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    プロブスト法で期待できる効果やデメリット

    人事考課の手法として知られるプロブスト法は、評価誤差を防止できる方法として、多くの企業で採用されています。 特定の評価項目が他の項目に影響を与えてしまったり、直近の情報だけにフォーカスして評価してしまったりするおそれが少なくなるため、人事としても運用しやすい手法の一つです。 しかし、客観的な評価の精度を高めることにこだわると、必然的に項目も増え、実行する際にも手間がかかります。

    プロブスト法は、良い面と悪い面を理解した上で、適切に運用することが求められます。 この記事では、人事考課においてプロブスト法を用いた場合に期待できる効果・デメリットについてお伝えします。

    プロブスト法とは


    プロブスト法とは、労働者の能力や勤務態度などを評価する事柄を短文形式でまとめ、評価を行う側が各項目にチェックを入れて社員評価する方法です。 分かりやすく言うと、あらかじめ設けた項目の内容を満たしているかどうかチェックすれば、その社員の評価が出るような仕組みのことです。

    一人の社員につき、言わば人物明細を作るようなニュアンスの手法で、例えば以下のようなチェック項目を用意して判断します。

    • 意思決定や判断のスピードが早い
    • 業務の正確性/再現性が高い
    • 論理的思考力が高い
    • 周囲の状況を見てホスピタリティを発揮できる

    その他、会社・部署の事情に応じて、独自の条件を加えることも珍しくありません。 また、新卒者・役職者・専門職など、職種のレベルに応じたチェック項目を準備することもできます。

    プロブスト法は評価誤差を防止できる

    ブロブスト法を用いる最大のメリットは、評価誤差を防止できる点です。 評価誤差とは、評価する側の主観・印象によって、正しい人事評価が妨げられ誤差が発生することを言います。 自分がやっていることを「他者が正しく評価してくれている」と感じるケースは、実社会の中では少ないものです。 それは時に会社の中で不協和音を生み、社員の成長のみならず、会社全体の成長さえ停滞させます。

    アメリカの心理学者・ダニング博士とクルーガー博士は、能力の低い人が過大評価をする傾向にあることをテストするため、コーネル大学の学生に対して「ユーモア」・「論理的推論」・「英文法」に関するテストを出し、回答に加えて自分の成績が全体の中でどのくらいのレベルなのかを予想してもらうという実験を行いました。 その結果、予想と実際の成績との誤差がもっとも大きかったのは、もっとも出来の悪い下位1/4のグループだったことが分かっています。

    これは「ポジティブ・イリュージョン」と呼ばれる現象で、人間には実在の事物をポジティブにゆがめて解釈する傾向が少なからず存在していることから、社員から「正当に評価されていない」という不満が生まれるのは必然と言えます。 評価する側の方法論や考え方にも評価誤差があった場合、収拾がつかない状況になることは容易に想像できます。

    その点、あらかじめ評価項目を客観的に記したチェックシートを使えば、評価者の主観が混じる要素を極力排除できます。 数値目標など、できるだけ客観的な項目を含めるようにすることで、自他ともに納得のいく評価ができるようになります。

    人事考課の評価誤差の種類

    続いて、人事考課の評価誤差には、具体的にどのようなものがあるのかを見ていきましょう。 どのような誤差が問題になるかは個々のケースで異なるものの、評価につき以下のようなリスクがあることを理解しておけば、担当者が行った評価を見直す際の糸口になるはずです。

    ハロー効果

    ハロー効果とは、考課を受ける側の社員(被考課者)が特に優れている・特筆すべき資格を持っている場合、その他の評価項目に影響を与えることを言います。 比較的分かりやすい誤差の一つで、例えば「○○部長の意見なら間違いない」などのニュアンスが該当します。 考課における具体例としては、業務遂行の段取りが特に優れている場合、それがマネジメント能力の評価につながるようなケースが当てはまります。

    中心化傾向

    中心化傾向とは、例えば5段階評価を取り入れているケースで、項目のほとんどに評価3がついていて、平均的な評価が多くなってしまう傾向を指します。 考課を行う側のスキルに対する理解度が少なかったり、評価基準を掘り下げて考えていなかったりすることで起こります。 精神的な部分で言えば、評価担当者が批判をおそれて正しい評価ができないケースも考えられます。

    対比誤差

    対比誤差とは、考課する側がされる側を自分と比較して考えることで生じる誤差です。 具体的には、自分が苦手な分野につき実際よりも高い評価を下し、逆に自分の得意分野は厳しい目で評価する傾向が見られます。 考課者が一人だと、どうしても偏った評価になってしまうため、同僚や部下・他部署の社員・取引先・お客様の意見など、できるだけ多数の視点から評価できる仕組みを設けることで改善できます。

    寛大化傾向

    寛大化傾向とは、被考課者に対する感情移入や同情、もしくは考課者側の自己不審的な態度から、本来の実力よりも高い評価を下すことを言います。 5段階評価で言えば、ほぼ全員に4~5の評価がついてしまうケースが該当し、今後の課題・反省点などが被考課者に正しくフィードバックされないリスクがあります。

    厳格化傾向

    厳格化傾向とは、かんたんに言うと寛大化傾向の逆の傾向です。 感情移入・同情などの点は同じですが、部下に対する批判的な考えが強くなり、本来の実力よりも低い評価を下してしまうような傾向を指します。 さすがに、5段階評価で軒並み1をつけるケースは稀ですが、他の考課者と比較してあからさまに厳しい評価を下している場合、評価基準の理解が足りていなかったり、失敗・ミスを厳しくとらえたりするなど、考課者側に何らかの問題があるケースが考えられます。

    親近感、先入観によるエラー

    他の評価誤差にも通じる部分ですが、考課者と被考課者との距離が近しい状況も、正当な評価を妨げる場合があります。 特に期待をかけている社員に対しては、親近感から高い・あるいは低い評価に偏ってしまうことも十分考えられます。 また、以前の評価が高かったことで失敗を見逃してしまうような、先入観にもとづくエラーもよく見られる傾向です。

    プロブスト法のデメリット


    先にあげたような評価誤差を避ける意味では、プロブスト法は理にかなった方法です。 しかし、どのような手法も100%の成果を保証することはできず、プロブスト法にもデメリットがあります。 以下に、主なものをご紹介します。

    実行に至るまで時間がかかる

    チェック項目を選定する場合、会社・部署によって事情が異なるため、それぞれの理想とする人物像に合致した項目の選定に時間がかかります。 規則性なく項目を作成・選定できる点はプロブスト法の大きなメリットですが、その項目が「客観的評価を実現する」ものでなければ、十分な効果は期待できません。 特に、運用のスタート段階で時間がかかるのが、大きなデメリットの一つに数えられます。

    一度決めた項目をいつまでも適用できない

    せっかく時間をかけて複数の項目を選定しても、それらはあくまでも選定当時に必要とされた内容であり、通年使用できるものとは限りません。 経理事務の仕訳伝票作成など、業務スピードの向上がマンパワーに支えられていた部分が大きかった仕事も、現代ではいかにしてITを応用できる能力があるかが課題の一つとなっており、求められる能力・適性そのものが変わってしまった職種も少なくありません。 時代の変化を見据えて、こまめに評価基準・評価項目を変えていかなければならない点は、運用時に覚悟しておきましょう。

    評価に意外性がなくなる

    平等な評価基準を作れるメリットのあるプロブスト法ですが、クリエイティブな職種など、必ずしも一律の評価でチェックできない項目には対応しにくい部分があります。 現在の部署では日の目を見ない能力であったとしても、部署や会社が変われば大きく化ける可能性を秘めている人材は少なくないため、プロブスト法だけでは判断できない意外性を見逃してしまうおそれがあります。

    まとめ

    プロブスト法を採用すれば、考課者は被考課者を客観的に評価しやすくなります。 また、評価に伴うエラーを未然に防ぎ、被考課者が評価に不満を持つリスクを減らすことにもつながります。 肝心のチェック項目を作成するのに時間がかかり、評価から外れた人間の可能性を見出すことには適していないものの、少なくとも偏った評価を防ぐのには役立つ方法の一つです。

    どのような評価方法を用いるにせよ、その効果やデメリットを正しく理解しなければ、画一的・不平等な評価になってしまうことは避けられません。 過去の評価基準・実績だけにこだわらず、評価が単調にならないよう工夫して導入することが、プロブスト法を用いる際の注意点と言えるでしょう。

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