

    絶妙なバランスの中で、社員が「仕事にやりがいを見出だせる」評価ができる人材を作ることが、考課者の使命です。 考課者研修の目的は、適切な人事考課を行う考え方・判断スキルを養い、社員一人ひとりの将来も見越して評価ができる人材を育成することだと言えるでしょう。

    考課者に必要なスキル


    社員を評価する考課者に必要なスキルというのは、大きく4つの領域に分かれます。 以下に、それぞれの詳細をご紹介します。

    目標設定能力

    会社全体の方向性と連動した目標を、考課する側・される側の両方が納得する形で立てる能力のことです。 目標とするところをあいまいにしたり、実際の評価に差異が生じたりしないよう、納得感・公平感のある目標を設定する能力は、考課者にとって必要不可欠なスキルです。

    部下支援能力

    設定した目標を達成するため、業務の中で部下に寄り添い支援する能力のことです。 個々の部下の能力・適性・特徴などを把握した上で、必要に応じて小さなフィードバックを行うスキルです。

    評価基準作成能力

    評価エラーを避けつつ、客観的な評価基準を作成する能力です。 能力評価は、その基準が評価者ごとにバラついてしまうおそれがあるため、正しい手順を設けることで差異を防ぎます。 人事考課の偏りをならすために必要なスキルです。

    評価面談能力

    どんな上司が、どんなに優れた評価基準にもとづいて部下を評価したとしても、評価された社員が100%納得する評価ができるとは限りません。 それを踏まえた上で、自分がなぜこのような評価をしたのか、情に流されず評価基準に即してフィードバックできる能力が、考課者には求められます。

    考課者研修はどんなことをやるの?

    考課者研修と聞くと、多くの人は「社員を平等に評価する具体的な方法」・「社員の能力や適性を見逃さないテクニック」など、何らかのノウハウを学ぶ場だと思うかもしれません。 しかし、実際にはそれ以前の段階・すなわち「評価制度の仕組み」を学ぶところからスタートしていきます。

    企業の事業規模によっては、まともな評価制度を整えることのないまま、経営陣の判断で偏った評価が行われる場合も珍しくありません。 そこで、まずは制度そのものを確認し、全体像を把握することをスタートに据えます。

    続いて、評価にエラーが伴うリスクがあることを踏まえた上で、具体的なエラーの種類を学習し、ケーススタディの演習を行います。 より込み入った内容を盛り込んだ研修では、フィードバックの方法・実戦形式での評価面接演習などもカリキュラムに含まれています。

    ケーススタディの種類は、大きく分けて「行動振り分け方式」と「総合事例方式」があります。 行動振り分け方式では、行動と評価項目の関連性について学びます。 また、総合事例方式では、特定の人物のプロフィールや行動実績の評価につき、考課者のバラつきを討議して期待レベルを揃えるプロセスを学びます。

    考課者研修の活かし方

    ケーススタディ・フィードバックの方法を学んだり、演習によって具体的な評価面接の方法を実践したりできる考課者研修は、自社でのシチュエーションをイメージしながら研修を受けることで、理解を深めることができます。 自社独自の考課者研修プログラムを構築できるところまで、教わった内容を洗練していけば、それが会社の人事・管理職研修に役立ちます。

    考課者研修の効果を最大限に活かすためには、インプットだけでなくアウトプットが肝心です。 自社の事例にあてはめる応用力を身に着けなければ、学んだことを実務に反映させることができません。 人事考課制度の理解度について、自社の制度をもとにしたテストを作成し、考課者に解いてもらう。 大掛かりな採用が始まる前の段階で、過去の事例を参考にしたケーススタディについて討議する時間を設ける。 フィードバック面接の実習やロールプレイングを社内スタッフだけで行う。

    このようなことを少しずつ実践するだけで、考課者の意識は変わってきます。 可能であれば、最初に合宿のような形で考課者研修を受け、管理職への昇進時などに復習の意味も込めて定期的に補講を行うのがよいでしょう。

    考課者研修を行う主な会社

    考課者研修の重要性を理解したことで、さっそく研修のスケジュールを考えている人も多いと思います。 続いては、考課者研修を行っている主な会社についてご紹介します。

    株式会社インソース

    考課者研修に限らず、ビジネスパーソン向けの研修メニューを幅広く用意している会社です。 新人向けのものから管理職向けのものまで、各職種・業種・役職で有益な研修が数多くラインナップされています。

    学校法人 産業能率大学 総合研究所

    1925年に創設されてから、マネジメント研究・実践的な教育の分野において90年以上の実績を持つ研究所です。 人事考課者研修は1泊2日の日程で行われ、研修のねらいや特色・具体的なプログラムが明確に定められています。

    バリューイノベーション

    2008年4月に設立された比較的新しい会社で、費用感や時間で研修を選べるなど、担当者側の都合に合わせたラインナップに好感が持てます。 考課者研修については、オリエンテーションからロールプレイングまでを一日で終わらせるなど、スピーディーなプログラムとなっています。

    まとめ


    考課者研修を効果的に導入するには、たった一度の研修では不十分です。 人間の思考・性格は、生きている限り変化を続けるものですから、時間経過とともに評価スタイルが我流になってしまうおそれがあるからです。

    物事を極めるためには、何度も練習して当たり前のようにできるようになってから、それをより素早く・的確にできるレベルにまで昇華させなければなりません。 考課者となる管理職・幹部たちは、人事考課という社員の将来を決める重要な選択を担うわけですから、それにふさわしいマネジメント能力・覚悟を養うため学びを続けるべきです。

    上司の一方通行的なコミュニケーションではなく、部下との双方向性を保つことが、会社の成長につながります。 考課者研修は「人を成長させてくれるのは、ほかならぬ人である」ことを再認識させてくれるはずです。

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