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    コーチングの基本GROWモデルでマネジメント力アップ

    上司あるいは人事部門にとって、部下・社員を自発的に成長まで導くことは永遠の課題です。 もともと高いポテンシャルを持っている場合を除いては、なかなか思うような成長を見せず、歯がゆい思いをすることもあるかもしれません。

    そこで、自ら考える力を身につけさせる「コーチング」について勉強する管理職が多く見られますが、その基本となる考え方の一つに「GROWモデル」があります。 この記事では、コーチングの基本となるGROWモデルについて、概要と具体的な質問例をご紹介します。

    GROWモデルとは


    GROWモデルとは、コーチングで用いられる基本モデルとして用いられる考え方で、主に部下などが自発的に考える力・行動する力を養う目的で用いられます。 具体的には、以下の概念をベースに、行動を具体化していきます。

    G:Goal(ゴール)は実現したい目標・理想を明確にすること

    ゴールでは、仕事という枠をいったん離れて、まずは指導する相手の「理想の状態」をイメージさせます。 理想の人生を実現するためには、具体的にどのような目標が必要なのかを、本人に考えさせるのです。

    数値化できる目標の方がフィードバックしやすいですが、個人の人生を一つひとつ数値化することは難しいので、自己評価・他者評価を比較して目標達成に向かっているかどうかを振り返ることもできます。

    R:Reality/Resource(リアリティ/リソース)は現実・状況を把握すること

    目標・理想に対して、現在はどのような状態なのかを、客観的に把握できるよう促します。 例えば、「日商簿記1級合格」を目標にしているなら、簿記2級取得時点で、原価計算と会計学の勉強をどうするのか、具体的なスケジュールまで落とし込まなければなりません。

    O:Options(オプションズ)は選択肢を想像して洗い出すこと

    理想を達成するためにどのような選択肢があるのか、ブレーンストーミングを行います。 ブレストでは、アイデアに制限を設けずに、思いつくままに選択肢を出させて、その中から現実的かつ重要度の高いものを選ぶよう促します。

    W:Will(ウィル)はやるべきことを自ら決断・選択すること

    複数の目標が出た段階で、その中から自分がやるべきことを決断するよう促します。 具体的に行動することを約束してもらう形をとり、二人三脚で目標に向かうイメージで見通しを立てます。

    GROWモデルを活用して部下の主体性を引き出す

    コーチングの手法にGROWモデルを採用するだけでは、真の意味で部下に目標意識を持たせることにはつながりません。 部下が自ら決めたことを達成し、何らかの成長の手ごたえをつかんで初めて、GROWモデルのサイクルが意味を持つようになります。

    優秀な上司にありがちな傾向として、部下の仕事に対してフィードバックする際に「ここはこういう風にやっておくべきだ」と、自分が成果を出した方法で指導するケースが見られます。 しかし、これはコーチングには馴染まない考え方であり、あくまでも部下の主体性を引き出すことにコーチングの意図があります。

    逆に言えば、GROWモデルは上司としての資質を磨く意味でも優秀なフレームワークであり、いかに部下が持っているものを仕事に反映させていくのかが、運用のキモとなります。 正しく用いて部下のモチベーションをアップさせることができれば、自ら考え行動できる社員が増え、結果的に上司がより質の高い仕事に向き合えます。

    具体的には、どのような質問を準備するのかによって、部下から引き出せる目標や結果が変わってきます。 どんなことをこの会社で成し遂げたいのか・そのためにはどんな課題を自分に課す必要があるのか・数多くの選択肢の中から選べそうなものは何なのかなど、自分自身に「問う」力を養うことが、GROWモデルを用いる目的です。

    「どうしてできないんだ」ではなく、「どうすればできると思う?」と改善策を確認することが、質問される本人ひいては会社の利益につながります。 あくまでも部下と同じ目線に立ち、部下の成長を第一に考えることが、GROWモデルによるコーチングの基本と言えるでしょう。

    G:ゴールの質問例

    GROWモデルのサイクルをスタートさせるにあたり、Goalは非常に重要です。 この段階では、会社の目標とリンクさせることを必ずしも目的とせず、部下本人の未来を意識して質問することが大切です。

    ポイントは、恣意的に高い理想を掲げさせるような質問ではなく、如何に現実的なビジョンを想起させるような質問を行うことです。 具体的には、以下のようなものがあげられます。

    • 自分の職務において、あなたが目標としているものはあるか
    • この先も同じ目標を達成し続けるのか、それともより高い目標があるのか
    • もし、目標が達成された時、あなたはどのような状態になっていると思うか
    • 目標が理想に傾いているなら、どこまで目標を落とせば現実的なレベルに落ち着くと思うか
    • 現在の目標に対して、自分がどこまで足を進めているのか

    コーチングを受ける側が、頭の中で描いている目標を自覚できるよう、繰り返し質問することが大切です。

    R:リアリティ/リソースの質問例

    目標が明確化されたところで、次に現状把握のステージへと進みます。 ここでは、目標・理想の達成ありきで考えるのではなく、現状をイメージさせることに集中します。 ポイントは、一度自分でイメージした目標に対して、本当に手が届くところにいるのかどうかを自覚させることです。 差異を正確に把握することが、この段階ではもっとも重要です。 なお、具体的な質問例は以下の通りです。

    • ・実際のところ、自分は目標を達成できるところにいると思うか
    • ・現在目標を達成していない理由として、何が問題だと思うか
    • ・現状をどのように把握していて、このまま進むと自分はどうなると思うか
    • ・もし、目標への到達度を数値化したとしたら、パーセンテージで表現できて理由も説明できるか
    • ・実際の仕事の中で、充実度が異なる部分はあるか(やりがいのある部分とない部分があるか)

    部下に対して否定的な感情をはさまず、素直な気持ちで部下が考えていることを受け入れ、ギャップを感じている部分への共感も忘れず対応しましょう。

    O:オプションズの質問例

    部下が単独で解決策を講じられなかったのは、マンネリが原因とは必ずしも限らず、他の社員にできていることができない・やっていることを知らないなどの理由があった可能性もあります。 適材適所を考える意味でも、その社員にとってどういったことが課題となるのか、幅広い選択肢を自ら絞り出せるよう促すことが大切です。

    ポイントは、部下が出す答えが上司の「問いかけ方」にかかっていることを自覚することです。 質問する側・受ける側の二人で答えに近づけるよう、以下のような質問を用意しましょう。

    • 目標に近づくために考えた方法で、今までで一番よい結果につながったものは何か
    • 新しい方法を模索しているか、あるとすればどのようなものかを説明できるか
    • 今までのやり方を、別の角度から考えてみたことはあるか、あるとすればどのようなものか
    • もし自分が○○さん、あるいは▲▲さんだとしたら、どうやって仕事を進めているか
    • いくつでもいいし、自信がなくてもいいから、たくさんアイデアを出して欲しい

    W:ウィルの質問例

    いよいよ、部下が自分自身の考え・決断に責任を持つ段階まで進みました。 数多くのアイデアが生まれたところで、最終的にどこからスタートするのか、部下に決断を促します。

    ポイントは、決して一人任せにせず、一緒に提案するようなニュアンスで決断を促すことです。 部下が新しい段階に向けてスタートを切ったことを評価して、意欲の向上につなげましょう。

    • もしこの目標が達成されたら、どんな思いが生まれるかイメージしてみよう
    • 目標達成に向けて、行動計画を具体的に検討してみよう
    • ファーストステップをどこに設定するか考えよう
    • 最終的なゴールに向けて、今月のうちにどこまで到達できそうか考えてみよう
    • 週単位のスパンで考えた時、何をどこまで行うべきか、具体的に決めてみよう

    Willの段階では、会社の意向とリンクした目標を立てることが必要です。 よって、上司の役割として「アイデアそのものを否定せず、軌道修正を行う」ことが求められます。

    まとめ


    GROWモデルをコーチングに取り入れれば、部下自身の考える力・責任を全うする力を養い、上司のマネジメント力アップにつながります。 しかし、GROWモデルの効果を最大限に発揮させるためには、自分がどのような質問を用意するのかが重要になってきます。

    Goal・Reality・Options・Willそれぞれの段階で、部下の考えを尊重しつつ、最終的に会社の目標とすり合わせができるよう、マネジメントの方向性を定めなければなりません。 一見大変なように思えますが、部下が「自分がこの会社にいる理由」を自覚できれば、その後の決断は早いはずです。

    「どんな時でも部下を信頼して、判断を尊重すること。」 GROWモデルでマネジメントを成功させるなら、上司にはその覚悟が必要と心得ましょう。