採用成功ガイドRECRUIT GUIDE


目次

    中途採用 能力不足

    中途採用を実施している企業からすると、従業員を雇ってから想定していた能力が不足していると感じることもありますよね。しかし、能力不足を理由に従業員を解雇することは簡単ではないです。今回は、能力不足を理由に安易に解雇ができない理由や対応方法などについて詳しく解説していきます。なお、新卒と中途採用者で状況は変わるため、その点を含めて解説しました。能力不足の中途社員に悩む企業の人事担当者は、参考にしてみてください。

    能力不足による解雇はできない


    厳密にいうとできないわけではありませんが、能力不足による解雇は簡単にはできません。能力不足による解雇が認められるためには、雇用関係を維持していく事が困難なほどの重大な能力不足であることを証明する必要があります。また、その従業員に対する評価は公正なものか、能力不足解消のための教育訓練などの機会を十分に与え解雇回避の努力を雇用主である企業側が行ったかなど、厳しく判断されることになります。

    能力不足による解雇は、従業員とのトラブルに発展しやすく、裁判になる可能性があることも考慮しておきましょう。裁判所が不当解雇にあたると判断した場合は、高額な支払いを企業側に命じられる場合があります。能力不足による解雇を検討している場合は、顧問弁護士など専門家によく相談することが大切です。

    解雇には大きく分けて、普通解雇・懲戒解雇・整理解雇の3つがあります。このうち、能力不足による解雇は普通解雇に分類されますが、裁判となった場合、裁判所は解雇理由に客観的合理性があり社会的相当性があるかどうか厳しく有効性を判断するのです。過去の判例を見ていくと、有効性を認められることは極めて難しいことがわかります。もし、解雇理由に客観的合理性や社会的相当性がないと判断された場合、解雇権濫用にあたるとして、解雇は無効になり、解雇した時点に遡って、その従業員への給与の支払いなどが命じられるケースがあります。 客観的な根拠がなく、一方的に能力不足というだけで、解雇の有効性が認められることはないことを理解しておきましょう。

    中途採用者が能力不足の場合

    能力不足による解雇は難しいとお伝えしましたが、新卒採用なのか中途採用なのかによって、状況は異なります。新卒採用よりも中途採用の方が、職務遂行に当たって必要な能力や求める成果が明確に示せる傾向があります。一定の職責を与える管理職であれば、明確な成果を求めることもあるでしょうし、特定分野のスペシャリストとして採用された場合も求める実務スキルを明確に示せるでしょう。求められる能力や経験があり、成果を出せることを前提に採用されますので、客観的な事実に基づいて能力不足と判断し易い傾向にあります。ただし、その上で、上述した通り客観的合理性に加えて社会的相当性を持って解雇が成立することは理解しておく必要があります。過去の判例をみても、解雇が簡単ではありませんので注意しましょう。

    能力不足による解雇を行うには

    能力不足による解雇を行うためには、重大な能力不足にあたることを証明する必要があります。なお、安易な措置はかえって企業の不利益になる場合がありますので、能力不足による解雇を検討している場合は、なるべく早い段階で専門家に相談することをおすすめします。不足による解雇は、個別の案件によって必要事項が異なるので、専門家に相談してから対処していくことが前提となりますが、一般的な方法をご紹介しましょう。

    ①能力不足の客観的証拠を収集する

    能力不足の客観的な証拠を収集しましょう。もし裁判になった場合、会社側は解雇が有効であることを客観的に立証する必要があります。ただし、指標が不明確ですと能力不足を客観的に証明することは困難です。あらかじめ、労働契約書や募集要項に、企業側が求めているスキル、業務内容などを明記しておく必要があります。指標が明確であることが立証されて初めて、能力不足を客観的に証明することができるようになります。

    著しい成績不良であること、業務に支障があること、平等な取り扱いをしていることなどを客観的に証明するための証拠を集めましょう。なお、ある程度のスキルがあることが期待されている専門職はともかく、新卒採用の場合は、長期に渡って業務を学ぶ機会を提供したなどの証明も必要です。

    ②業務改善する努力をしない証拠を集める

    解雇の有効性を証明するためには、能力不足は会社の教育不足が原因ではないことを証明することも大事です。例えば、能力不足が改善するように教育訓練の実施をしていたか、従業員の能力が発揮されるように配置換えなどを行っていたかなども、厳しく判断されます。企業側は能力不足を解消するための措置を十分に行っていたにも関わらず、従業員が業務改善する努力をしていないという証拠を集めることも必要と言えるのです。もし十分な教育などを行えば、従業員は能力が向上する余地があったと判断されると、不当解雇とみなされるリスクがあります。

    適切な指導をしたかどうかも、重要なポイントです。指導内容は文面で残すなど、証拠を集める工夫を行いましょう。過去の判例も参考になります。ただしケースによりますので、詳しいポイントなどについては、専門家からアドバイスをもらうことが大切です。

    試用期間中の解雇について

    試用期間中だからといって、安易に解雇ができるはわけではありません。過去の判例を見ると、試用期間中の解雇を不当解雇とみなした事例が存在します。試用期間中も簡単には解雇できないことを理解しておきましょう。特に能力不足を理由に解雇をすることは非常に難しいと言えます。なぜなら、新卒採用者や未経験者の場合、はじめは仕事ができないことが当たり前であるが、会社が指導し育成することで十分なレベルに達するようにしていくことが当然であると考えられます。試用期間中に、十分なレベルに達しなかったからといって、解雇をする理由にはならないです。

    試用期間中に解雇が認められる理由とは、以下のようなものがあります。

    • 勤務態度が著しく悪い
    • 正当な理由がなく、遅刻や欠勤を繰り返す
    • 重大な経歴詐称が発覚した

    いずれにしろ、客観的合理性があり、社会通念上相当と認められる場合に限ります。例えば、勤務態度が著しく悪いという理由の場合、採用するまで知ることができない事実なので、解雇が認められるケースもあるのです。ただし、改善の機会を与えるなど、企業側が必要な措置を十分講じているかなどが厳しく判断されますので注意しましょう。裁判に発展するリスクがあることを考慮し、専門家に相談した上で、必要な手続きを講じていく必要があります。

    【関連記事】
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    解雇ではなく退職勧奨も一つの手


    解雇は会社が行う最終手段です。従業員の意思に関係なく、企業側から一方的に雇用契約を終了する方法であり、当然従業員側にとっては大きな不利益になります。解雇通告を行う前に、退職勧奨することも一つの手段です。

    退職勧奨は、企業側から従業員に退職を勧め、合意があって初めて退職となります。再就職先の斡旋や退職金の加算など、従業員にとってのメリットも提示するので、一方的に退職を告げる解雇よりも、リスクは少ないです。ただし、従業員を退職に追い込むことは退職強要にあたりますので注意しましょう。

    退職勧奨を行う場合でも、退職強要になっていないかどうかなどを厳しくチェックしながら実行することが必要です。従業員にとってのメリットを提示するとともに、このまま在籍することへのデメリットも提示して同意を得る方法が一般的と言えます。

    まとめ

    能力不足による解雇は、簡単にできることではないので注意しましょう。従業員にとって解雇は大きな不利益をこうむることですので、トラブルに発展するリスクが高いと言えます。裁判となった場合、裁判所から解雇には客観的合理性があり、社会通念上相当であると認められる必要があります。認められないと解雇権の濫用にあたるとされ、解雇が無効と判断されますので気を付けましょう。雇用関係を維持していく事が困難なほどの重大な能力不足であると認められるかどうかが重要なポイントとなります。重大な能力不足を証明することは、安易にはできませんので、顧問弁護士や社会保険労務士などとよく相談をして、慎重に措置を講じていくことが肝心です。なお、退職勧奨というやり方もありますので、リスクなどを十分検討した上で、妥当な方法を選ぶことを推奨します。

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